Ki-Mama

Lifestyle

2024.02.09

花から食卓まで、四季の植物と綴る日々 #4

コンポストと循環する暮らし

こんにちは、フラワー&グリーンスタイリストのさとうゆみこです。

キッチンから生ごみが消える!?

家族を見送った後、食器洗い、洗濯などの一般的な朝のルーティン。
私は数年前からここに「前日の生ごみをコンポストに入れる」という作業が新たに加わりました。
おかげで、現在我が家のゴミ箱に生ごみは一切入らず、自治体のゴミ袋にいれることもありません。

※コンポスト…英語で「堆肥(たいひ)」の意味だが、日本では主に、「生ごみを入れて堆肥を作る容器やシステム」、または「生ごみを入れて堆肥を作る行為」をコンポストと呼ぶことが多い。

コンポストって?

コンポストってどんなイメージでしょう。興味はあるけどハードルが高い、なかなか続かない難しいもの、時間が無い人には無理、スローライフを実践している一部の人がやるものと思うかもしれません。

しかし、私のやり方はとてもシンプルです。
キッチン上部の棚に常備しているステンレスボウルに生ゴミを入れていきます。
調理しながら出る野菜クズ、魚や肉の骨、コーヒーやお茶の殻など。ゴミは濡れていてもOK。鍋に残ったソースや煮汁、残り物、油など、とにかく有機物であればなんでも大丈夫なんです。

(キッチンに立った時、私の肩の高さにある生ごみ入れのボウル。上部にあることで開けるたびに中身が見えないのがポイント。)
(ちょうどサイズの合う鍋蓋があったので利用。)

ボウルには臭いやコバエを防ぐためのフタをしています。上部の棚だと、目線がボウルの側面にあり、ちょっとだけポイっと入れるときにフタを開けて中の生ゴミを見ずに済むので(鍋の中のソースなどを入れるときはボウルを下におろしますが)我ながら良いアイデアだと思っています。家族みんなでここを利用しているので、気持ちよく毎日ストレスなく使えることは大事なことです。

さて、キッチンでやることは以上。それだけです。

私が愛用しているコンポスト「キエーロ 」

キッチンから出た生ゴミをスムーズに処理できるのはこの「キエーロ」のおかげです。
キエーロは神奈川県葉山在住のご夫婦が考えられたという画期的な生ごみ処理システム。現在多くの自治体が推奨し、補助金が出ることも。ネットに詳しい作り方や既製品もあると思いますので気になる方はぜひ調べてみてください。
我が家は、置き場所や出る生ゴミの量に応じたサイズを決めて、夫がホームセンターで材料を買ってきて作ってくれました。

(これが我が家のキエーロ。幅は130cm、奥行き50cmの一般家庭としては大きなサイズに作りました。)

透明波板のフタを開けるとたっぷりの土。
毎日生ごみを投入するだけあって、決して見た目がいいものではないので、画像でお見せするのも気が引けますが…。

白い粒が見えますが、これは卵の殻です。

卵の殻は分解するのに時間がかかるのでこうやって残ってしまいますが、フタを開けて気になるような生ごみ臭や腐敗臭はありません。

朝、キッチンを片付けた後、例のボウルをここへ持ってきます。キエーロの中に常備しているスコップで穴を掘ります。(ここでは撮影用に見た目のよい生ゴミを用意しました。笑)

その穴にボウルの生ごみを一気に投入。そのあと、ボウルの中に付いたゴミや汚れをとるために、水を入れ、ボウルの中をゆすぐようにして同じ場所に流しいれます。

(丸いボウルはさっと汚れが取れるので使いやすくおすすめ。)

発酵促進の「米ぬか」

気温が低い時期は分解に時間がかかるため、発酵を促進させるために「米ぬか」を一握りまぶします。暑い時期は米ぬかを入れなくても3~4日でおおかた分解されますが、寒い時期はある程度形がなくなるまでには2週間以上かかることもあります。ただし、分解は遅いとはいえ10日ほどたてば嫌な臭いはほとんどありません。分解の速度に関しては、お住まいの地域や設置場所(日当たりがよいか)、容器のサイズなどで大きく変わってくると思います。

ちなみに、この透明のフタは日光を取り入れ、気温を上げて微生物の活動を活発にするためのもの。斜めに設置することで空気が出入りすることができ、その上、上部をカバーすることによって長雨による腐敗(分解のためにはある程度の水分は必要です)を防ぐこともできます。

