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地方空き家のリノベーション。モノに合わせた暮らしのハコづくり。

私らしく奏でる。

穏やかな海と深い山が日常の中でそっと手を結び、県庁所在地としての便利な都市機能を包括する、三重県津市。この街に住み、中学校の教員として働く山名さんを訪ねました。

家づくりのきっかけは、少しずつ集めてきた一生ものの家具たちが空間に調和し、美しく響くような「家具に合うハコ(家)」が欲しいという願い。Instagramでの偶然の出会いから始まった、感性を形にするリノベーションのご紹介です。

40歳という節目。

山名さんは大学進学で実家を離れて以来、ずっと賃貸暮らし。ドイツの日本人学校で4年間勤務され、帰国後に友人から「実家が空いているよ」とすすめられ、戸建て住宅での賃貸も経験されました。

40歳という人生の節目が近づいたとき、ふと考え始めた将来の暮らし。
「60代後半で仕事を辞めた後も、ずっと”賃貸”でいいのだろうか?」
そんな現実的な不安と、もう一つ、山名さんの背中を強く押したのが「家具」への想いでした。

お気に入りが響く『ハコ(家)』

「少しずつ良い家具を買い揃えるようになると、次に住む場所にこの家具たちが合うのかを考えるようになって。安価な家具をその都度合わせるのではなく、自分のお気に入りが一番きれいに響く『ハコ(家)』が欲しくなったんです」

お家づくりの思い出。打ち合わせに使用した壁紙やタイルのサンプルをコラージュして1枚の額縁に。

「そもそも家をどうやって買うのか、お金はどうやって借りるのか…」最初は分からないことばかりだったという山名さんですが、Instagramで地元のリノベーション会社のセミナー開催の案内を知って、実際に足を運んだそうです。そこで疑問と丁寧に向き合う時間を作ったことで、リノベーションの解像度はぐっと上がったといいます。

家づくりとお金のこと、すべての不安を一つの場所で解消できたこと。その自然な出会いと対話が、大きな安心感をもたらしてくれました。

空き家物件のリノベーション

物件選びの当初はマンションも検討していましたが、希望に合う物件が少なく、これまでの暮らしで大切にしてきた持ちものをゆったりと収めるには一軒家が良いと判断。そこで視野に入れたのが、地方ならではの選択肢でもあった「空き家」でした。

ご自身でもいくつか物件をピックアップし、間取りや構造についていろいろと調べられていたそうです。

そんな中、担当デザイナーさんから「物件取得」+「リノベーション」の総予算も加味された物件提案があり、内見してみることに。そこはこれまで縁のなかった団地の一角でした。決め手となったのは、通勤の利便性よりも老後を見据えた安心感。直感的に暮らしのイメージが湧いて、結果的に物件はここしか見ていないといいます。

母からの助言。

「実家からの距離も近く『車に乗れなくなった時のために、バスが通っている場所が良い』という母からのアドバイスも大切にしました。これまでは職場に合わせて住む場所を決めてきましたが、今回は『自分がどこで、どう生きたいか』を基準に場所を選びました」

お気に入りの眺め

「玄関を入って、廊下越しに見えるキッチンが大好きです。帰宅したときに、あぁ良いな、きれいだな……って。奥へと続く広がりや、洗面室へ繋がるアールの壁、今はそのすべてが気に入っていますね」

『自分がどこで、どう生きたいか』

空き家物件をリノベーションするにあたって、その打ち合わせでは自身の暮らしの詳細、指標となるものをまとめた資料を準備したようです。そのプレゼンをもとに決まったという変更後の間取り図は、まさに山名さんに寄り添うものでした。

たとえば、「朝は30分以内で家を出たい」という山名さんの暮らしに合わせて、キッチンと洗面室は隣り合わせに配置されていたり。起きてすぐにお湯を沸かし、そのわずかな時間にも効率よく身支度ができるので、毎朝のルーティンが流れるようにスムーズになる設計です。

身支度も楽しい洗面所

「洗面室空間のテーマはモロッコです」と山名さん。

少し長めのカウンター洗面台に、ヴィンテージ品として入手した鏡が装着され、色鮮やかな色の壁がエキゾチックな雰囲気を演出。背面には衣類もしまえる大きな収納クローゼットがあり、朝の身支度も捗りそうです。

