郊外で叶える、自分サイズのマンションリノベ
自分らしいコンパクトな暮らし
都心から離れ郊外に住まいを移したamiさん。中古マンションを購入し、ずっとやってみたかったという憧れのおうちリノベーションをされました。
以前は都内の賃貸ワンルーム暮らし。コロナ禍はとくに家で過ごす時間が多かったからこそ、住まいの充実こそが毎日の心の豊かさに直結することを実感したそう。30代半ばをすぎ、ふと将来のライフプランを見直したとき「掛け捨ての家賃を払い続けるのはもったいない。家購入はなにも特別なことではなかったかも。もっと早くにやっていたら…」と、ふりかえります。
Before→After(2LDKから1SLDK+WICへ)
賃料も高騰する中心部から離れ、築30年60㎡の中古マンションへお引越し。ひとり住まいには十分なサイズです。
もともと2LDKだった部屋をフルスケルトンにして壁をとっぱらい、大きめの1SLDK+WICに間取り変更されました。
ウォークインクローゼット
今回は「せっかくなら」とあれこれ詰め込んでしまったという中古リノベーションのご紹介です。
リノベーションのルールは2つ
リノベーションするにあたり考えたのは「ミッドセンチュリーを意識したテイストを取り入れること」そして、「木目調といわれるプリント素材をできるだけ使わないこと」だったそう。
“ホンモノ”の木の取手
ミッドセンチュリーデザインとは、20世紀半ばにアメリカで生まれた、機能的でありながら美しいフォルムを持つ家具や建築様式のことです。どこか懐かしいレトロなデザインが好みで、装飾も最小限のシンプルさは、ながく使っても飽きがこないという印象があったとか。
「木の取っ手は、サラサラしていて気持ちいいです。見た目も、まあるくてかわいくないですか」と、amiさん。
マットな質感の白いドアに、丸みのある木の取手。触れるたびに心地よさ感じ、お手入れの時間さえも楽しみに変えてしまうアイテムなのだそう。
マンション用 遮音L45 突板フローリング 銘木キャラクターセレクション
フローリングは木の表情が豊かな、バラ科の広葉樹「ブラックチェリー」を選択。マンションなので遮音性能のついた床を使用するという制限があったものの、これはとくに見た目が好みだったそう。
「チェリー材は日に焼けやすいそうですが、淡いピンクから、経年でオレンジがかった茶色に変化するということを知って、どちらも好きな色なので楽しみです。これからお迎えしたいと思っているアンティークの家具や雑貨とも相性が良さそう」と、amiさん。
近年、見た目も強度も担保され、手軽さから“木目調”の建材も多く用いられますが、“ホンモノ”の木が持つ質感や経年変化の美しさとは異なります。直接肌に触れる場所だからこそ、素材そのものの良さを大切にしたいという想いが伝わってきますね。
楽しい収納計画 ニッチ収納
ちょっとした壁の厚みには「ニッチ収納」として追加で収納棚を設置。
「工事期間中は頻繁に現場に通って、無駄な空間やスペースがないかパトロールしていました。笑 本や雑貨が好きでいっぱいあるので、家中どこにいても楽しくなるように。収納計画は生活導線を考慮して使いやすさ半分、わくわく半分で考えました。置きたい家具の邪魔をしないためにも“ニッチ収納”はかなり有能な黒子ですね」
キッチン後ろに好きなものを飾る棚
最初にキッチン空間をどうするか考えていたときから、背面には雑貨を飾る木の棚をイメージしていたそう。
「ここには綺麗な木の棚をさらりと付けたかったので、金具は見えないように隠してほしいと頼みました」
キッチンと同じ樹種であるウォールナットの棚板がついています。
棚は「板の専門店」ITAYAで購入
ネットで購入して、大工さんに直接取付けをお願いしたものが他にもたくさん。