(米ぬかは近所の精米所、もしくはお米屋さんで安く入手。)

穴の中を土ごとサクサクとスコップで軽く砕くようにまぜ、上に周りの乾いた土をかぶせておきます。翌日は今日の穴の右隣の位置に埋めるので、スコップは目印代わりに明日の場所にさしておきます。

(使い終わったスコップは右側にさしておき、翌日に使う場所の目印となる)

うちの場合は、上から見て横6か所ずつ、2列、合計12か所埋めることを想定していて、一日ずつ横へ移動していき、12か所終わったら、最初のところへ戻ってまた始まるというサイクルになっています。埋めてから12日後にその穴を掘ると生ごみは無くなっているので、次の生ごみをまた入れていくという感じです。

我が家の場合、4月~10月の温かい時期だと前回の生ごみがほとんど消えています(大きな種や骨は残ります)。11月~3月の寒い時期はやや形が残っているものもみられますが、いやな生ゴミという感じはしません。大根の皮やヘタの部分など分解が遅いものが残り、油分や糖分を含んだもの、動物性たんぱく質など、見たくないなと思うものはほぼなくなっています。

慣れるとキエーロのフタを開けて閉めるまで1分。これで生ゴミ処理終了です。

私はこれまでいくつかのコンポストを試してきましたが、この「キエーロ」が自分にはぴったりでした。

キエーロの良いところ

・とにかく簡単で、忙しい人に向いている。
・入れた生ゴミを発酵促進のために何度もかき混ぜたり触ったりしなくてよい。
・水分をたっぷり含んだ生ゴミでもよい。(汁物、ソースや油もOK)
・有機物なら何でもよい。(こちらについては後ほどお話ししますね)
・消滅型コンポストとも呼ばれ、入れても入れても嵩(かさ)が増えない。出来上がった堆肥をどこかに使わなくてもよい。(ほとんどがすぐに分解されて二酸化炭素と水分になって消えていきます。)
・畑やガーデニングに堆肥として使うこともできる。(抜いた分土を足す必要がある)
・臭いがほとんど無い。

逆に、あえてデメリットを挙げるならば
・大きいので設置するための場所が必要。(ベランダの場合、ベランダ用というのがあります。大き目のプランターでも代用できます。)
・土がたっぷり入っているので、大きなサイズなら移動不可能。(初めての方は運べるほどの簡易的な小型にするのもよいと思います)
・多少、土の中に虫がいます。(ただし、分解してくれる益虫といえます。小さな虫でも絶対にダメという方は難しいかも)

コンポストにはそのほか、

電動で分解までしてくれるバイオ式
電動の温風でゴミを乾燥してくれるゴミ処理機
菌を入れて発酵させる密閉バケツ型
ミミズに生ゴミを食べてもらうミミズコンポスト
身近なダンボールでできるダンボールコンポスト
初心者の方にとって気軽にトライできるバッグ型コンポスト

など、さまざまです。

当然、それぞれにメリット、デメリットがあります
私は以前から生ゴミが土に還る感覚はわかっていたので、キエーロを知ったときはすぐにこれだ!と確信して始めましたが、初めての方は事前によく調べてみて、ぜひご自分の環境や暮らし方に合ったスタイルを選んでみてくださいね。

(出来上がった堆肥は畑やガーデニングに利用します)

もう一つのコンポスト

さて、我が家にはもう一つコンポストがあります。

(四角い枠を数段重ねただけのシンプルなコンポスト)

こちらは大きな木枠を重ねたもので、一般的には「堆肥枠」とも呼ばれています。
畑の隅におかれていることが多く、収穫後の残渣(ざんさ。残りかす)や刈り取った草を入れて、のちに堆肥になったものを畑に還すというシステム。

私は自宅で行っているフラワーレッスンで毎回たくさんの花の残渣が出るので、その処理としてこの木枠タイプのコンポストを作りました。これはシンプルな構造なので、ビスさえ打てれば簡単に作ることができます。ちなみにこれはDIYが苦手な私でも出来ました。笑
庭があって、剪定ゴミや刈り取った雑草などが出てしまうお家にはおすすめのコンポストです。

