自然を感じる暮らしって、ローカルな場所でなければできないのでしょうか?日本の伝統って、いまの私たちの暮らしとは縁の遠い話なのでしょうか?きっと、そんなことはありません。「自然が、自然に、とけこむ日々」のシリーズでは、もっと自由に、いまのスタイルにあわせて、日本の風習や、季節の情緒を楽しむかたちを探っていきます。
シュロたわし、コト始め
レジ袋の有料化が始まり、改めて地球にやさしい暮らしについて考えられた方も多いのではないでしょうか?今回は、シュロという植物で作られた束子(たわし)のお話です。かわいいだけでなく、使い心地も優秀なシュロたわし。お掃除のモチベーションアップにも一役かってくれます!
シュロの木はいろんな部位が活用できる便利な木として、昔の農家では重宝されていたそうです。幹を段々になって覆う皮は、網目状になった繊維でできていて、昔のお母さんがこの繊維を束にして鍋釜洗いに使っていたことをヒントに束子(たわし)が作られました。
合成洗剤を染み込ませて洗剤の力で汚れを落とすスポンジたわしが主流になるまで、洗うための道具と言えばシュロたわしが定番でした。
たわしと聞くと、硬くてキズがつくイメージがあるかもしれません。それはきっと、シュロ皮が高価になって、その代用として使われるようになったココヤシたわしを想像するから。元祖たわしのシュロたわしの繊維は、柔らかいのにコシがあって、丈夫で長持ちする優れものです。
それでは、いろんな形のシュロたわしの、お勧めの使い方をいくつか紹介いたしましょう。
シュロたわしの使い方
気がつけば陶器やステンレスのマグカップについている茶しぶ。
シュロの繊維でゴシゴシこすると、茶色い部分が綺麗に取れていきます。コツは力を入れないこと。歯磨きと一緒で、力を入れて毛を押し付けると繊維が潰れ、磨きの効果が減ってしまいます。毛先を活かすようブラッシングしましょう。
毛足の長いシュロたわしなら、急須の口などの洗いにくい部分の茶しぶも落とせます。
保存容器のフタ、炊飯器の内蓋などの細くて小さな窪みの中もゴシゴシ。小さなほうきとして階段の隅やサッシレールに溜まるホコリを掻き出すなど、手の届きにくいところのお手入れにも便利です。
鉄鍋のお手入れにはささら型。
繊維を固く束ねて棒状になっているので、握って力強く擦れるのが特徴です。鉄鍋をうっかりサビさせてしまった時のサビ落としにも活躍します。
お風呂の床やタイル目地など凸凹のある面を洗うときは縄のかかったオーソドックスなシュロたわしがお勧めです。縄に指がかかるので持ちやすく、平面が洗いやすいのです。
小さめのシュロたわしに柄がついたタイプなら、キャンバス地のスニーカーや子供の上履きなどもゴシゴシ。靴底の溝やインナーソールも気持ちよく洗えます。
シュロたわしのお手入れ方法
初めてシュロたわしを使う時には、たわしについた汚れと保管方法が気になるかもしれません。水場で使ってシュロたわしに付いた油汚れが気になった時は、熱湯を掛けて油を洗い流しましょう。使うたびにしっかり水を切って、木の柄がついたものであればシュロたわしの方を下にして水切りしてください。シュロの繊維は水に強く、木の柄の方がむしろカビたり腐ったりしやすいからです。
強い洗剤や漂白剤に頼り過ぎず、天然素材のシュロたわしを上手に活用したゴシゴシピカピカライフを楽しんでくださいね。
〈 取材協力 〉