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都心で暮らす。SAKURAビューなリノベーション。

マンションリノベーション

東京都心で暮らす、30代前半のO様ご夫婦。以前暮らしていた賃貸マンションや、職場からも近いこの場所で、築53年3LDK、78㎡の中古マンションを購入しリノベーションされました。
今回はこの若いご夫婦の購入した、マンションリノベーションのお話です。現在共働き、お二人とも、この家で週2、3回のテレワークを行っています。

部屋からみえる景色は、美しい桜ビュー。

結婚して数年、今後家族が増えて手狭になることや、資産として運用していくことも視野にいれて、賃貸暮らしからマンション購入を考えはじめたというご夫婦。ネット検索で物件を探していたときに、近所にこんなにも素敵な桜ビューのマンションがあることを知ったそう。当初は別の部屋で検討しており、訳あって一旦見送りとなったものの、後日この部屋が売り出されたことを知ってすぐに内見予約し、その当日に購入を決められました。

旧耐震で築年数は古いながらも、価格や立地もよく、なによりもこの桜の木を含め、マンションの植栽が毎日お手入れされて、管理組合がきちんと機能していることも惹かれた部分だったとか。リビングに入った瞬間に見える景色はまるで絵画のようです。

曲線カーブのある部屋

リノベーションでは、もともと半分ずつに分断されていた部屋の間仕切りを少し幅寄せすることで、窓の開口が大きくとられました。さらに、その壁に丸みを持たせることで、最大限に景観を楽しむことができる間取り変更となりました。

エアコンの室外機や排気口などのあまり見せたくない部分も、このアール形状に切り取られた壁の中に合理的に隠され、せっかくのこの景色を部屋の一部として取り込めるように、繊細な部分まで工夫がなされています。

リノベーション図面

落ち着きのある色の壁に、トグルスイッチ

廊下の一部に取り入れられた“バーガンディ”という、ワインレッドのような色の壁。奥様の好きなピンク色を家に取り入れたかったというのが始まりで、インテリアや周りの雰囲気との兼ね合いで、納得いくまで調整したのがこの色味だったそう。

ここを設計したのは、なんとここで暮らすご主人。アトリエ系の建築設計事務所を経て、現在は不動産業界で働く一級建築士さんです。これまでに仕事で多くの物件を手がけてこられましたが、自邸の設計は今回がはじめてだそう。築古の住居であるがゆえに、建築中は想定外のこともたくさんあったようですが、物件選びから設計まで、経験と知識、遊び心も随所に感じられるリノベーションです。

書斎

設計当時がコロナ渦だったため、間取りには自然と書斎が組み込まれました。
「リモート打ち合わせも多く、だいたいずっとここにいますね」とご主人。玄関ホールからほぼ段差なく地続きとなった空間で、本棚には建築建材のカタログやサンプル材が並びます。
こちらも、もともと居室だった部分の壁を移動させて半分を玄関スペースに広げて配置されました。北側ですが、ドアを開けっぱなしにすることで暗かった玄関にほんのりと自然光が入り、マンション全体を囲う桜の木々は、この書斎からも眺めることができます。

「山小屋」をイメージ

ここはあとからカスタムがしやすいように、壁には合板だけを貼った空間としたそう。モンキーポッドという樹種のデスクをはじめ、木の赤みを持たせたインテリア。ここに、小さな電球の照明を付けたのはちょっとしたこだわりでもあります。

「部屋から桜がみえることに加えて、マンションの外からの見え方も意識しました。外からみたらこの電球が発光して、“あの家、面白そうだな”って思ってもらえるかなって。ほんと、こんなことを考えているのは僕だけだとおもいますけど…笑」

仕事で人を招き、この自宅をショールームとして使用することもあるそう。建築家ならではの繊細さが伝わってきます。

部屋の中心で、明るいキッチンスペース

キッチンは、もともと壁側にL型形状で収まっていたため暗くて使いにくい仕様だったそうですが、生活導線などを考慮して水回りを全体的に拡張されました。キッチン天板の形状が少し特殊な納まりだったため部分的に現地で加工対応しながらも、リビングとの繋がりもある半アイランド、ペニンシュラ型として、広く、明るく感じられる仕様に変更されました。

su:ijiスイージー NZ20、ナチュラル色

「桜の木にも合うし、この家で検討するなら、これ一択でした。リビングに使用した無垢の床と一体感を出すために、色は迷わずナチュラル色で。取っ手は突起物を出さずすっきりみせるJ型(掘り込み取っ手)にしました。使い勝手もいいですね」
テレワークをしながら、お互いの様子を確認しつつも、キッチンに立って調理を担当するのは基本的にご主人だそう。大皿でワンプレートの手料理をよく作るのだとか。

