中庭を持つ家「ナゴヤノコヤ」
愛知県名古屋市。道路沿いに建つ木造一軒家に暮らすWさんを訪ねました。
家の中に木??
玄関土間に、木の植栽(シマトネリコ)がお出迎え。
「春から初夏にかけて、午前中だけなんですけどいい感じに天窓から日差しが入って、その木漏れ日がこの土間に映るんですよ。季節は限定されますが、その雰囲気がすごく好きなんです」とWさん。
ここに暮らしはじめて5年。家の中で見つけた、とっておきの風景だそう。
朝、夕方。(竣工時のお写真)
「ここで椅子に腰を掛けると、公園に来ているような気持ちにもなって…ここは僕もお気に入りの空間です」と、空間建築-傳の山本智一さん。
この土間の一角に、愛犬ボルゾイ「ニーナ」のお部屋が
Wさんご夫婦はそれぞれの実家から近い場所で土地を購入、ちょうどお子さんが生まれるタイミングで、家づくりをはじめられました。
山本さんの働く設計事務所との出会いはInstagramで。オープンハウスに足を運び、いろいろとお話をきく中で、「設計」「施工」一貫して同じ会社でやっているというのが、最終的に家づくりをお願いする決め手でもあったのだとか。
「家の中に木を植えたい」というのはWさんからの要望で、小さなお子さんと、大きなわんちゃんもいるので、雨の日はこの中庭空間でも遊べるように…。
当初、そんな想いを方眼紙にフリーハンドで描き、その内容を山本さんがまとめ、仕上げを美しくする要素を一つずつ考えて、ピースを当てはめていったそう。
棚に並べられた数々の小物もすっきりみえる不思議。
「木のあたたかみがある中にも、美しくてモダンな要素で仕上げてほしいというのが要望でした」と、Wさん。
「基本的に間取りなどの簡易プランは、依頼時にみなさんもってきてくださるので、そこにどのように手をいれるかをすごく考えます。この物件に関しては、だいたいそのまま納まりそうだったので、部屋として、空間としてどのように繋げていくか、そういう提案をしていくのが設計なのかな」と、山本さん。
ここは、ウッドワン空間デザインアワード2024で、最優秀賞を受賞された物件です。
階段をあがって2階へ。リビング(手前)とダイニングキッチン(奥)
中庭の植栽
天窓から心地よい光が室内を照らし、渡り廊下からも、家の大きなモチーフである植栽をしっかりと眺めることができます。
廊下の棚は山本さん設計による造作収納
収納はもともと一部だけつくる予定だったそうですが、山本さんから、廊下全体に繋げて作業台、本棚までの提案があったそう。
「見ての通り私はたくさんモノを集めちゃうタイプなので、気分に合わせてこの棚はこの感じ、この棚はこの感じ、といったように、今となっては、仕切りごとに自分の世界をつくっていけるのが楽しいです」と、Wさん。
棚に並ぶ雑貨小物たちは、繊細で愛おしいものばかり。
キッチン近くの棚には、お子さんが毎日食べるというバナナをストック。バナナを吊るす台の部分は、本物の石でできているそう。愛知県岡崎市の「MATOYA」というクラフトショップで購入。隣に並ぶコーヒー豆の入れもの「Peter Ivy」のガラスジャーと合わせて、これはWさんの愛用品。
「Peter Ivy」のガラスジャー
「家中に自分の好きなものを集めているから、時間に合わせて、それにスポットライトが当たるようになるのも楽しいですね」
ダイニングキッチン
「5年経って、全体的にだいぶ焼けてきたように思います。もともとは、もっと木の素地が出ていて白っぽかったんですけど。天窓からの日差しと、あとは強めの西日のせいかな…。木の自然な感じが出て、しっくりと馴染んできましたね」
キッチンはアイランド型 su:iji(スイージー)NZ20、アイボリー色(現在廃盤色)
造作キッチンを考えていたそうですが、予算もあり、メーカー品のなかでイメージに合うものを探して出会ったのがスイージーだったそう。
「木の温かみのある柔らかい空間に馴染みそうなもの、という基準で選びました」と、Wさん。
ガスコンロ(+do)
コンロはハーマン製の「+do(プラスドゥ)」。ステンレスのTOPに頑丈な鋳物製のゴトクが、重い鍋を支えます。
「コンロはこれがつけたかったし、他の機器類も、全部好きなものが選べました」と、Wさん。かなり使い込んでいるというSTAUB(ストウブ)の赤色のお鍋は、スープでもなんでも煮込めるし、お米もこれで焚くと、とてもおいしいのだとか。
キッチン最下段の引き出し(アンダーストッカー)には、重いお鍋がぎっしり。
「奥にある一番ちっちゃいタイプのものは、息子のお弁当を作るときに揚げ物用として使っています」
キッチン高さは90㎝
「実家だと作業台が低くて背中が丸くなっちゃうけど、高さを選べるのは嬉しいですね」
床材は、メープル材を使用。明るい木肌を持つ白木の樹種ともマッチしています。
シンクの前で育成中の豆苗(2回目)
収納多めのキッチン
ダイニング側は、オープン棚も備えた扉付き収納を選定。ここにも、Wさんお気に入り小物が並べられ、扉の中は、現在は食器ではなく編み物用の毛糸などの小物が仕舞われているそう。
天窓から日が差し込む廊下
「リビングが2階だと明るいし、冬でもあったかいのが嬉しいです。一つだけ、階段を上がってダイニングが奥にあるので、買い物したものを運ぶのは重くて辛いですね」
いろいろ悩んだ末に、ダイニングを奥側にする間取りにしたそう。
大きなミシン
ここに住み始めたときはお子さんも生まれたばかり。最初は編み物でベビードレスなどをつくっていたそうですが、最近は本格的なミシンを買って、徐々に洋服も作るように。
壁にかかる、旅先でみつけた思い出の木
「形と色見が気に入っていて。ここで物撮りなんかもするんです」と、Wさん。
愛犬のボルゾイ「Borzoi」x自分の名前「W」を掛け合わせて命名したというお店「worzoi(ウォルゾイ)」。
Wさんはお洋服や小物雑貨などの手づくり品をネットショップで販売するオーナー。ぜひのぞいてみてください^^→ こちらから
海外サイトでみつけたという時計
電気や家具、小物まで、当初から「これを置きます、飾ります」と、自分の好きな世界観はなるべく伝えて設計してもらおうと考えていたというWさん。
「いろんなテイストを入れてもらえるのはおもしろいですね。イマイチだな、と思うものだったら、言ったかもしれないですが、かわいいのでやってみたいとおもいましたね」と、山本さん。
窓のスクリーンを上げると、青い空が。
中庭があることに加えて、勾配のついた屋根が特徴的なこのおうち。お昼近くになると、高い位置に付いた西側の窓から陽が差して、部屋全体を明るく照らします。
オカベマキコさんの「しゃぼんランプ」
外なのか、中なのか、境界線がわからなくなってしまいそうな居心地の良いこのリビング空間。本物のシャボン玉のように、ふわふわと空高く飛んで行ってしまいそうです。
ちなみに中庭に浮かぶこのランプ、なかなか入手できないため、Wさんがとある場所まで遠路はるばる旅をして手に入れたものなのだとか。
ナゴヤノコヤ
交通量の多い道路沿いに、ひっそりと建つシンプルな白いおうち。そこにはたくさんの思い出と、夢が詰まっていました。
(文:松岡)