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2020.03.13

自然が、自然に、とけこむ日々 #11

球根の水耕栽培で、春を楽しむ

自然を感じる暮らしって、ローカルな場所でなければできないのでしょうか?日本の伝統って、いまの私たちの暮らしとは縁の遠い話なのでしょうか?きっと、そんなことはありません。「自然が、自然に、とけこむ日々」のシリーズでは、もっと自由に、いまのスタイルにあわせて、日本の風習や、季節の情緒を楽しむかたちを探っていきます。

水耕栽培を知っていますか?

春の球根花を見ると、エミール・ガレのガラス工芸作品を思い出します。ぷっくり、シルキーな花弁は、少し厚みがあるのに透明感もあって、まさに春を形にしたような美しさです。その美しさに勝るとも劣らない魅力が高貴な香り。春の庭に咲く姿は天使が集うかのようです。

そんな美と香りを兼ね備えた素敵なお花、育て方を覚えればお家で咲かせ、お部屋で楽しむことができます。「水耕栽培」という、土ではなく水で植物を育てる方法です。

球根が手に入りやすく、誰にでも育てやすいお花はヒヤシンスやムスカリ。特にヒヤシンスなら専用の水耕栽培ポットも市販されているので、初めての方でも始めやすいですね。

ポットが無い場合は、500mlのペットボトルでも代用できます。上から3分の1のところを水平に切り、飲み口側を逆さまにしてボトルに重ねます。飲み口より球根のお尻が大きい場合は、飲み口をお尻のサイズに合わせて切ってあげてください。

水耕栽培の始め方

栽培する球根は、秋に販売されます。根も芽も出ていない玉ねぎのような姿です。触った感じがふわふわしていない、カビが生えたりしていないものを選びましょう。

水耕栽培を始めるのは12月の中頃から。それまでは紙袋や封筒などに入れて冷蔵庫で寝かせてあげます。え?冷蔵庫?と、驚かれるかもしれませんが、球根をおうちで上手に育てるコツは、屋外の土の中の状況を疑似体験させてあげること。冷蔵庫は寒い冬の代わり、こうすることで球根の中で春への準備が整います。

12月、いよいよ球根ポットで栽培を始めますが、最初は暗い土の中に似た環境を作らなくてはなりません。球根が水に浸かっていては腐ってしまったりカビが生えたりするので、お尻に水が付くかつかないかくらいまでの水位で球根をセットしたポットを、箱の中など暗闇に近いところに置いてあげます。こうすることでまず水を吸うための根っこが伸びてきます。根が伸びてからの水は、球根のお尻の1cm下に水面がくる水位にします。

球根 水耕栽培

花がひらくと、春がやって来ます

根っこの次は芽を出す番。いよいよ暗闇から出して、明るい地上に伸びていく季節の到来を知らせてあげます。日当たりの良い窓辺に置くと、日ごとに少しずつ芽が伸び、ある日小さな花芽がのぞいていることに気がつくはずです。

球根 水耕栽培

花が咲いてからも、日の差す時間はできるだけ窓辺で日光浴をさせてあげます。その他の時間はお好みの場所にポットを移動させて美しい花と素晴らしい香りを存分に楽しみましょう。

水耕栽培用の球根は、時期を過ぎると手に入らなくなってしまいます。秋が来たら、来年の春に向けて、球根や素敵なポットを探してみてください。開花まで時間がかかる分、花開いた時のうれしさは格別です。

球根 水耕栽培

水耕栽培で花期が終わった球根は、種類によっては翌年、同様に咲かせることは難しい場合があります。咲くまでの4ヶ月にたっぷり愛情を注いであげてくださいね。

 

〈 取材協力 〉

hitofushi

http://hitofushi.com