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2019.09.19

自然が、自然に、とけこむ日々 #09

白ご飯がおいしい季節

自然を感じる暮らしって、ローカルな場所でなければできないのでしょうか?日本の伝統って、いまの私たちの暮らしとは縁の遠い話なのでしょうか?きっと、そんなことはありません。「自然が、自然に、とけこむ日々」のシリーズでは、もっと自由に、いまのスタイルにあわせて、日本の風習や、季節の情緒を楽しむかたちを探っていきます。

お米と季節

新米を見掛けるようになると秋の到来を感じますね。

逆に言うと、一年を通して価格の変動も色形の変化もないお米からは、秋の新米でしか季節を感じることが出来ないのが現代の暮らしです。

昔は、春の社日(しゃにち/3月21日近く)に種籾(たねもみ)を神様に供えて豊作を祈り、八十八夜(5月2日頃)に籾蒔きをし、小満(しょうまん/5月21日頃)に田植えの準備を始め、芒種(ぼうしゅ/6月5日頃)に田植えをするというように、田んぼ仕事の目安になる暦がありました。稲の様子に季節を感じて過ごし、ついに収穫した新米は、きっと何倍も美味しく感じられたことでしょう。

田んぼの月日を知れば、私達も今年の新米をいつも以上においしくいただけるかも知れませんね。苗を育てる20日、田植えから穂が出るまで80日、穂が結実し熟すまで40日、合計140日の様子をほんの少し覗いてみましょう。

田んぼの月日

春、田んぼでは水漏れを防ぐ畦塗り(あぜぬり)、土を起こして乾かし空気を含ませる田起こし、水を張り土を砕いてかき混ぜ均す代掻き(しろかき)を済ませて田植えの準備が進められます。稲の種「種籾(たねもみ)」は優良なものが選別され、まずは苗代で育てられます。苗代に蒔かれてから約20日、15cmほどに育った苗がいよいよ田んぼに植え付けされます。

稲の苗

田植えの後は稲がまだまだ弱いので田んぼの水は深めに調整されます。その後は成長に合わせて浅くしたり、根に酸素を送るため水を入れた状態と抜いて乾いた状態とを繰り返したりと、水量の管理が行なわれます。稲がすくすく育つ頃は畦の雑草もよく育つので、害虫の隠れ家にもなる畦草刈りも欠かせません。

初夏、茎が増えすぎないよう一度田んぼは水を抜いて乾かされます。その後水を入れたり乾かしたりが繰り返されます。この頃になるとグンと伸びた稲の間に稗(ひえ)などの雑草が顔を出すように。遮るものの無い炎天下、田の栄養を横取りし、稲刈りの時の邪魔になるこれらの雑草はていねいに手で抜かれます。

夏の終わり、葉の間に穂が見えるようになり花が咲き始めます。台風などの暴風雨の季節を迎え、天気予報が気になる毎日も始まります。

稲

こうして田植えからだいたい120日頃、待ちに待った稲刈りを迎えます。水が抜かれた田んぼに、昔は人が入って手刈りしていましたが、今はコンバインと言う刈取りと脱穀(稲の束から籾をはずす作業)とを同時に行なう機械が多く使われています。コンバインで刈り取られた籾(皮付の米)は最適な水分量になるまで乾燥機で乾かされ、籾すりという皮を剥ぐ作業を経て玄米になります。この後さらに精米という行程を経て、ようやく白いお米が出来上がります。

土鍋でご飯を美味しく炊く

待ちに待った新米が台所に届いたら、ぜひ土鍋でおいしく炊いてみましょう。

1.計量したお米をザルとボウルで洗米します。ゴシゴシ擦り合わせると米粒が割れてしまうのでざっと混ぜるように。1回目2回目の水はとくによく濁るのですぐに取り替えます。

2.5回程度でザルに上げ、米の真ん中をへこませ、濡れふきんを掛けて水切りします。途中でお米の天地を返して再び同様の状態に。夏場は30分ほど、冬場は50分ほどで水切り完了です。

米とぎ

3.水加減はお米を計量したのと同じカップを使って、お米と同じ分量の水を入れてください。

4.土鍋で炊飯初心者の方は、最初は蓋をせず強めの火に掛けてみてください。グツグツと沸騰してきたら蓋をして弱火にし、10分経ったら火を消しそのまま10分蒸らします。この方法なら火加減を失敗せずに炊けますよ。

ピカピカに炊きあがった新米を頬張りながら、田んぼの140日を思い巡らしてみてくださいね。

炊飯 焼きおにぎり

 

〈 取材協力 〉

hitofushi

http://hitofushi.com