光と緑が息づく、私だけのホワイト空間
白い空間
豊かな自然に囲まれた広島県。Saeさんの暮らすご自宅は、光と緑が美しく調和する、洗練された白の空間が印象的です。そこには、高校生の頃からの「白い框組(かまちぐみ)」キッチンへの憧れと、5年という歳月をかけて理想を追求した家づくりの物語が息づいています。
今回は、そんなSaeさんの想いが詰まった住まいのご紹介です。
白い框のキッチンへの憧れ
Saeさんは、ご主人と高校生になる娘さん、そしてチワワの男の子「ムート」(ドイツ語で勇気)とトイプードルの女の子「ニーナ」(スペイン語で小さな女の子)の、3人+2匹の大家族。
家づくりのきっかけ
もともと同じ県内の分譲マンションに10年程住んでいたそう。娘さんがピアノを本格的に学び始め、周囲への「音」が気になりはじめたことや、思い出とともに増えていく荷物の収納、そして一緒に暮らす2匹のわんこたちをお迎えしたことなど…だんだんと「一軒家を建てることができたらいいな…」と、考え始めたことが、家づくりのきっかけでした。
設計事務所との出会い
家づくりは、結果5年ほどかかったのだとか。当初、ご夫婦でハウスメーカーや工務店を巡りましたが、義両親から譲り受けたという37坪の土地の広さと、Saeさんたちの要望が合わず…。「すべての希望を叶えるには3階建てにする必要がある」と言われて、それが大きな課題だったと言います。
満足のいく家づくりにするには
マンションの近くに建ったモデルハウスに、休日に何気なく訪れた際、偶然にも設計事務所の代表の方と話す機会があったそう。そこで要望を伝えたところ、後日描いてもらった図面には、希望するものが全て盛り込まれていました。
「5年ほど調べるうちに、家の建てかた、自分がいいな、ほしいな、とおもうものが明確になっていたんです」と、Saeさん。時間をかけることで、漠然としたイメージが具体的な形へと昇華され、結果として「大失敗したようなことはない」という満足のいく家づくりへと繋がりました。
SaeさんInstagram @cky.homeより
キッチンへの憧れは、高校生の時、アメリカ留学中に友人の家を訪れた際に目にした「框の白い大きなキッチン」からはじまっていたそう。その時、「私も大人になって家を建てる時になったら、絶対にこういう框がついた木の温かみのあるキッチンにしたいな」と強く思ったといいます。
当時のアメリカでは、白い框のキッチンが多く見られたそうで、この時の感動が、その後の家づくりの方向性を決定づける原点となりました。
木のキッチン
また、挙式はイタリアでされるなど、ご夫婦共に海外を訪ねることが好き。「イタリアやフランスのキッチンも木で作られた可愛らしいキッチンが多く、古くても木の良さがあって、やっぱりあたたかみのあるものが好きなんだと思います」とSaeさん。
人生の旅路で出会ったこのような経験は、時を経て住まいを考えるとき、流行に流されない、本当に満足度の高いアイコン的なインテリアデザインとなるのですね。
白のインテリア
Saeさんは「インテリアは素人です」と謙遜しながらも、「白い空間にしたい」という希望があったそう。グリーンやお花が好きなので、それらが美しく生きる空間を考えたのだとか。他の色を使わないように意識しているため「もし植物や花がなければ、すっごいシンプルに見えるかも」といいます。
パナソニックキッチンとウッドワンカップボード(収納庫)
メインキッチンには、トリプルIHや大型でハイパワーの海外食洗機など、機能性を重視し、背面の食器棚収納にはスイージーのカップボードを選択されました。「ウッドワンの柔らかい木の感じがすごく印象に残っていて。取り寄せてもらったカタログをみて、本当にすごく素敵な框だな、と思っていたこともあって、カップボード(CB)だけはウッドワンにしたいとインテリアコーディネーターさんに伝えたんです」とSaeさん。
「取っ手の雰囲気、框の印象も、他メーカーでもぜんぜん違う感じではないので、きっと素敵になるんじゃないかな」とプロのコーディネーターさんからのアドバイスももらい、ウッドワンのカップボードを採用したそう。
機能とデザイン、それぞれの強みを追求することで、理想のキッチンを実現されています。
ホワイトとメープル集成材が織りなす調和
キャビネットの色はホワイト(ニュートラルカラーD1)、天板にはメープル集成材をチョイス。Saeさんは、ウォールナットのような濃い色は好みではなく、オークも経年変化で色が濃くなることを知っていたため、ある程度白っぽさを保つメープルを選んだといいます。
この「木の経年変化」に対する知識は、家具選びの際に知ったそう。
メープルの天板
見た目の好みだけでなく、経年と共にどのように変化するかという長期的な視点を持った素材選びは、住まいの美しさを長く保ち、愛着を深める要素となりますね。
収納計画と動線。ロフト収納より
以前暮らしていたマンションでは、娘さんのピアノの「音問題」や「収納が少ない」という課題があったので、今回の家づくりではロフト空間も設計し、ひな人形やクリスマスツリーなどの季節のものを収納するために活用されています 。
ロフトへのぼる階段
特に、ロフトへは「はしごだと大変なので、ちゃんとした階段をつけた」という工夫も。これは、単に収納スペースを確保するだけでなく、将来的な使いやすさや安全性を考慮した設計です。
小分け収納
キッチン収納も市販の仕切りを活用し、小分けがされていました。箸置きやお気に入りのカトラリーなどが美しく整理されています。花瓶や大皿、文房具などの収納場所も明確に分けられ、日々の暮らしがスムーズになるよう、細部にまで配慮が行き届いています。
特別なカトラリーコレクション Cutipol (クチポール)
Saeさんは、入学、卒業、受験など、“家族に良いこと”があった時「ありがとう」の気持ちを込めてクチポールのカトラリーを一本ずつ買うと決めているそう。
「これは私しか知らないことですけどね。基本的に家族はカトラリーなんて気にしてないかも(?)」と、自分だけの、ちょっとした楽しみも教えてくれました。
ダイニングテーブル
マンション暮らしからずっと使い続けているというダイニングテーブル。すべてを新調せずに、これまでの生活で培われた思い出や愛着のある品々を大切に引き継いで、新しい空間に溶け込ませることで、より温かみのある住まいとなっているように思います。
Saeさんおすすめの洋菓子レメ Remmeのレモンケーキ
「心の余裕」が育む、花のある暮らし
芍薬
お花のなかでも特にシャクヤクが好きで、この時期をいつも楽しみにしているというSaeさん。
「若い頃はその良さに気づけませんでしたが、心の余裕でしょうか。お花があると、ちょっと立ち止まれるんです」
整った住まいが、心の状態や日々の生活の質にも深く影響を与えるのかもしれません。
土地がもうちょっと広かったら…。自分の部屋があったら…。完全にすべてが思い通りではないものの、与えられた環境で、毎日をていねいに暮らす。そこに飾られたお花は、忙しい日常の中でふと立ち止まり、自分と向き合う時間を与えてくれる存在です。
お気に入りに囲まれ、“自分だけの”とっておきの住まいが、暮らしの幸福度をあげていくのですね。
(文:松岡)