「リノベ中はほぼフィーリングで、雰囲気いいなと思ったサイトからいろいろ買いました。それがけっこう楽しかったです。自分の好きなものって、この年になるとそんなに変わらないな、って思いました。自分の好きなテイストを言語化するのに役立ったのはピンタレストで、“これも好きそうじゃない?”といった感じでどんどん提案をくれて…」と、当時を振り返ります。
木のキッチン su:ijiスイージーWN80 ウォールナット
住まいの中心となるキッチンには「スイージー」WN80をチョイス。ウォールナットは、クルミ科クルミ属の落葉広葉樹。木の質感と落ち着いた色合いが、イメージしていたミッドセンチュリーな空間にマッチしています。
「もともと木が好きで、いつも何気なく選んでいた木の色が、濃い目のものが多かったんです。ウォールナットが自分のイメージに近くてやっぱりいいなと思いました。古めかしい喫茶店、カフェも大好きなので、ここで毎日珈琲を淹れる自分を想像しましたね」と、amiさん。
長年愛用しているみるっこ(コーヒーミル)でコーヒータイム。ワークトップは人工大理石コーリアン®Sierra SS サンドストーン
物件購入の際に、不動産屋さんに紹介してもらったという施工業者さまは、普段は、年数が経ち古くなってきた住戸の原状回復が得意。インテリアコーディネーターさんはついていませんでしたが、SNSやAIなどのテクノロジーにもどんどん頼ろう、と思ったそう。
結果的に自分の要望がすべての発信起源となり、これに関わる家づくりのプロたちがどうにか叶えようと動いてくれたのだとか。
真鍮ゴールドの取っ手はtoolboxでサイズオーダー
形状はペニンシュラ型に。もともとキッチンは壁向きのI型で、リビング空間とも隔離して設置されていましたが、主に”ここで過ごす時間を大切にしたい”という想いから「配管の移設工事」をお願いしたそう。
「当初、配管の関係で、こっち向きにするなら床をステージのように上げないといけないかも、と言われて困りました。でも、それをなんとか避ける方法を一緒に考えてもらいました」とamiさん。
キッチンBefore
キッチン本体は、一般的には珍しい奥行750mm。間取り変更の際に融通のきかないことも多いマンションリノベーションに嬉しいサイズです。
「シンク前20cmくらいのスペースは、一輪挿しを飾ったり観葉植物を愛でるのにちょうどいいのですよ。毎朝自分の水分補給と同時に、水の入れ替えをしています」
キッチンに立つとリビング部屋全体を見渡すことができる
食洗機は国産のコンパクトサイズ(450㎜)を選択。
「ひとり暮らしなので、このサイズとスペックが自分サイズかなと。なにより毎日の“洗いもの”から解放されて、”だらだら時間”がいっぱい確保できて嬉しいです。大人数でパーティーのときでもお皿はかなりたくさん入るので、食事の際に小皿やカトラリーは気にせず好きなだけ使うようになりました」と、amiさん。
暮らしの変化と日々の喜び
朝はキッチンで食事したり、帰宅したら「とりあえずのティータイム」をするようになったりと、キッチンが単なる作業場ではなく、暮らしの中心、自分にとっての憩いの場へと変化したそう。
お気に入りのキッチンは、そこに立つ時間を楽しいものに変え、日々の家事にも前向きになれそうですね。
「あぁ、いいな」が毎日ある
賃貸と違って“購入”となると、将来的な「資産性」「管理修繕」…あれこれ考えることはあるものの、最終的に“今”の自分が毎日心地よいかどうかも大きな指標。少し古めのマンションでも、リノベーションすることで新しく自分好みの内装や間取りに変えることができることを知り、この選択をしたそう。
部屋に取り付けた棚、取っ手、水栓、トイレの丸みに至るまで「あぁかわいいな、いいな、が毎日ある」というamiさん。小さな「好き」の積み重ねが、住まいへの愛着を育み、暮らし全体の豊かさにつながるのですね。
(文:松岡)