木のある空間に入って心地よい香りを吸いこむこと、古材のテーブルにふれてその凹凸を感じること、一つひとつ違う木目の味わいを楽しむこと…。生活のなかで、本物の木にふれる機会が減っている今だからこそ、子どもたちにもそんな体験をして欲しい。「家族で行ける、木とつながるカフェ」のシリーズでは、木のある空間で、子どもと一緒に食事を楽しめるお店をご紹介します。
生きた時間と空間を可視化する。
そんなコンセプトをもとに、新木場の銘木倉庫を改装して作られたコンプレックス・スペース「CASICA(カシカ)」。蔵の中のようでもあり、美術館のようでもあり、何か未知のものに出会えるわくわく感を感じる空間です。
年代や国よりも大切なのは、自分の感覚で選んでもらうこと。
CASICA(可視化)は新しいもの、古いもの、そして国やジャンルにとらわれず、ものの魅力を見つめなおしたい、という想いから生まれました。自由に選んで、自分らしく使うことを提案するショップでは、見たことのない光景に出会えるはず。例えば、アフリカのラグと和箪笥を合わせたコーディネート。違うジャンルのものを一緒に使っているのに、違和感なくなじんでいて、新しい使い方を気づかせてくれます。
並んでいる商品には、値段以外の説明がほとんどありません。それは、自分の感覚でものを選んでほしいと考えているから。例えば、「これは何年ものだから良いですよ」というのは売る側の価値観。買う側にとっては「古い」「新しい」といったことよりも、「好き」だとか「今の生活に合っている」ということが大切ですよね。
ゆっくり自分の「好き」と向き合える。
店内には、手が届かない高いところにイスやかごが掛かっていたり、使い方が想像できないオブジェが置いてあったりと、インテリアなのか商品なのか、分からないものがところどころにあります。
取材班は「これは商品ですか?」「これは何ですか?」と聞いてみたくなったのですが、そうやって声をかけてもらうことで、商品のストーリーを丁寧に説明したいのだと教えてくれました。作り手の想いや、ものに込められたストーリーを聞きながら買い物ができるなんて、素敵ですね。
天井が高く、広い店内は、ものがたくさんあるのに不思議と落ち着いた雰囲気で、じっくり隅から隅まで見てみたくなります。ショップの他にカフェやギャラリーもあるので、カフェで食事を楽しみながらゆっくり回って、じっくり自分のなかの「好き」という気持ちと向き合ってみてはいかがでしょうか。
「体にやさしい」を、可視化するカフェ。
カフェでは、「体にやさしい」という食べ物の価値を可視化します。食べることを通して、心と体の調子を整え、「体にやさしい」「体がよろこぶ」ということを体感してもらう。それが、目に見えないものを可視化するということ。中国の伝統医学である薬膳や、インドの伝統医学であるアーユルヴェーダの考えを取り入れていて、その季節に取ると良いとされる食材や、旬の野菜を使った料理を提供しています。
木材の街、新木場での挑戦。
ショップでひときわ目を引く、明治から昭和の時代に作られた古家具。こういった古い家具は、表面は擦れたり汚れたりしていても、塗装を削ると美しい木が現れるのだそう。さらに、別の色で塗装すると、木目が映えてより味わいが出たり、表情が変化したりします。
貯木場として誕生した新木場は、材木業者や木材の加工工場の多い、木材の街です。お店の建物も、もともとは木材を保管していた倉庫でした。そんな、木とゆかりの深いこの場所から、どのようなモノ・コトを発信していかれるのか。そして、未知の感覚がどのように可視化されるのか。CASICAさんのこれからの活動が楽しみです。
〈取材協力〉
「CASICA」のチャイルドケア情報
- キッズチェアあり
- 授乳室、おむつ替えスペースあり