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Lifestyle

2025.09.05

花から食卓まで、四季の植物と綴る日々 #09

種とスパイス、そして秋の風

こんにちは、フラワー&グリーンスタイリストのさとうゆみこです。

猛暑の長い夏がまだまだ続いていますが、ふと見上げると空にはトンボが飛び交い、心地よい夜風も感じる今日この頃。少しずつですが秋は確実に始まっているようです。

さて、今回は偶然に畑から生まれたスパイスのお話から始めます。

コリアンダーシードを採ってみる

こちらはパクチーの種。コリアンダーシードと言うほうが馴染み深いかもしれません。

ん?コリアンダーの種?パクチー?たくさんの呼び名があるのでいつも頭が混乱しますが、英語由来ではコリアンダー、タイ語由来ではパクチー、中国語由来ではシャンツァイ、どれも同じ野菜を指します。主に葉っぱを食すハーブとしてはパクチー、種になるとコリアンダーシードと呼ばれることが多いような気がします。

私は残念ながらパクチーの葉は苦手で食べられないのですが、種はスパイスとして大好きでよく購入します。

今年の春、お隣の畑友さん(バングラデシュ人の方です)から私の畑に飛んできたコリアンダーはそのまま生長し、初夏には美しい花を楽しませてくれました。

繊細な野草のような性質ですが、最近は花市場に切り花として旬の時期だけ出回っているのを見かけます。確かにレースのような葉と小さな小花がナチュラルなブーケにもぴったりです。

一度発芽すると意外と強健に育ってくれます

生やしたままにしておくと、いずれ花は枯れ、葉は落ちてこのような丸いつぶつぶの種だけが残ってくれます。

指で揉みとったり、袋の中で軽く揉んだりして種を枝から外した後、茎から種のある部分を外してザルを通していきます。

食用にする場合は余分な部分はきれいに取り除かなければいけません。少ない量でもなかなか大変な作業です。

もう少し重い種(例えばヒマワリなど)なら扇風機でゴミを飛ばす方法もありますがコリアンダーシードは軽いのでいくつかの目あいのザルを使ってやってみました。

きれいに種だけになったら、最後はさっと水洗いしてしっかり乾燥。コリアンダーシードスパイスの出来上がりです。

種を取り除いた後、ぼうっとしていたら、タネを外した茎の部分がいつの間にか鳥の巣リースになっていました… 職業病?笑

少々手間はかかりますが、自分で育てれば(今回はこぼれ種で何もしていませんが)たっぷりのスパイスが手に入ります。

コリアンダーシードは噛んでみるとフローラルで柑橘類のような爽やかな香りが口の中に広がります。

早速料理に使ってみました

この日はナスのインドカレーにコリアンダーシードをたっぷり使ってみました。

コリアンダーはガラムマサラ(※)にも使われるくらい、定番のスパイスです。潰したコリアンダーシードはオイルで熱してしっかり香りを出します。

野菜だけでなくスパイスまでも畑から生まれた!スペシャルなひと皿になりました。

※ガラムマサラ…インド料理の代表的なスパイスミックス

今年初めて作ってみた品種「ふわとろ長」。トロトロ食感が美味しいナス
ヨーグルトをベースにした茄子とひき肉のスパイスカレー。揚げたナスがたっぷり入っています

こちらはゴーヤの肉詰め。コリアンダーシードやセージを入れた豚ひき肉を詰めて焼きました。あえて、玉ねぎやつなぎを入れず肉々しいおつまみ風に。ゴーヤの苦味とスパイスはよく合います。

ゴーヤの肉詰め。飽きないように料理法を考えるのも楽しい

今年ゴーヤを育てる予定はなかったのですが、どこから来たのかいくつかこぼれ種が発芽していたのでそのまま育ててみました。できた実はなんと写真のように全て10センチほどの短いものばかり。そして、やけに薄い。笑(左側にある長い一本は頂き物です)

カップのような形を生かした肉詰めです。

スズメちゃんサイズのかわいいゴーヤ

コリアンダーは一年草なので、一度咲けば終わりです。今回収穫したときに、種を少しだけその場にばら撒いておきました。また来年も収穫できますように。

毎年採れるフェンネルシード

フェンネルは多年草なので一度植えると毎年たくさん収穫できます

前回はサラダ用に使ったというお話をしたフェンネルですが、これも育てやすく、そのままに時間が経てばスパイスとして使えるフェンネルシードが簡単に採れます。甘いアニス風味でカレー、マリネ、魚料理、お菓子などに使うことができます。

ちなみに、フェンネルもコリアンダーも同じ仲間のセリ科の植物。セリ科のスパイスって多いんですよ。我が家でもよく使うクミンシード、そしてディルシード、アニス、キャラウェイシードなどもセリ科です。

放射線状の形が美しい。この傘を逆にしたような形はニンジン、パセリなどセリ科の花に多い特徴です

エビスグサでハブ茶を

畑友のSさんの畑にはエビスグサ(恵比須草)と言う植物が植えられています。初めて見る方も多いのではないでしょうか。黄色い花を咲かせるマメ科の植物。主に漢方薬や「ハブ茶」の原料として使われます。

使われるのはサヤの中にある種子(豆)の部分で、この部分は漢方の生薬では「ケツメイシ(決明子)」と呼ばれています(あの音楽グループの名前の由来だそうです!)

