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2019.03.12

家族で行ける、木とつながるカフェ #01

【東京編】高円寺の古民家カフェ―HATTIFNATT 高円寺のおうち―

木のある空間に入って心地よい香りを吸いこむこと、古材のテーブルにふれてその凹凸を感じること、一つひとつ違う木目の味わいを楽しむこと…。生活のなかで、本物の木にふれる機会が減っている今だからこそ、子どもたちにもそんな体験をして欲しい。「家族で行ける、木とつながるカフェ」のシリーズでは、木のある空間で、子どもと一緒に食事を楽しめるお店をご紹介します。

木とつくる「40年後に完成するお店」

高円寺駅から歩いて5分。古民家を改装したショップが並ぶなかに、童話のなかから飛び出してきたような「HATTIFNATT(ハティフナット)高円寺のおうち」はあります。

オーナーの髙嶋さんが、年を経るほどに味わいが増すお店にしたいと、木造の建物を改装。床、テーブル、イスなど、内装にも木をふんだんに使い、40年たった後に「このお店、いい雰囲気だよね」と言ってもらえるお店を目指しました。

子ども心に帰って楽しい時間を過ごしてほしい

かがむことで子どもの目線になれる小さい入口、呼び鈴代わりのトライアングル、屋根裏部屋のようなロフト…。忙しい日常を忘れ、子どもに戻ったような気持ちで楽しんでもらうために、HATTIFNATT 高円寺のおうち にはワクワクする仕掛けが用意されています。

そのなかでもひときわ目を引くのが、お店の一番奥まで行くと現れる、色鮮やかな壁画。「地球以外の場所」で人間の子どもたちと動物が一緒に遊んでいる絵が、壁全体に描かれています。非日常を感じさせてくれるこの絵は、marini*monteany(マリーニ・モンティーニ)さんの作品です。

実は壁画のある部屋は、お店が始まって2年後に増設したスペース。当時HATTIFNATT高円寺のおうちでは、作家さんの作品の展示もしていて、そのうちのひとりだったmarini*monteanyさんに絵をお願いしました。増設のことはお客さんには秘密にしていて、通常営業しながら壁の向こう側で工事を進めていたそう。部屋が完成した後、1日お店をお休みにして壁に穴をあけ、2つの部屋をつなげました。

壁に空けた通り道。壁のこちら側が増設した部屋。

次の日、髙嶋さんは、何も言わずいつも通りお客さんを通しました。お客さんは、急に部屋が増えていて、しかも全面に絵があるのですごく驚いていたそうです。このサプライズによって、HATTIFNATTはmarini*monteanyさんの絵とともに多くの人へ広まっていきました。

家族のおかげでHATTIFNATTがある

髙嶋さんが、お店を始めるときに目標にしたのは、高円寺で40年くらい続いている喫茶店。その喫茶店のように「40年前からあるんだよね、あのお店。いいよね」と言ってもらうためには、やっぱり木だな、と思われたそう。おじいさんが大工の親方で、小さいころから仕事の様子をそばで見ていたという髙嶋さん。木は、年を経るほどにぬくもりや深みが出てくる素材であることを感じていたそうです。

木造の建物を探していた時に思い当たったのが、おばあさんが所有していたという空き家でした。1Fが電気屋、2Fが住居という、昔は普通にみられたつくりの建物です。家族で協力してリフォームしました。

木目の凹凸が味わい深いテーブルとイス。

床を張り替えて柿渋を塗ったり、古いイスを用意して削って木目を浮き出たせたり。すべて自分たちで作業したそうです。

版画職人のお父さんがくれた版画制作用の板を、カウンターに使っている。
窓の外のグリーンは、お母さんが手入れをしてくれているそう。

店名の「ハティフナット」は、ムーミンに出てくる「ニョロニョロ」のフィンランド語の名前です。実は、髙嶋さんのお姉さんのお店も、ムーミンキャラクターの名前がついています。「トゥーティッキ」という、手作りの作家さんの作品を扱うレンタルボックスで、HATTIFNATT高円寺のおうちができる1年ほど前にオープンしていました。髙嶋さんのお店もギャラリーカフェでしたから、お揃いにしたのだそうです。

家族とのつながりのなかで生まれたお店には、家族のあたたかな想いが込められています。

カフェだけど、カフェじゃない

HATTIFNATT高円寺のおうちがオープンした2000年代初頭はカフェブームでした。しかし、あえて店名にはカフェという言葉を入れませんでした。

「時代が移り変わっても愛されるお店でいるために、HATTIFNATTというお店を定着させたい」そんな思いから、どこにもカフェという言葉を使わなかったそうです。

「来てよかった」と、毎回思ってもらいたい

こうして始まったお店でしたが、初めはお客さんがほとんど来ない日々が続きました。「当時はメニュー看板も出していませんでしたし、入口も小さいから入りにくいですよね」と髙嶋さんは笑います。カフェだと知らず来店されて、「ここ、カフェなんです」と伝えると「そうなんですね」と帰っていく人もいたのだそう。

それでも、髙嶋さんは自分のやっていることを信じていました。人数は少なくても、お客さんが満足した顔で帰ってくれる。そして、笑顔で帰ってくれた方がまた来てくれる。それは最高に嬉しくて、ありがたいことでした。「来てよかった」といつも思ってもらえるお店でいること。お客さんが増えて、お店が大きくなっても、その想いは変わりません。

HATTIFNATT高円寺のおうち の稲田店長。「ご飯やケーキは全て手作り。そこが好きなんです」と話してくれた。

今では、稲田店長をはじめ、もともとお客さんだった人が、HATTIFNATTを大好きになって、スタッフとして加わっています。そんなスタッフさんの意見で、初めはコーヒーだけだったドリンクメニューにラテアートが加わり、メニュー表のデザインも変更しました。

髙嶋さん一人でやっていたころから、少しずつ変わってきているHATTIFNATT 高円寺のおうち。木とともに、通い続けるお客さんたちとともに、30年、40年と、どのように年月を重ねられていくのかとても楽しみです。

HATTIFNATTのフード&ドリンク

5種類の野菜をじっくり煮込んだ「玄米トマトカレー」
お子さまメニュー。ぬり絵と色鉛筆が付く。
自家製のキャラメルソースを使ったドリンク「しろくまくん」

〈取材協力〉

HATTIFNATT高円寺のおうち
http://www.hattifnatt.jp/blank-c66t

「HATTIFNATT高円寺のおうち」のチャイルドケア情報

  • お子さま向けメニューあり

※内容は取材当時(2018年12月)のものです。