まだ家族が眠る朝5時30分。私だけのプレミアタイムが始まります。
東の窓から差しこむ朝日が一段とつよくなる初夏。
私は時間によって壁や天井に映し出される「瞬く光と影」を眺めながら、四季のわずかな変化に気づくとともに、ひと時の穏やかな時間を過ごします。
こんにちは、伊藤沙織(あずいと)と申します。
兵庫県南部の田舎まちにある自邸で、夫と共に3歳と2歳の子育てをしながら、私は「暮らしの設計士」としてお客様のお家づくりのお手伝いをおこなっています。
3年前、ふたり暮らしの頃に建てた自邸は今、おてんば娘たちにとって格好の遊び場になりました。そんなわが家の家づくりコンセプトは「旅を感じる、心穏やかになれる家」。
どのような場所での体験が家づくりのエッセンスへつながっていったのか。またこだわりの木のキッチンとの出会いから今に至るまで、少しお話ができればと思います。
旅好きな父の影響
私は、旅好きな父の影響で「旅をすること」は幼少期から暮らしの一部でした。
運転をしながら…船に乗りながら…。旅という非日常な場面では、少し背伸びをした会話をするのも好きです。「私にとって旅することは、人生設計図を描くこと」そのものです。
数年前、私たち夫婦は近場の宿に泊まることがありました。
兵庫県にあるセトレハイランドヴィラ姫路の、ひのきの部屋です。
部屋全体の内装がひのき材で仕上げてあり、柔らかい無垢床や家具には、味わい深く傷が刻まれていたことを印象深く覚えています。
夫「汚いとかじゃなくて、なんか良い雰囲気だね」
私「それを、経年美化っていったりするね!」
私たち伊藤家の家づくりは、これが原体験だと思います。木のお部屋での宿泊体験は、夫婦で心地よさの共通点を知る良い機会になりました。
新婚旅行で
その後、新婚旅行では瀬戸内海の船旅、guntû(ガンツウ)を体験。
建築家の堀部安嗣氏が建築・デザインを手がけられています。
海に浮かぶ小さな宿で、味わいが増す客船から見える海の景色がすべて新鮮。オープンデッキ(縁側)で私たちを包み込んでくれた木の香りは今でも忘れることはできません。
「この記憶の一部分でも良いので、わが家でも体感できれば幸せだね」
大きく広がる軒先デッキで語らった夢を言霊に、やがて実現していくのでした。
今、わが家のリビングには『木で包み込んでくれたあの時の記憶の一部』があります。
素材を楽しむ
また別の体験ですが、京都にある京の温所の釜座二条に宿泊をしました。
建築家の中村好文氏とミナ ペルホネンの皆川明氏がディレクションを手掛ける一棟貸しの宿です。
一棟貸しの宿やゲストハウスは、家族と一緒に家づくりへの創造を膨らませることができる良い機会になります。
夫「キッチン中心に隔たりのない空間、オープン階段の抜け感。なぜか落ち着くね」
私「素材の味が出てきているからよりいっそう、落ち着くし飽きないのだろうね」
この時の宿泊体験もまた、私たちの家づくりにとって大切なエッセンスとなりました。
例えばわが家のキッチンから見える「階段下の余白空間」をキッズスペースにしたことで、娘が遊びの延長でキッチンにやって来て炊事のまね事をするようになりました。
椅子をもってきておやつを食べるなど、娘にとってキッチンも1つの大切な居場所のようで、私は見ていて思わず心穏やかになります。
ここまで3つの旅体験と実際のわが家を見ていただいたのですが、空間に共通点があることに気づかれたかたもいるでしょうか。
どうやら私たち夫婦にとって、『経年美化していく空間』こそが、心穏やかになれる要素だということ。
家族が成長の証をのこすように、自分たちの家づくりには『経年と共に変化が味わい深くなるもの(経年美化する素材)』を積極的に採用することにしました。
空間が雑然と喧嘩しないための工夫
ちなみに、同じ空間の中で『木の質感+異素材』が混ざりあう時、空間が雑然と喧嘩しないよう私なりに留意することがあります。
木の質感を生かしたい時は・・・