ポストフォームカウンターというメラミン化粧板 で作業スペースを延長

この天板の下側には、煮込み待ち時間などにキッチンで座って過ごすためのイスと、ごみ箱が格納されています。キッチンをリビング側に広げたことにより、夫婦お互いが作業をしながらでも、一緒に会話を楽しめるようになりました。

家事分担

料理担当のご主人に、掃除担当の奥様。奥様は清掃性の良さを一番に重視したため、水垢などが気にならない、人工大理石のホワイト色天板を選ばれました。部屋全体に明るい印象を与えます。

「キッチンはインテリアのなかでも大きい要素です。ウッドワンの無垢材と、白の天板。“木と白”が決まったので、これに引っ張られて周りもいろいろ決めていきましたね」とご主人。

アクセントカラーに黒

「でもその2色だと空間がパリッと決まらないかな」と、キッチン前面の金具や水栓、レンジフードに黒色が採用されました。

キッチンと床は同時期に検討

キッチンはできる限りいろんなメーカーを比較検討したというご主人。心地よさをデザインに組み込んだ床材新商品の足感フロアが発売された時期に、ウッドワンのショールームでスイージーと出会ったそう。キッチン面材と床材を同樹種、同色でコーディネートされました。

ニュージーパイン®ピノアース足感フロアうづくりタイプ

「いつも仕事でお客様に無垢フローリングを提案しても、予算の都合等で複合フローリングなどに決まってしまうことが多かったけど、自分の家だけは無垢を使いたいと思っていたんです。やっぱりいいですね、裸足で歩いてても気持ちいいし」
日常的にくつろいで過ごすリビングには、足触りがよく、木の表情や変化も感じられる無垢の床材を採用し、実際に暮らしてみてその心地よさを肌で実感しているところだそう。
その一方で、油はねなども起こるキッチンの床には、ロボット掃除機に水拭きまで任せられるフロアタイルを使用。生活シーンを想定し、適材適所に床を選択されているのは、その特性を理解しているからこそできるリノベーションです。

ネガティブな条件を味方に

改修時に断熱もきっちり行ったおかげで、無垢の床材と合わせて冬場も足元はあたたかく過ごすことができているそう。

「古い物件なのでもともと天井高さがとれず低いのですが、マンションの遮音性能もあげなきゃいけないので、二重床にしています。ここにシーリングライトをつけるとさらに圧迫感が出てしまうので、照明は上向きの間接照明で、ダイニングには自分で設計したロングアームのペンダントライトを採用しました」 →二点可動式ロングアーム照明

真鍮の見切り材

無垢材とフロアタイル、異素材を組み合わせる部分には、真鍮ゴールド色の見切り材が使用されています。巾木などの役物に関しても、使用する部分、しない部分がさりげなく分けられて、空間全体に自然に馴染んでいます。
「端部やジョイント部分を丁寧にしないと仕上がりが悪くなっちゃうので」とご主人。リノベーション時の細かな心配りが、日々の暮らしを心地よくするのかもしれません。

プロジェクタースクリーンでスポーツ観戦も

家が完成してから、友人が遊びに来ることもよくあるそう。
「リノベーションしていることを計画~工事~仕上がりまで、個人のSNSアカウントで発信しているので、相談にのってくれませんかと連絡がくることもあるんです。直接ここに来てもらったりして。うちもこの床にします、とか言ってくれることもありますね」と、ご主人。Xアカウントはこちら

柔らかいリノベーション

物件の決め手だったという“桜“。
「今はピンク色だけど、やがて新緑の緑がでてきて、秋は赤づいて、冬は枯れちゃいますけど…シーズンごとにいろんな情景がみえていいなって」と、ご主人。

季節は巡り、時代のスピードも心なしか早く感じる東京。建築家としてこれから先も歩むことを考えたとき、ここで一生暮らす、と考えているわけではないようです。
「理想は10年、いや5年スパンかな。生涯であと6回はリノベーションしたい。こうして住みながら物件の資産価値をあげて売って、事業としてまわすのは、最近一部の建築家たちのトレンドでもあって。建築物として、資産として、いずれ売却を見据えたときには、実際のところトガりすぎると売れにくいんですよ。これくらい柔らかさがあったほうが、一般受けはしやすいのかな…」

不動産としての価値を見据え、数年後も心地よく、永く住み継いでもらうことも考えたリノベーション。環境にも配慮した、スクラップ&ビルドではない暮らしの広がりを感じます。

「いつも僕の意見が強いんですが、妻は文句言わず(?)ついてきてくれています。笑」

春にほんの数日間咲き誇る桜。ご夫婦はこれからあと何回ここで楽しむのでしょう。

(文:松岡)


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設計:大槻匠


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