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2025.02.14

花から食卓まで、四季の植物と綴る日々 #07

簡単で楽しい!ジャガイモ栽培

今年もジャガイモ植え付けが始まります。

こんにちは、フラワー&グリーンスタイリストのさとうゆみこです。

さあ、少しのんびりしていた畑仕事も2月になると春や夏に向けて忙しくなってきます。そろそろジャガイモの植え付け準備も始まる頃です。

“じゃがいも”は我が家にとって、たくさんほしい野菜の一つ。育てるのが簡単で、ある程度貯蔵できるし、なによりも私は大のジャガイモ好きなのです。

ジャガイモは種からでなく、「種イモ」を直接植えて増やしていく栽培方法なので、初心者にはかなりおすすめ。日当たりさえあればベランダのプランターでも簡単にできますよ。ちょうどこの2月~3月が植える時期なので(関東の場合)是非この機会に挑戦してみてはどうでしょう。

土に埋めこむだけで収穫できた!

息子が幼いときに、庭の花壇の中にホームセンターで買ってきた種芋を一つだけ植えたことがあります。私が花の苗を買っていた時に、息子が種芋を買いたがったので仕方なくバラ売りの種イモを一つだけ買ったのでした。帰って息子と庭の花の間に植えましたが、途中一度土を寄せたくらいで、それきりジャガイモのことは忘れていました。

3か月後のある日、花の手入れをしていたら、なんと土の中から大きなジャガイモがゴロゴロと出てきたのです。ジャガイモは痩せ土でも育つとはいわれますが・・・。息子はもちろん大喜び。採ったジャガイモはその日の夕飯になりました。

小さな種イモ(数十円?)がこんなにも喜びをくれるなんて。「埋めておけばとりあえずはできる!」あらためてジャガイモのすばらしさを感じた出来事でした。

種類が豊富で楽しい

今の時期、ホームセンターや園芸売り場に行くと種ジャガイモ売り場コーナーが設けられ、ずらりと多様な品種が並べられています。取り扱いの多いお店だと10~20種類ほどあるかもしれません。

まずは王道、おなじみの「男爵」「メイクイーン」。そして、黄金男爵とも言われる黄色い「キタアカリ」も長年の定番品種。そこに近年人気の濃厚な甘みで人気となった「インカのめざめ」や赤い皮の「アンデスレッド」、皮だけでなく中までピンク色の「ノーザンルビー」、中まで紫色の「シャドークィーン」、などの珍しいタイプもあります。

他にも、見た目は普通でも、フライドポテト用など調理法や食味に特化した品種、病気の耐性、収量など栽培特性を考えられたものなど、いろんな品種がたくさん揃っています。

ただし、ここ最近の家庭菜園の人気上昇と、栽培が簡単なジャガイモということもあってか、珍しい品種、人気の品種はすぐに品切れになるようですので早めに購入してくださいね。

中まで鮮やかな紫色をした「シャドークィーン」
フライドポテト用に開発されたという「ホッカイコガネ」。大きさと形を見て納得です。

食感の違い

ジャガイモの食感は大きく分けて、粉質系と粘質系に分かれています。

粉質系の代表は「男爵」。皆さんもご存じのようにホクホクとして煮崩れしやすい特徴があるので、コロッケやポテトサラダに使いやすいです。
粘質系の代表は「メイクイーン」で、ねっとりとして煮崩れしにくいので、カレーの具材など、煮ものに向いています。

私もかつては毎年、少量多品種で狭い畑に頑張って5~7種類植えていました。たくさんの種類があると楽しいのですが、収穫後や作付け前の管理が大変になってしまい、現在は「メイクイーン」「グランドペチカ」「アンデスレッド」の3種類ほどに絞っています。あとは、頂き物などその時の気分で作るものもあります。

粘質系は個人的に食感が好きだというのと、皮が向きやすいのも好きな理由です。(←忙しいときは絶対このタイプが剝きやすい!)

