こんにちは、フラワー&グリーンスタイリストのさとうゆみこです。
普段は、切り花やグリーン、庭など植物にまつわる仕事をしています。私の好きなことは植物や土に触れる時間。仕事もプライベートも植物だらけの根っからの植物好きです。
今日の夕飯何にする?
毎日異なる食事をキッチンで作りだしていく、ほぼ毎日やっていることなのですが、よくよく考えたら、自分を含めて皆さん(台所を預かる方々)すごいなと感心してしまいます。
今夜は寒いからお鍋にしょう。今日はスーパーで安かったからこれを使って。なんて、なにかきっかけがあるおかげで献立が思い浮かぶこともたびたびですよね。
私もそれと同様、その日の気分と素材ありきなのですが、我が家はその素材の大部分である野菜の種類が限られているおかげで、実は意外とすんなりと決まってしまいます。
畑にあるもので、野菜の旬を楽しむ
畑に今ある野菜と貯蔵野菜、それに合わせて肉や魚、その他の食材を使った料理になるというわけです。
家庭菜園を初めてから、野菜はほとんど買うことがなくなりました。畑にないキノコ類や育てていないゴボウや山芋など、一部買うものはあるものの、基本はその時に畑にあるものを使っています。
そう言うと「えっ、そんなにたくさんの種類を育てているんですか!」と驚かれますが、いえいえ、スーパーに並ぶほどの種類がいつも畑にあるわけでは決してないのです。
私が所有しているのはビニールハウスのような大きいものではなく、小さな菜園なので、畑にはその季節の野菜しかありません。年間を通して40種類程度の品目数は作ってはいますが、冬にトマトやキュウリは無いし、逆に暑い夏の時期には白菜やホウレンソウは無いので、一年中いつでも好きな野菜を食べているわけではないのです。その季節に採れる限られた種類の野菜しか食べていないということですね。
四季が豊かで寒暖差がはっきりしている日本では、季節ごとに細かな旬があり多種様々な作物が採れますが、裏を返せばそのときには採れないものも多々あります。
「食べられない時がある」、一見ネガティブなことのようですが、今ではこれこそ真の贅沢だと感じていています。
前回の記事でもお伝えした「種から始まる野菜作り」は私にそのことをはっきり肌で感じさせてくれたのです。
一年に一度また出会う幸せ
今は一年中食べたいときに食べたいものが手に入る便利な世の中ですが、どうでしょう、夏にみずみずしい桃をその香りとともに食す瞬間、秋に秋刀魚にスダチを絞って一口、「あ~この季節が来たな~」というように年に一度旬のものをありがたく口に運ぶ幸せ。
待ちに待った桜の開花に目を細めるように、日本に暮らす人として、この地の旬を楽しむ贅沢は格別なのではないでしょうか。
日々の見慣れた野菜も、そうやって季節に沿ってありがたく食していくと同じような喜びがあります。
さて、これは前回の記事「種まきから始まる春」でご紹介した3月初旬に種をまいたトマトです。
その後5月に定植し、今では毎日たくさん収穫しています。
私の畑ではトマトは6月下旬から少しずつ収穫が始まります。
まだ寒さも残る3月初旬から長い間育苗して育てた分、採れ初めは本当にうれしいもの。7月に入ると毎日たっぷりのトマトがテーブルを彩ります。しかし、その後霜が降り始める11月には寒さで株全体が枯れてしまうので、翌年また3月に種まきを始め、6月下旬の収穫まで、約半年はトマトを食すことはできないということになります。
(冬にスーパーに並ぶトマトは加温されたビニールハウスで作られます)
ソラマメも、前回の記事でさやが付き始めた画像をお見せしましたね。
あれから大きな豆が実り、今年は例年よりも立派に育ち、おすそ分けできるくらいの量が採れました。
ソラマメは育つまでに結構時間がかかります。昨年の10月に種をまき、5月に収穫。ソラマメは収穫までに半年以上もかかりますが収穫はほんの1、2週間。貴重な初夏の風物詩でもあります。
玉ねぎ、ジャガイモ、ニンジン、長ネギは年に数回作付けして、一年間途切れることなく食することができています。
特に玉ねぎ、ジャガイモは長期保存ができるので他の野菜よりも多めに作付けします。
やりくりを楽しむ。
小さな畑なので、もちろん途切れそうになることはあります。でもそこはあるもので調理!
