自然を感じる暮らしって、ローカルな場所でなければできないのでしょうか?日本の伝統って、いまの私たちの暮らしとは縁の遠い話なのでしょうか?きっと、そんなことはありません。「自然が、自然に、とけこむ日々」のシリーズでは、もっと自由に、いまのスタイルにあわせて、日本の風習や、季節の情緒を楽しむかたちを探っていきます。
究極の和製ハーブ
生活道具を扱う私のショップでも、ヒノキやクスの木の香りを楽しむ製品をよく手にとっていただいていますが、アロマやハーブティーで身体と心の調子を上手に調えるかたも多いようです。植物の香りには、すっと深いところに浸透していくような気持ちよさがありますね。
日本の木材からも抽出される精油とは違い、ハーブはラベンダーやカモミールなど西洋の植物のことだと思われがちです。けれどもちろん日本にだってハーブに該当する植物は沢山あります。そんな中でも「究極の和製ハーブ」「ハーブの女王」と呼ばれる、豊かな香りと多くの効能を持つのがみなさん良くご存知のよもぎです。
春になると、お団子やお餅でその清々しい香りと鮮やかな緑色を楽しむ機会が増えますね。加工されたものを見るばかりで生葉には馴染みがないかも知れませんが、実は町の片隅、アスファルトの隙間にでも生えているような植物なんです。
よもぎと日本人のお付き合い
日本人は遠い昔からこの、身近な「究極の和製ハーブ」を暮らしに取り入れてきました。
芳香には邪を祓う力があると考えられていた古来には「魔除け草」と呼び、上巳の節供には草餅にして食べ、端午の節句には軒に吊るし、大切な節目の邪鬼払いに用いられました。
また民間薬としても、怪我をした時はちぎって生葉を止血薬に、コリには乾燥させた葉から白い繊毛だけを揉み集めて(もぐさ)お灸に、乾燥した葉を入浴剤やお茶にと万能に活用してきました。昔の人がどうやってその薬効を把握したのかはとても不思議です。
よもぎを探してみましょう
日本人の暮らしの中で活躍してきたよもぎ。みなさんにも見つけられるでしょうか。
日本には35種類のよもぎがあり、その中の一部を除いては葉の裏が白い繊毛に覆われています。地下茎でつながっているので、一ヶ所に群生し葉の形は菊に似ているのも特徴です。もし姿で判りにくいようでしたら、ちょっとちぎって揉んでみて下さい。馴染みあるあの芳香がすればよもぎです!
5月頃までの若葉は柔らかく灰汁も少ないので、調理用にはこの時期に摘んだものを使います。そういう訳でよもぎ餅のシーズンは春なんですね。
自然豊かなところにお出かけすることも多くなるこの季節。足もとによもぎを見つけたら少し持ち帰って、生葉から作る草団子つくりに挑戦してみるのはいかがでしょうか。
次回はよもぎ団子の作り方をご紹介します。
〈 取材協力 〉