フレームキッチン

そんななか、お家のメインとなると考えていたのはキッチン空間でした。
いわゆる“システムキッチン”は全部調べたという山名さんですが、キッチンメーカーのホームページを見て、電子カタログを見て…。そこで、ウッドワンのフレームキッチンにも出会いました。

「一目見て、素敵だなと思いました。でも、素敵だということは、高価なんだろうな…と。自分からこれにしたいです!と伝える勇気はなかったです」という山名さん。

ところが、自分の好みを深く理解していたデザイナーさんから提案された内観パース(完成予想図)に描かれていたのは、まさにそのフレームキッチンだったようです。

「『え、いけるんですか?』って、本当に驚きました。予算の管理もすべてお任せしていたので、提案してもらったということは大丈夫なんだ、と。部屋の大部分の印象を占めるキッチンだからこそ、一番のお気に入りを置けることが本当に嬉しかったです」

デザイナーさんによると、早い段階からこの提案を心に決めていたようです。「山名さんは絶対にフレームキッチンがお好きだと思って、ヒアリングの時点から提案しようと考えていました。素材感がどストライクなのはもちろんですが、もともとたくさんの雑貨をお持ちで、それらを決して『隠したい』というタイプの方ではないと思ったんです」

実際に、山名さんの周りに溢れるお気に入りの品々。雑貨を集めるのが好きで、そのほとんどはかつて暮らしていたドイツで購入したものだそうです。現地で古いものやヴィンテージを見て歩く楽しさを知り、一つひとつ自分の感性に合うものを大切に集めてきたといいます。

ライフスタイルを考えて

そんな山名さんのライフスタイルにフィットするよう、キッチンのレイアウトには、シンク側とコンロ側が分かれた「Ⅱ型」が採用されました。調理スペースを前後に分け、コンロ側には以前から愛用しているお気に入りの家具を並べて配置。あつらえたかのようにぴったりと収まる、計算された定位置となっています。

オープンな収納

モノを完全に隠す収納だと、中に何があるか把握しきれなくなってしまうという山名さん。これまでは、引き出しを開けたときに「そういえば、こんなモノもあったな」と、持っていること自体を忘れてしまうことも多かったそうです。

使い勝手はもちろん、オープンな棚はお気に入りの食器や雑貨たちを美しく彩る“ステージ“としての役割も果たし「このつくりなら、何があるか一目で把握できる」と考えたことが、フレームキッチンを選ぶ決め手の一つとなったようです。

たとえば、コンロ側には調味料などを機能的に配置する一方で、シンク側には、ドイツ生活の思い出である「HARIBO」の空き箱を活用して、ざっくりと仕分ける。

リビング側の棚には、旅先で集めた小物たちが並び、使いやすさの中に自分らしさが光ります。

キッチン前カウンターとして。古道具屋さんで譲りうけたスツールを置いて。

多忙な平日に合わせた工夫も。

「朝はコーヒーを淹れるだけ、夜もパパっと済ませることが多い」というライフスタイルに合わせ、リビング側の棚板をあえて一枚外し、キッチン前カウンターとして活用されています。ダイニングテーブルを置かず、ここを食事や作業の場所にすることで、ミニマルで効率的な動線を生み出しました。

さらに、「住みながら棚板を追加するなど、日々の暮らしに合わせてカスタムを繰り返すのが楽しい」と、暮らしは今もアップデートされ続けています。

「最近、キッチン側で朝ご飯を食べてみたんですけど、リビングを見渡せるこの眺めも良いなって思いました」

自分の「好き」を深く理解してくれたデザイナーさんと共に作り上げた、理想の「暮らしのハコ」。40歳という節目に構えたこの場所は、これまで以上に、自分自身の感性が一番心地よく響く拠点となりました。

多忙な日々のなかでも、玄関を開ければ、いつでもあの景色が待っている。お気に入りのキッチンが作り出す「いいな」「ホッとするな」という日常の調べは、新しい生活へ踏み出す彼女の背中を、これからも優しく押し続けてくれるはずです。

(文:鈴木)


このスタイルで使用している商品

設計・施工:株式会社アルフレッシュ


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