あとは、品種によっては春作、秋作の二期作で作れるものがあるのですが、二期作作れば一年中自分の作ったジャガイモを食べることできるので、私にとってはそれも品種選びの大きなポイントの一つです。

「メイクイーン」:粘質系、一期作
「グランドペチカ」:粘質系、二期作可能
「アンデスレッド」:粉質系、二期作可能

作りやすく家庭菜園にも人気の「アンデスレッド」
「デストロイヤー」の別名を持つユニークな見た目の「グランドペチカ」。畑友さんに頂いたのがきっかけで作るようになりました。美味しくて育てやすいので気に入っています。

痩せた土壌でもプランターでも大丈夫

ジャガイモはアンデス山脈原産で、もともと比較的乾燥したやせ地でも育ち、収量はともかく必ずイモができます。日当たりよく、水はけのよい場所を選びましょう。

ジャガイモは種イモの上部に新しいイモができるので、途中で土寄せ(脇にある土を根元に寄せること)をします。花壇の一角やベランダの空いた大きめのプランターなど、現在使っていないスペースがあれば活用してみてください。

最近は土や肥料が入っていたビニール袋で栽培する方もいます。(その場合下部に水が抜けるための穴をあけておく)プランターや袋で栽培する場合には土寄せができないため、あらかじめ土を減らしておいて、後から土を足すようにします。

途中で引き抜いてみたところ。下部の黒い部分が種芋。その上に豆粒ほどのイモができている。

花も美しいジャガイモ

ジャガイモの花って見たことありますか。品種によって、白やピンク、薄紫の美しい星形の花が咲きます。

あまりにもきれいで、ついつい切り花にでもしてみようかなと思ってしまいますが、実際、切ってみると水揚げがすこぶる悪いので残念ながら切花には向きませんでした・・・。
ジャガイモはナス科の野菜です。花をよく見ると、同じ科のナスやトマトにそっくりな形をしています。

白い花びらと黒×黄のおしべのコントラストがシックな「シャドークィーン」。イモは濃い紫色なのに意外でした。
薄紫の「グランドペチカ」は花も全体の立ち姿もしっかりしているので育てていて頼もしくなる。
アジサイのように密集した形が印象的な「レッドムーン」。ブーケに入れてみたくなります。

ジャガイモの一般的な栽培方法

栽培法についての説明はここでは簡単にさらっといきますね。詳しくはネット記事や動画がたくさんありますので、お住まいの地域(暖地、中間地、冷涼地など)に適した栽培時期や方法を確認してみてください。

・種イモは明るい窓辺などに置いて芽を出させる。
イモが大きければ、カットすると経済的です。 一個当たり最低50gあればよいです。

・畝を用意する。(肥料分が無い場合には少し入れたほうが収量は上がります)
・畝に穴を掘り、5cm土をかぶせるくらいに埋める。

(プランターの場合)大きなプランターを用意し、後から土増しさせるので、土いっぱいのラインが通常より10cm浅くなるようにしておく)

・芽が出て伸びてきたら、3~4本残してあとは芽かき(余分な芽を抜き取る)をします。

・さらに伸びてきたら土寄せをします。
※黒いビニールマルチをしている場合は土寄せの必要は無し
※プランターの場合は上部に土増しを行う。

・葉が黄色くなったら収穫します。

皮つきガリガリのフライドポテト

シンプルでジャガイモ本来の美味しさを味わえるフライドポテト。いろいろな方法があるかと思いますが、私のお気に入りは一旦火を通した皮つきイモをじっくり揚げていく方法です。

ポイントは常温の油からじっくり弱火で時間をかけて揚げること(30分くらい!?)。崩れるのでほとんど触らない。そして、「ガッリガリ」になるまで待つこと。(カリカリではないガリッガリです)

たかがフライドポテトと思わずに試してみてください。イモが少し崩れた部分がガリガリとした食感になってたまらない美味しさです!

皮つきポテト「ガリッガリ」で美味しい!

