木材って、本当はどんな材料なのだろう。どんな魅力があるのだろう。「木と住む知恵」のシリーズでは、知っているようで知らない、「木」にまつわるあれこれについてお話ししたいと思います。
中身が熱くても、手にとれる木のお椀。
たとえば、あつあつのお味噌汁を飲むとき。木のお椀だと、手にとっても熱くないのはなぜでしょうか。もし、お味噌汁のお椀が木じゃなかったら・・・。
今回は、お椀が木である秘密を実験を通して探ってみました。
どの器が一番熱くなる?
用意したのは、同じくらいの大きさで素材が異なる3種類の容器。木のお椀に、陶器のお茶碗、そして、ホーローのボウルを用意しました。
この3つの容器にお湯を注いで、容器の表面温度の変化を観察します。表面温度の計測にはサーモカメラを使用しました。
よーいどん!で同時に、ケトルで沸かしたてのあつあつのお湯を同量ずつ注ぎます。
注いで10秒後のサーモカメラの画像。
温度が上がるほど黄→赤→白と変化していきます。
1分後
2分後
温度変化の様子はこちらの動画でもご覧いただけます。
温度変化をまとめると次のようになりました。
陶器とホーローが一瞬で熱くなり、中のお湯とほぼ同じ温度になっていたのに対し、木はゆっくりと温度が上がっていきました。また陶器やホーローの熱さまで全く達していません。
実験後、実際にそれぞれの容器を手に持ってみました。
木のお椀はじんわりとあたたかさが手に伝わる程度でしっかりと持つことが出来ました。
ホーローのボウルと陶器のお茶碗は表面が熱くてしっかりと持つことはできません。
お茶碗の糸底の大切さを改めて感じました。
なぜ、木のお椀は表面が熱くならないの?
では、どうして木のお椀は中身が熱くても表面は熱くならないのでしょうか。それは木の「熱伝導率」が低いということがあげられます。「熱伝導率」とは、熱の伝わりやすさのこと。木の熱伝導率は、陶器の1/10、そしてなんとホーローの1/500。とても熱を伝えにくい性質を持っています。木の内部には、ごく小さな穴が無数にあり、その中には空気が封じ込められています。空気は熱を伝えにくい性質があるので、木のお椀にあついお味噌汁を入れても熱が伝わりにくくて熱くならないのです。
もうひとつ、こんな実験もしました。3つの容器を空っぽにしてお湯に浮かべ温めます。
そこに同時に、氷菓子をのせてみます。どれが早く溶けるでしょうか?
開始30秒後。
ホーローのボウルにのせた氷菓子はあっという間に溶けました。
陶器のお茶碗にのせた氷菓子もじんわり溶けているのが分かります。
一方で、木のお椀にのせた氷菓子はほとんど溶けていないようです。
お湯の熱が木の表面までは伝わりにくいので、氷が溶けにくいということですね。
熱を伝えにくいという性質だから、木でできている。
お味噌汁のお椀だけでなくて、木のスプーンや、木の鍋敷きなど、木が熱を伝えにくいという性質があるからこそ、身の回りには木でできた製品がたくさんある、ということに納得できる実験結果でした。
木は、いつもさりげなく私たちの暮らしを助けてくれる存在なのですね。