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Lifestyle

2024.09.02

花から食卓まで、四季の植物と綴る日々 #06

暑い夏と植物と

こんにちは、フラワー&グリーンスタイリストのさとうゆみこです。
唸るような暑さが続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今年は数年ぶりに梅干を作りました。土用干しならではの独特のフルーティーな梅の香りは、幼い頃、祖母が梅仕事をしていた風景を思い出します。

大好きな梅干がたくさんあるうれしさ。

副産物として出る梅酢は我が家では欠かせない調味料なので、そのためにもやはり毎年やりたいひと手間です。

さて、昨年は記録的な猛暑といわれましたが、まさかのそれを上回るような今年の厳しい暑さに本当に参ってしまいましたね。ただでさえ外に出られない中、植物との暮らしが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。

そんな中、今回は私が実践している植物との暮らし(夏)について、少しご紹介したいと思います。

夏野菜収穫の日々

3月初旬にまいた夏野菜たちが大きく育ち、6月中旬からやっと収穫が始まりました。
年間50品目近くの野菜を育てていますが、トマト、ナス、ピーマンなどは他より栽培期間が長いため、一年の中でも力を入れる作物です。

寒い時期の種まきから始まり、長い時間手塩にかけた野菜たちに親心のようのものがわいてくるのか、すくすくと育つ姿は可愛らしくて見ているだけでも元気になります。

小さな発芽からこんなに大きくなったナス。秋ナスという名の通り長い期間収穫ができます。
きらきらと美しい野菜たち。

他にも枝豆、オクラ、空心菜やツルムラサキなどの夏葉物、ネギ、キャベツ、ブロッコリー、カボチャ、イモ類、豆類、など、畑が狭いので少量ずつですが、多種の品目が採れています。

私は基本的に、地面に植えた植物には植え付けのとき以外水やりはほとんどしませんが、ここにきては異常事態です。7月終わりになってくると、去年も悩まされた雨不足問題が今年も深刻になってきました。

特に、現在借りている畑の一つは水源が無いので、雨が降らないとどうにもなりません。テクテクと歩いて、小さなジョウロで水を運んでも焼け石に水。この暑さといい、夏の異常気象対策として、これからは栽培管理法をアップデートする必要があるようです。

インドアプランツを愛でる

この時期はとくに涼しい家の中にいる時間が多くなります。そんなときは部屋の片づけをしながら、植物の配置を替えてみます。

インドアプランツについて、私は普段から屋内、屋外と場所を変えながら管理しています。我が家のリビングでは日光不足、閉め切った部屋では風通しも良くないので、屋外(直射日光は避けた半日陰)でも管理するようにしています。

インドアプランツという名で誤解されやすいのですが、植物は本来、自然の中で生息するものなので、屋外に出すことは大いにメリットがあります。この機会にインドアプランツを見直してみるのもいいですね。

ローテーションするついでに小物の配置を替えてすっきり気分転換にもなる。

花瓶で楽しむグリーン

植物を育てることに自信が無い方、もっと気軽に取り入れたい方は、グリーンを切り花(花や葉、枝などがカットされている状態のもの全般を言う)で取り入れるのはどうでしょう。

花でなくても庭にある葉ものや枝でもいいし、フラワーショップで購入しても。さっと設えるだけでインドアプランツ一つ置いたのと同様の効果がありますよ。

ユーカリ類、ドウダンツツジ、アセビ、グレビリアなど、何かグリーン一種だけなら水も汚れにくく、花よりも長持ちするので夏場はおすすめです。大きな枝から小さな葉ものまで種類は様々あるので、是非お店に行ったら聞いてみてください。

不思議と植物を配置したとたん、部屋の中の空気が変わったかのように気持ちもリフレッシュします。そして、急にその周りをすっきりと片付けしたくなるという効果もありますよ。笑

涼やかなガラス器にユーカリだけをざっくりとさりげなく。作り込まないほうがかえってリラックスできる。

夏のスワッグ作り

フレッシュフラワーの水替えも億劫だという方。そのままドライになるスワッグはいかがでしょう。
スワッグはドイツ語で「壁飾り」を意味しクリスマスに人気の装飾ですが、今回は素材を変えて一味違う夏のスワッグをご紹介します。

7月にレッスンで作ったスワッグ。

素材選びがポイント

スワッグやリースなど、ドライにさせて長い期間飾るものは、素材選びが大切。特にこの湿度のある時期は、乾燥している冬に比べると、きれいなドライフラワーをつくるのが難しいのです。

一般的にドライになりやすいのは、水分が少なく繊維質なものです。瑞々しい花よりも、リモニュームや千日紅など、かさかさとした質感のお花がきれいな色が残りやすいです。従来ドライフラワー向きなユーカリも、春や初夏の若葉より秋冬の硬くてしっかりとした葉のほうが乾燥したときに形が崩れにくいという違いもあります。