うちはマンションの一階で、決して庭が広いわけではありませんが、暮らしの利便上、草花を植えていた場所を二つのコンポスト置き場に替えることに決めました。

(レッスン時のゴミ箱。毎回たくさんの残渣が出ますが、生徒さんがきちんと分別してくれます。レッスンではなるべく無駄なゴミを出さないこともテーマのひとつ。)

底の無い枠を何段も積み重ねていて(跳び箱が寸胴になったような感じ)、そこにどんどん残渣を入れていくのですが、時間をかけて上までいっぱいになったら、一番上の枠を外して横に置き、今度はその枠の中に残渣を移動させます。もともと、一番上の枠から1、2、3、の枠だとしたら、今度は下から1、2、3、と並びが上下逆になっていき、中の残渣の上下をひっくり返して発酵を促していくというわけです。

(ここにどんどん投げ入れていきます。)

以前は、自治体のごみ袋に詰めて出すのが毎回一苦労でしたが、こちらのコンポストができてからはすっかり楽になりました。容量があるので、そのまま投げ入れるだけで終了。土を掛けておくと(あれば米ぬかも)さらに分解が早まり嵩も減ります。たくさん入れてもあっという間に減ってしまうので、思ったほど枠の移動はありません。

その他、ここには庭木の剪定したもの、刈り取った草、白菜やキャベツの外葉などを入れています。

(土と米ぬかをかけたら、中に入って足でぎゅっと踏みます。密着することで発酵が早くなります。)
(下のほうは真っ黒い土になってきています。)

一年以上経つと枠の一番下のほうは、黒く完熟した堆肥が出来上がっていますので、それを畑にまいたり、プランターの培養土に利用したりしています。

使い分け

臭いがでるもの(主にキッチンの生ゴミ)はキエーロへ、臭いのない枝葉のようなもの(鳥獣を呼び寄せないようなもの)は大きなコンポストへと二つのコンポストを使い分けています。

実は、私は近所にある自身の家庭菜園の畑にもこの積み重ねタイプのコンポストを設置しています。場所さえあれば、植物ゴミをサッとひとまず入れておく「入れ物」があることは本当に便利の良いものです。毎回大きなゴミ袋に詰めてゴミ出しするのは大変。これって、家の中にゴミ箱があるのと同じことで、すっきりしてとても気持ちの良いことなでのす。

また、生ゴミがゴミ箱から無くなったことで、ゴミ出しの回数もずいぶん減り、生ゴミの悪臭を気にせずに済むので、ぎゅっと詰めながら有料ゴミ袋が一杯になるのを待つこともできます。
生ゴミはほとんどが水分。生ゴミが無いゴミ袋って驚くほど軽いのです。

魚料理も増えました。以前は調理後の処理が気になっていましたが、今は気軽に魚を一尾丸ごと買うこともしばしば。

コンポストを上手く使えるようになってからは、出来上がった堆肥を利用して市販の培養土や肥料を買うことも少なくなりました。それらの詳しい使い方はまたいつかお話しできたらと思います。

私たちの「ゴミ」は有機物だらけ

最近は環境への意識も高く、生ごみ用のコンポストについての質問をよく頂きます。

「やってみたいけれど時間が無くて…」
「入れてはいけないものもありますよね?」
「臭いや虫が気になります」

よく、コンポストの説明として、生ごみの種類によっては微生物が「好きなもの」「嫌いなもの」がある、と書かれていることがあります。それらをみたのか初めは選別が難しいという方もいらっしゃいますが、私はほとんど気にせず投入しています。

生ごみの中でも、油分、糖分を含んだものややわらかくて粒が細かいものなどはすぐに分解されますが、タケノコの皮、トウモロコシの芯、魚の骨など分解に時間がかかるものもあります。さらには肉の骨、梅干しの種など硬くて、分解するのに数年かかるものあります。しかし、ゆっくりと時間をかければいずれは土へと還っていくものですし、ずっと残ってしまって気になるようならそれだけ拾ってゴミとして捨てればよいのです。