①床・家具・内装の木部はなるべく同じ樹種にする。(例:オーク材でまとめるなど)
②異素材の色柄主張は控えめにする。(例:白色アイアン、白色タイルにするなど)
③飴色になる木部の姿を想像し、面積が大きい壁は真っ白よりも少しくすんだ白色にする。
そうすることで、異素材による個性を愉しみつつも、木の経年美化とも心地よくまとまります。
キッチン空間
家づくりのなかでも、私たちにとって『キッチン空間』は主役級の存在で真剣に考えました。
同時に私自身、職務で家づくりに従事する15年の間、初めて木のキッチンsu:ijiに出会った時からずっと…「自邸を建てるなら、本当の木を使ったキッチンで経年変化を味わいたい」と思いを温めてきました。
だからこそ、夫(建築の従事者ではない)へのプレゼンテーションで、ウッドワン岡山ショールームを案内した時には、並々ならぬ緊張があったのは言うまでもありません。
経年美化したウッドワンキッチン「su:iji」の姿を見て、良さに惚れ込み、喜んでスイージーOK50(オーク材)を取り入れてくれることになりました。
新居から3年。
キッチンは夫も積極的に使うので、使用感を聴いてみました。
夫「想像以上に、オークの木部とフィオレストーン(主成分が天然水晶の人造石)の天板がLDKの床や家具になじんでいるね。それに奥さん(私)がハードにキッチンを汚しても、僕(夫)が元に戻しやすい清掃性の良さもありがたいポイント。日々のお手入れがしやすいのは何より嬉しい」
妻として、きれい好きな夫に甘える中、嬉しい本音を聴けました。
実際、木の面材部分は、木の風合いはそのままに、ウレタンの塗膜で守られているため、キッチンクロスを使ってふきとると簡単に汚れを落とすことができます。
また、フィオレストーン天板が油で汚れても、中性洗剤をスポンジにつけてブラシングするとみるみる汚れは落ちていきます。
さらに、ウッドワンのキッチンパネルはマットな素材のものも選べて空間になじみやすく、デザインの良さだけではなく、ふきとりしやすい機能美も嬉しいポイントです。
ほかに、取手の表面が少しずつ落ち着いた黒色に変化していく過程も、真鍮素材ならではであり、私は自然なエイジングを楽しみたいので過剰なお手入れはしていません。
こうした『ものづくりの裏側』が気になり、2026年には縁あって工場見学へ行きました。
(木ままびと感謝祭2026 開催。)
キッチン工場を見学。
木材の磨き上げ、塗装のふきあげ、何度も何度も人の手が加わっていて。機械の目と、人の手。うまく紡ぎあい仕上がっていく工程。注文を受けてから1邸ずつ丁寧に人の手で作りあげる木のキッチンの製造現場を見て、「これは単なる設備機器とは言えない」と気づき、ハッとしました。
また、わが家のキッチンはこれほど手間をかけて造られていたのかと知り、これまで以上に信頼の厚みが増しました。
『日本の暮らしにしっくりと馴染み、何十年経っても永く愛されるキッチン』というsu:ijiの魅力は、これから私たちも年を重ねる度に噛みしめることかと想像しています。
3年に渡ってウッドワンキッチンを使い続ける中、「3年経ってもっと好きになれた!」と言っても過言ではありません。
単なる使い切りではなく、家族と共に成長するキッチン。私にとっては、子育てしながら木育てもしているような心地。キッチンは、“炊事する場所“だけではなく、“家族が集まる場所”になっています。
これからも人生の時間を重ねると共に、未完成のキッチンが経年美化し、わたし色に完成していく姿を愉しんで見守りたいと思います。
さて、そろそろ今日も炊事する音と共に娘たちは起きてくることでしょう。私はまた今日も、この家・このキッチンと共に 人生という旅の舵きり が始まります。
滋味丁寧な暮らしに憧れながら、年子の母として駆け回る日々。兵庫県南部の田舎まちにある自邸で子育てをしながら、「暮らしの設計士」としてお家づくりもおこなっている。
木ままびと。2026メンバー。
Instagram:@azu3life