どうしても欲しいものなどスーパーで買うときもありますが、大体は玉ねぎの代わりに長ネギを使ったりと別の野菜で代用したりで、やりくりを楽しんでいます。
秋にさつまいもが出回り始めると、う~ん、、、もうすぐ畑で採れるから!と、あえて楽しみに待つようなときもあります。
今もまだまだ試行錯誤の毎日
とはいえ、作付けの面積は家庭菜園だと限られていますし、その中で一年間、季節の野菜をコンスタントに収穫することはとても難しいことです。
私も初めは、一気に小松菜がたくさん採れてしまったり、畑が大根だらけになって他が作付けできず困ったこともありました。
しかし自作の畑ノートに記録ししっかり考えながらやっていくことで、少しずつ一年間の作付け予定が見えてくるようになりました。いつ、どのくらいの量をどのように作付けしていけば我が家の一年間季節の野菜を適度な量調達できるのか。今もまだまだ試行錯誤の毎日ですが、やり始めるとなんとなくゲーム感覚のようで自分なりに楽しんでいます。
定番料理を自分流に
献立を考える中で、なんとなく思いつくのがいくつかの定番料理。
たとえば、私の大好きな麻婆豆腐。二週に一度は食べたいくらいなのですが、家族も飽きてしまうし、野菜が少ない料理でもあるので、そこで季節の野菜を使います。夏は1cm角に切ったピーマンを、春や秋にはニラをというように、たっぷりの量を主役級にしっかり触感を残すようにいれています。
もともと、様々な素材を受け止める料理もありますよね。カレーやパスタ、グラタン、春まきなどはその季節にあるものでいろんな美味しさがあって楽しい。
グラタンなんかはジャガイモと玉ねぎよりも、サトイモと長ネギの組み合わせのほうが好きで我が家ではこちらが定番です。
新しいレシピの発見も
「ああ、今日はこの野菜が無いな~」、と何かで代用したら、
「あれっ、これ意外に合うかも!」と新しいレシピの発見が生まれることもしばしば。
とれたて野菜をシンプルに調理するだけで十分美味しい一皿もありますね。私はローストビーフを数個まとめてオーブンで焼いて冷凍しているので、仕事で遅くなる日などは冷蔵解凍しておいて、畑野菜のサラダやロースト、スープを付けて終わり!という日もよくあります。
切っただけ、焼いてお塩だけ、のようなシンプルなもののほうが素材のうまみをダイレクトに感じて、家族も喜んだりすることも多いのです。
食材に縛りがあるというのに贅沢な気持ちになるなんて不思議なものです。
それぞれの「畑」
もちろん、家庭菜園は人それぞれ目的や楽しみ方、畑の広さも違うので、私のように一年間、多品目で賄うというやり方だけではないと思っています。
畑友だちのSさんはインゲンが大好き。毎年時期をずらしながらインゲン豆をたくさん作っています。いつもたくさんおすそ分けしてくださる方で、サトイモ、ジャガイモなど多めに育ててお友達と分かち合うのがとても上手な方。
SKさんはお子さんが好きな野菜を植えて一緒に畑作業を楽しんでいる姿がいつもほほえましい。
Mさんはお酒にまつわる仕事をしていて、毎年ホップ(ビールの原料になる)を育てていたり、Hさんは種をつないだヒマワリを毎年大切に育て、花のある菜園が印象的です。
お孫さんのいるKさんは、一緒に収穫するのを楽しみにイチゴや落花生を多めに作付けしています。
フィリピン人のMAさんは青パパイヤ、レモングラスなど作るものにお国柄が出ています。
共通項は季節
その人それぞれに好きな野菜、育ててみたい野菜、たくさん作りたいものが違っていて面白い。でも共通するのは季節があって、自然と戯れ、採れたものが暮らしのエッセンスとなってゆく。畑でなくても、ハーブを一枝ベランダからキッチンに持ってくるだけで特別な一皿になっていきます。そもそも野菜を育てるって収穫だけでなく、暮らしを豊かにするような発見や楽しみがあるんですよね。
その日食すものは畑がはっきりと教えてくれる。これはゆっくりと自然に体を委ねていくこと、季節の移ろいに寄り添いながら生きていくということなのだと思います。
フラワー&グリーンスタイリスト
さとうゆみこさん
「green & knot」を主宰。フラワーショップやインテリアショップ、専門学校の講師を経て、現在はフラワーコーディネイトやグリーンアドバイザーのほか、植物にまつわるあらゆるジャンルで活躍している。自宅で行なっているフラワーレッスンも人気。
Instagram:@yumikosatooo