有機物の中には分解する速度に個体差があるので、あまり難しく考えなくて大丈夫なのです。有機物なら何でもいいのです。

野菜くず以外のもの

ちなみに、私が普段キエーロに入れているものを野菜くず以外、いくつか並べてみると、中にはみなさんにとっては意外なものもあるかもしれません。

・ティッシュやキッチンペーパー
 (卵焼きに使う油をしみこませたペーパーや揚げもののときに敷くペーパーなども)
・使い終わった揚げ油(油分は分解を促進してくれます)
・鍋やお皿に残った煮汁、灰汁、ソース(下水に流すよりいいですよね)、食べ残し
・魚の頭などのアラ、鶏肉の骨、スペアリブの骨
(鶏、豚、牛の骨は分解に時間がかかるので、微生物に骨の周りを綺麗にしてもらってから取り出してゴミに出してもよい)
・髪の毛
・カビが生えたりしたもの。腐敗したもの。

キエーロは容量的に投入量が限られていますが、大きな堆肥枠のほうには汚れたダンボール(リサイクルに出せない)や紙くずも入れています。

その他、犬や猫のペットを飼っている方は、その排せつ物を入れたり、より大きなコンポストがある場合は、天然繊維(コットン、リネン、ウールなど)の衣類や生分解性の様々なもの(普段からそのような商品を積極的に選ぶ)を入れることもできます。

うちは自家栽培しているヘチマをスポンジとして利用しているので、使い終えたらコンポスト行きです。ヘチマスポンジは使い始めたらもうプラスチックスポンジには戻れないくらい使い勝手が良く、おすすめです。

あと、我が家はインコを飼っているのですが、鳥かごの下部に敷いている紙(排せつ物用)を取り換えるのですが、紙ごとポイっとコンポストにいれることができてとても楽です。

(スポンジ用に栽培したヘチマを秋に収穫)
(15cmぐらいに切ってキッチンのスポンジに使用。種は採って次年の栽培用に保存します。)

循環する暮らし

以前、街中でどこかの区のゴミ収集車に「お茶のパックは絞ってから捨てよう」というような内容のことが車に大きく書かれていたのを見たのを覚えています。ティーバッグや麦茶のパックなど、絞らずそのままごみに捨てると、水分が多いためその分、燃料が多く必要になってしまいます。一人一人が生ごみの水分を減らすことで、全体の燃料は大きく減らすことができます。

ゴミをなるべく出さない、自治体に委ねないことで、社会全体、いわば地球全体の負担を減らすことにつながります。しかし、そんなことは分かっていても、現代社会、誰しも忙しい暮らしの中で、ベランダで野菜くずを干したり、何かを時間をかけて再利用したりと環境のために長い時間を割くことは難しいと思います。私も自信はありません。

大切なのは「無理をしない」「すべてをやろうとしない」こと

私はいろんなものを手作りするのは大好きですが、無理をしてやる必要は無いと思っています。今はSNSのおかげか、年中行事をはじめ、なんとなく「しなければいけないのかな」ということが増えすぎているようにも思います。エコロジーな暮らしも考えすぎると本当に大変。ここは、正解は無いと割り切って、自分ならやれるかな、やりたいなと思うことを楽しみながらあくまでもゆるく実践していきましょう。

料理で失敗してしまったときや、どうしても口に合わずに食べ物を処分せざる負えない時、娘は「もう捨てようか?」でなく、「もう土に還そうか?」と言うようになりました。
生ゴミはゴミ袋に入れた瞬間から「ゴミ」になりますが、土に入れると循環して「次の何か」に変わるので不思議です。自分でも自然と感覚が変化し、土壌や土壌微生物へのリスペクトが強くなっていくのがわかります。「もう土に還そうか?」は、「土に入れて微生物や虫たちに分解をお願いしようか?」ぐらいの気持ちでしょうか。

山の中でシカやタヌキなどの屍を見かけないのは、降り積もるような量の枯れ葉が年々増えないのは(それでは山がどんどん大きくなってしまう)、それを分解してくれるその他の生物のおかげです。私たちは虫、微生物や菌に包まれて生きているのです。
コンポストをやっているとそれらを肌で感じ、自然のエネルギーは素晴らしすぎる!と毎度感心してしまいます。

スロースタートでもいい。コンポスト始めてみませんか。

フラワー&グリーンスタイリスト
さとうゆみこさん
「green & knot」を主宰。フラワーショップやインテリアショップ、専門学校の講師を経て、現在はフラワーコーディネイトやグリーンアドバイザーのほか、植物にまつわるあらゆるジャンルで活躍している。自宅で行なっているフラワーレッスンも人気。

Instagram:@yumikosatooo yumikosatooo


Related Posts