ミントやオレガノのような柔らかいハーブ、可憐な草花は可愛らしいのですが、すぐに縮れてしまうので長期的にドライにして楽しむものには向いていません。また、乾燥すると葉が枝から分離してしまう落葉樹や、一度にたくさんポロポロと外れてしまうような実物もできれば選ばないようにします。

左からステノカルパス、セルリア、ミレット、アマランサス、リモニューム類
左からユーカリ、カレックス、チーゼル、ルナリア、野郎、ローナス、ルリ玉アザミ(もともとドライになっているものも使っています)

作り方は意外にシンプル

素材さえあれば、作るのはとても簡単です。分量もアバウトでいいのがスワッグの良いところです。花束のように束ねて、壁に吊るせば出来上がりです。

…といってもある程度の大きさで、素材の種類によっては慣れるまでに時間がかかるかもしれませんね。作るのが難しいようならフラワーショップで完成品をオーダーするのもいいですね。

手元の葉を取り除いた素材を束にする。
表となる前面を決め、植物のバランスを考えながら配置していく。
できれば、ねじったパスタのようなスパイラル手法が形崩れもなく美しい。
もちろんそうでなくてもOK。
持ち手はリボンの代わりグラスを使用。
さりげなく部屋になじむ季節のスワッグはレッスンでも販売でも人気。

身近なグリーンで作っても

まずは小さなものを作ってみましょう。

「小さなブーケ」のような感じで、プレゼントしてもいいですね。ベランダや庭にあるグリーンを使うと気軽に作ることができます。

果たして美しいドライになるのか、ならないのか。いろんな植物を使い実験的にその経過観察することがよくありますが、すでに家にあるドライの花や実ものをアクセントに加えても面白いですよ。

ただ、私はこういったドライものは数を置きすぎたり、そのまま長く同じ場所に飾らないようにしています。ホコリっぽさを感じるせいか、たくさんあると雑多な印象になることもあるので気を付けましょう。

庭のグリーンをさっと束ねた長さ20cmほどの小さなスワッグ。
偶然にヘリクリサムが夏枯れでカサカサになっていたので丁度よいアクセントに。
小さいので気軽にさっと作れる。

夏のコンポスト

前々回のコンポストについての記事(コンポストと循環する暮らし)で、我が家のコンポストをご紹介しましたが、周りのたくさんの方から反響を頂き、皆さんのコンポストへの興味や環境への関心がうかがえてとてもうれしかったです。

我が家のコンポスト、もちろん現在も稼働中です。その後の夏の状況を聞かせてほしいというリクエストを頂きましたのでご紹介します。

一日分の生ゴミが入るボウルも変わらずキッチン棚の定位置に。

毎朝、前日の生ごみ入りのボウルを「キエーロ」に持っていき、時折、庭の雑草や剪定クズ、花活けの残渣がでたときは「堆肥枠」のほうへ入れていきます。

キエーロは毎日入れ続けても中の土の量が増えることはないし、堆肥枠のほうも一時的に山盛りいっぱいになってもすぐに驚くほどカサが減ってきます。特にこの暑い季節は分解が早いのでどんなに草刈りしても安心してたっぷり投入できるのがうれしいです。

以前は生ごみのことを考えて、夏に魚介類を購入するのを躊躇するときがありましたが、キエーロのおかげで暑い夏こそすっかり迷いがなくなりました。
もし、マンションのベランダだからコンポストを置く場所が無いという方は、小さなキエーロ、または、使っていないプランター(大きめがいいですが)に土を入れて、「臭いの心配のある生ゴミだけ」入れるというのもおすすめです。イワシの頭や内臓、骨、エビの殻ぐらいであれば、夏は米ぬかを入れずとも一週間で嫌な形跡?や臭いは無くなってくれます。もちろん大きなものでも深く埋めるなど工夫すれば大丈夫。
臭いや虫などが心配な方は、まずはそこで微生物の威力を知ってから、大きなキエーロを用意するのもよいかもしれません。

キエーロの透明のフタ、三角の隙間にはそれぞれ意味があります。それを知るためにも、詳しくは「キエーロ」で調べてみて、手持ちのものを工夫してみてください。

繰り返す?“今年こそは頑張ろう!”

