木材って、本当はどんな材料なのだろう。どんな魅力があるのだろう。「木と住む知恵」のシリーズでは、知っているようで知らない、「木」にまつわるあれこれについてお話ししたいと思います。
木のまな板を選んでいる人は感じている、使い心地の良さ
一般的に木のまな板は「包丁に優しい」「音が心地よい」「刃当たりが良い」と言われています。木のまな板を選んでいる人は感じているその魅力を、2回に分けて探っていきます。
前編では、プラスチックのまな板と木のまな板で、包丁の傷み具合が変わるのか調べました。前編はこちらから。
後編は、素材や樹種によって、包丁が当たるときの音や切ったときの感覚が違うのか調べてみたいと思います。
プラスチックのまな板2種類、セラミックの板1種類、木のまな板4種類を用意して実験しました。
①標準的な厚さの、プラスチック製まな板
②薄いシート状のプラスチック製まな板
③セラミックの板
④桐のまな板
⑤イチョウのまな板
⑥ひのきのまな板
⑦オリーブのまな板
包丁が当たるときの音を比べてみます
それぞれのまな板の音には、どんな特徴があるのでしょうか。分析をしてみます。
包丁の柄を10㎝の高さに固定して、そこを支点に刃をまな板の上に落とします。ばらつきを抑えるために3回繰り返し、刃がまな板に当たった時の音の大きさと周波数を測定しました。
まず、音の大きさを比べてみます。
包丁が当たったときに出る音の大きさは、セラミックで大きく、桐は小さいという結果になりました。それ以外は、プラスチックでも木でもそれほど差はありませんでした。
私たちは、5dBの変化で音の大きさの違いをはっきりと感じ、10dBでは2倍の差を感じます。同じ木のまな板でも、オリーブのまな板を使うときに出る音は、軽く柔らかい桐と比べて約2倍も大きい音に感じるのですね。
次に、周波数ごとに音の大きさを比べてみます。
低周波の音(低い音) はあまり違いが見られませんが、高周波の音(高い音)は、材質や樹種によって大きさに差が出ました。
高い音は、人の耳に感じやすいと言われています。プラスチックや木は高い音が比較的小さいので、耳への刺激が少ないようです。木のまな板のなかでも、特に桐は高い音が小さく、耳にやさしいという結果になりました。
小さいお子さんがいるご家庭などで、食材を切るときの音が気になる方は、桐のまな板を使ってみるのも良いかもしれませんね。
刃当たりは、それぞれのまな板で違いがありました。
7種類のまな板を使って、実際にネギを切ってみます。まずはプラスチックのまな板。使い心地に違和感はありませんが、ところどころ切れずにつながってしまいました。
次は、薄いプラスチックのまな板。厚みのあるものよりも硬く、ツルツルと滑る感じがします。切り終わって見てみると、かなりつながってしまっています。
セラミックの板は、硬くて押し返されるような感覚があります。キリキリと金属をひっかくような音が鳴るのを抑えるために、ゆっくり慎重に切っていく必要がありました。
桐のまな板で試してみます。包丁がまな板にサクッサクッと入っていき、滑る感じは全くありません。輪切りもきれいにできました。
イチョウのまな板は、桐ほどではありませんが、程よく包丁が入り込む感じがします。輪切りもすべてきれいにできています。
ひのきのまな板は、包丁が入り込むというよりは表面で受け止めてくれている感覚で、トントンと軽やかに切っていけました。輪切りもつながっていません。
オリーブのまな板は、他の3樹種と比べると少し硬い感じがしましたが、輪切りはつながることなくきれいにできました。
実際に切ってみて、包丁が当たるときの感覚は確かに木の方が気持ち良いと感じました。それだけでなく、輪切りや千切りをしたときに具材がつながらずに切れるというのは嬉しいですね。
実際に比べてみると、刃当たりは樹種によって驚くほど変わりました。その好みには個人差があり、編集部のなかでも意見が分かれました。包丁を早く動かしても滑らないからイチョウが良いという人もいれば、包丁がまな板に入り込みすぎず、硬さがちょうど良いからひのきが好きという人もいましたよ。
料理をするときには必ず使うまな板。見た目や使い心地の違うものを何種類かそろえて使い分けられたら、料理がもっと楽しくなりそうですね。