インゲン豆のような細長いサヤの中には小さな豆が並んでいます。

黄色い花がこの下にある10センチ以上の長細いいサヤに変わります

とても育てやすいそうで、現在は私の肩くらいの高さまで大きく元気に育っていました。

秋に全体が褐色に枯れたようになればサヤを収穫し、中の種を取り出します。フライパンなどで煎って煮出せばハブ茶の出来上がり。私はハブ茶自体を飲んだことはありませんが特にクセはなく香ばしい美味しいお茶なのだそう。収穫するときにじっくり見せてもらうのが楽しみです。

でもこんな細いさやからひとつひとつ取り出すのは大変そうですが…

こんな猛暑の中でも病害虫も無くぐんぐん伸びている

小さな梨

近所の農家Oさんの畑に大きな梨の木があります。Oさんが作業の途中にその木陰に腰を下ろして休んだりしているのをよく見かけます。梨の木は珍しいので話を聞くと、親の代までは梨の農家だったらしく、それは名残の一本のようです。梨狩りの梨の木しか見たことがない私はその木に興味津々。

以前、「秋に実が成ったらいくつかもらっていい?」と聞いてみたら、「誰も食べないから好きなだけ持っていって」と言ってくれました。手を入れていない植えっぱなしの梨の実がどんな味なのか食べてみたかったのです。

あれから数ヶ月後、実が色付いた頃に娘も連れて頂きに。近くで見ると木はさらに大きく見え、実はたわわに成っていました。摘果(※)していないので、小さな実が一箇所に4個ずつくらいかたまったように付いています。

※摘果…ある程度立派な実を成らせるために他のいくつかの実を間引きすること。

期待せずに食べてみたら、あら意外に甘くて美味しい♪

売っている梨ほどではないけれど私にとっては丁度良い甘さ。虫食いも所々あるけれど捨ててしまうのは勿体無い。娘も「このすっきりとした甘さが逆に好きかも」とたくさん頂いて帰りました。

葉の中にもたくさんの実が
小さなサイズがかわいい。こちらは赤梨の「幸水」

一本の木に品種が二つ

一本の木ですが、もう一つ別の品種を接木してあるので、一つの木から二品種採れるようになっています。茶色っぽくザラザラした皮の方が「幸水」らしく、これは赤梨と言われるものです。

もう片側半分、明るい黄色でまるで青りんごのようなツルツルとした皮の方は品種は聞きそびれましたが青梨と言われる種類。青梨は最近スーパーでは見かけなくなりましたが(東京だからでしょうか?)かつて九州に暮らしていた頃は青梨の「二十世紀」をよく食べていました。(この青梨の品種はわかりませんでしたが)

梨は原種からどのように改良されてきたのか知りたくなりました。

赤梨と青梨が混ざっているのがわかりますか

ささやかなものから生まれる幸せ

自然の恩恵を受け、ささやかながらも自分の育てたものや手作りしたものを暮らしに活かすことができたときに不思議と幸せな気持ちになります。もちろん、私の住む、大自然からだいぶ離れた地域においてでのことなので、どれも、まさに「ささやかなもの」なのですがそれでもいいのです。

先日、畑友さんが「いつか小豆(あずき)を育てて餡を作ってみたい」と楽しそうに話していました。

わかるわかる!畑が狭いので現実的には難しいのはお互い分かってはいるのですがどんなふうに小豆から芽が出てきて育っていくのか見てみたいんですよね。そして、少量でもいいから餡にして食べてみたい。自分で育てた小豆はどんな味がするのだろう。

冬に向けて・・

さて、昨日、冬に仕込んだ味噌を開けてみました。麹の甘い香りが広がり、今年も褐色の美味しそうな味噌が出来上がっていました。

今、畑で味噌用に大豆を作っています。上手くいけばこの冬は初の自分の育てた大豆で味噌作りができます。実は2年連続で失敗しているので成功するかはわかりませんが、またこちらでもお話しできればと思っています。

フラワー&グリーンスタイリスト
さとうゆみこさん

「green & knot」を主宰。フラワーショップやインテリアショップ、専門学校の講師を経て、現在はフラワーコーディネイトやグリーンアドバイザーのほか、植物にまつわるあらゆるジャンルで活躍している。自宅で行なっているフラワーレッスンも人気。

Instagram:@yumikosatooo yumikosatooo

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