毎年5月になると、今年こそは庭やベランダを美しくしようと心に誓います。

意気揚々と園芸コーナーに向かうと自分と同じく、花や野菜の苗、新しいプランターをいくつも抱えてたくさんの人がレジに並んでいます。思い描いたイメージを浮かべながらそれらを植え込んで一週間もするとだんだん苗は大きくなり、やがて花が少しずつ咲き始め、野菜苗には小さな実が膨らみ始めます。『植物ってやっぱり素敵~今年は絶対頑張ろう』と、なんとも満たされた気分です。

ところが、梅雨に入ると少し億劫になり水やりの心配も減るせいか、頻繁に見に行くこともしなくなり、さらに今度は梅雨明け後の厳しい暑さで、水やりは追い付かず、『もう今年は無理かな・・・』。ちょっぴりあきらめモードになります。暑さに加えヤブ蚊も増えて、畑ではいつのまにか雑草が野菜を覆いつくしてしまって・・・。

これは他の誰でもない、私自身の体験です。きっと同じような体験をした方も多いでしょうし、仕事柄、生徒さん、お客様からもこのようなお悩みをよく聞きます。

でもね・・・仕方ないと思うのは私だけでしょうか。日本の夏は湿度が高くて、暑すぎます。(冷涼な地域もありますが)くじけてしまっても仕方ないほど厳しい気候なのです。私も未だに失敗ばかりですよ。雑草放置で宿根草が消えてしまったり、収穫まで育てあげたキャベツをいざ切ってみると、全て中が虫だらけになっていて、泣く泣くその場で植えた全部を刻んで土に戻したこともありました。

何年やっても植物の栽培というのは難しいものです。

“頑張りすぎない”植物との暮らし

園芸初心者の方や慣れていない方なら、どんな場所でも植物でも、まずは小さく始めるのがおすすめです。

気持ちの高ぶりに合わせて、珍しいものや高額の苗をたくさん買ったりせず、まずは育てやすいものを少量育ててみてください。ただしプランター栽培なら、少し大きめのサイズを選んで複数植えるといいですね。小さい鉢は貯水力が無いので夏場は水切れしやすくなります。

畑を始めてみたいという方は小さな貸農園を借りてみても。

都心部では市民農園は1区画15㎡前後が多く、そのくらいだと小さくて管理がしやすいです。たくさんの種類を育てられるかというとちょっと物足りないかもしれませんが、それをまず体験してみてから今後のことを考えてみるのも良いと思います。もっと広い所でやってみたいと思うかもしれないし、自分には合っていないかもしれないなと判断することもできます。

また逆に、たくさんやっている方は体調や生活環境に合わせて「減らす」という決断が必要なときが来ることを忘れないでください。

植物を植えたことで、かえって苦しくなってしまうのなら、それは本末転倒というもの。暑い中無理して体を壊してしまうなんてあってはいけません。勇気を出して言うと、「失敗してもいい。枯らしてもいい」のです。

もし頑張れそうなら目標範囲や時間を小さく決めて、早朝か夕方の涼しい時間にやりましょう。

毎年上手くできていたオクラが今年はほとんどできなかった。
改善点を振り返り来年に生かします。

いつも言っていることなのですが、植物を育てる一番のコツは「みてあげること」です。

時間が無いときは、作業をしなくてもただ、さらっと眺めるでもいいのです。そのなかで思わず植物の様子の変化を感じることがあるし、覆っている一つかみの雑草を引き抜くこともあるでしょう。常に見てあげることはコミュニケーション。続けていけば、植物との付き合い方は自然と良い方向になっていきます。

雑草を放置しすぎて畝間が消えたサツマイモ付近の畝。うっかりしているとこうなってしまいますが、これも雑草という存在が土壌(地球)を真夏の乾燥から守ってくれている一つの自然現象だとおもうとなんだか穏やかな気持ちに。

それでもやっぱり植物と暮らしたい

「それでも自分はやっぱり暑い中、植物を楽しめない」という方もいるでしょう。

もちろん無理する必要は全くありません。あいまいなゆるい感じでいいのです。
私なんか「あぁ~それでもまた来春になれば心がウキウキしてしまうのが植物の魅力なんだ!」と開き直ってるのか、前向きなのか分かりませんがいつもそのように思っております。笑

何度も言いますが、私も失敗ばかりなのです。(つい上手くできたものを伝えてしまいがちなのですが。笑)そして、決して技術的なことだけでなく、時に落ち込んだりしてしまう精神的な経験も少しずつ重ねていくことがとても大切なことだとつくづく思っています。

さて、今回は私の反省の意味も含めて綴りましたが、この中に少しでも皆さんにとってヒントになるものがあったらうれしいです。
皆さんも無理なくゆるく植物と暮らしていきましょう。

あと、、、、暦は立秋を過ぎ、こんな暑い中、畑ではすでに秋冬野菜の準備が始まっております。泣

フラワー&グリーンスタイリスト
さとうゆみこさん
「green & knot」を主宰。フラワーショップやインテリアショップ、専門学校の講師を経て、現在はフラワーコーディネイトやグリーンアドバイザーのほか、植物にまつわるあらゆるジャンルで活躍している。自宅で行なっているフラワーレッスンも人気。

Instagram:@yumikosatooo yumikosatooo


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