貯蔵するって難しい

「こんなに栽培が簡単なら、ジャガイモは我が家で一年間自給率100%にしてみよう!」とたくさん作ったときがありました。

たくさんのイモを喜びながら種類別に箱に詰めて貯蔵していました。が、なんと、あっという間に芽がニョロニョロと出てくるではありませんか!品種によっては驚くほど早くでてきます。

初めは、狭い面積でどれだけたくさんのイモを収穫するかばかりを考えていたものの、それをどうやって長い期間貯蔵するかというさらなる難関があったのです。「なるほど、貯蔵って難しいんだ~。」そう、「保存」でなくて、「貯蔵」です。ジャガイモのような根菜はその他の野菜よりはある程度保存がきくものの、次の植え付け後からさらに収穫までを考えると半年もの間(たくさんイモが収穫できた場合ですが・・・)美味しく貯蔵しなければなりません。

ジャガイモは極端な低温&高温が苦手。芽を出さない貯蔵温度は5℃前後だそうです。

プロの農家さんなら専用の保冷庫で管理されたり、もしくは納屋があったりしますが、我が家にはもちろんどれもありませんし、キッチンの野菜室には当然、余分なスペースもありません。みなさんもスーパーで買ってきたイモが数週間で芽が出た経験ありますよね。次のイモの収穫までいかに状態良く貯蔵していくかは、納屋や貯蔵庫を持たない私にとってとても難しいことだったのです。

現在、我が家は、一番温度の低い窓際にダンボールに入れて貯蔵しています。そして、ご存じの通り、ジャガイモは少しでも日に当たると緑色になってその部分が毒性に変化しまうため、一度黒い土嚢袋に入れた上でダンボールに入れて予防しています。スーパーで状態の良いものを一袋ずつ買えるって、すごくありがたいことだったんですね。

収穫したジャガイモを毎年繋いでいく

春作は2~3月に植え付けて5~6月に収穫、秋作は8月に植え付けて11月に収穫。年に二回作る二期作が一般的な地域で栽培できるスケジュール。(北海道など寒い地域は暖かい時期の一期作となります)

私は収穫した種イモは必ず次期の種イモ用に取り置きしておいて、ずっと繋いでいくようにしています。初めは収穫が少量でしたが、狭い面積でもたくさん採れるようになってくると、一年分食べるジャガイモと植付用の種イモを自家菜園で賄えるようになってきました。

限られた面積の家庭菜園では少量多品目がいい。その中でジャガイモは一年を通じて欠かせない野菜の一つ。

採ったイモを食べて、残しておいた種芋を次に植える。葉や皮などの残渣は土に還り次の作物への栄養になっていきます。ささやかなことですがそこにはすばらしい自然の循環があります。

私は決して、「有機無農薬じゃないとダメ」とか、「自給していきたい」「食糧危機に備えたい」などと考えているわけでなく、単純にこの循環を日々体感するのが心地よいのです。もちろん、たくさん採れない時があっていいし、種イモは毎度買ってもいい、気軽な体験でいいのです。

種イモから育てるジャガイモ

あるとき、レッスンの生徒さんに、仕事でたくさん余った種イモを配った(欲しい方はどうぞコーナー)ことがありました。

えっ、これをプランターに植えるだけでジャガイモができるのですか?と戸惑いながらバッグに入れて帰られましたが、数か月後、「収穫したジャガイモ、美味しく頂きました!」「簡単にできるのですね」と次々にうれしい報告をもらったのを覚えています。

種イモから育てるジャガイモ栽培は初めての方にもきっと楽しんでもらえると思います。

ネギやレタスの中でしっかり芽を出してきたジャガイモ。もう少し伸びてきたら土寄せします。狭いので「土寄せ」ならぬ、「土のせ」です。

「一つの植物が生まれてその生命を全うしていく姿を見届ける」という経験はとても価値のあるものだと思っています。そんな当たり前の営みを繰り返す自然の中で、私たち人間もその一部として生きているのだと実感させられますね。

何か育ててみたい!と思っている方、この季節からはじめてみませんか。

ジャガイモの花が咲き始めた(手前の一列)4月中旬の畑。春になっていろいろな野菜が勢い良く育つ季節です。

フラワー&グリーンスタイリスト
さとうゆみこさん
「green & knot」を主宰。フラワーショップやインテリアショップ、専門学校の講師を経て、現在はフラワーコーディネイトやグリーンアドバイザーのほか、植物にまつわるあらゆるジャンルで活躍している。自宅で行なっているフラワーレッスンも人気。

Instagram:@yumikosatooo yumikosatooo


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