黒の鉄と無垢の木と。キッチンから生まれる笑顔の連鎖
飯綱高原
長野県内で最も人口が多い長野市。約1400年の歴史を持ち、国内外から多くの参拝者が訪れるという善光寺のまちです。お寺を眼下に望み、長野駅から車で約30分、飯綱高原に広がる山の中腹に、そのご自宅はありました。
12月に入り、雪が多いという長野
キャンパーご夫婦、長野に移住
食品会社で長年働いていたというご主人と、栄養士として、現在ご自宅でお料理教室「山ねこKitchen」を営む奥様の浩子さん。お二人は、ご主人の転勤に伴い家族で日本各地を転々としたのち、お子さまたちの独立を機に、長野に移住されました。
「私たち、もともとキャンパーだったので。毎日キャンプがしたいな、くらいの気持ちでセカンドライフに住む場所を探していました。自然のなかにおうちがあったらいいなって。朝、鳥の声で起床できるって素敵じゃないですか。ログハウスを建てて、薪ストーブをつけて。長年思い描いていた暮らしでした」と、浩子さん。
玄関から
さっそくお邪魔します。玄関からリビングへ、まさに自然の木の温もりを感じるログハウスです。
「ログハウスってほんとにあったかいんですよ。木のおかげなのか、周りが氷点下の冬でも、朝もすごくあたたかく感じますね。窓はペアガラスにしてもらったし、薪ストーブも焚いてるからかな」と、ご主人。
ご縁のあった土地、長野
もともとご主人の実家がある兵庫県の山の手に建てるか迷われたそうですが、転勤で2回も住むこととなったご縁もあり、ここ長野の地で家を建築し、お二人で移住することを決めたそう。付近には、キャンプ場やスキー場が多く立ち並ぶ場所です。
暖炉
家づくりにおいて必須だったという暖炉は、オーブン付き。パンもお肉も焼けて、スモークもできる優れものなのだとか。
「コップを置けば、飲みかけのコーヒーだって温めることもできるんですよ」とご主人。
猫と暮らす。
自然に囲まれて、たくさんの猫と暮らすことも大きな夢だったというお二人。最初は2匹だった猫ちゃんも、今やなんと7匹に。この「山ねこKitchen」スタッフ(猫)たちはみんなもともと保護猫たちなのだそう。定刻になるとみんな集合して、いつも一緒にご飯を食べます。
みんなのお母さん
「バジル」「オレガノ」「ペッパー」「ローリエ」…みんなお料理に欠かせないスパイスの名前がついています。
「全員、鳴き声でわかりますよ、だってお母さんだもん」と、浩子さん。
山の中の猫のいる料理教室『山ねこKitchen』代表の西垣内浩子さん
このご自宅でお料理教室を主宰。生徒さんたちとキッチンを囲んで、いつもわいわいおしゃべりもしながら作業するそう。
「玄関の看板にも書いていた通り、今日のメニューはスープカレーですよ。スイーツもあるからね♡」と浩子さん。
(先ほどからずっと、スパイスの良い香り…)
厨房のようなキッチン
「定食屋さんやカフェなど、飲食業で働いていたときに厨房の天板はステンレスだったから。頑丈でちょっと乱暴に使えるからいいの。直接こうやって生地をこねる作業もしちゃいます。今日はここで、ナンもつくれますよ、っていうのをみせたくて!笑」と、実演メニューも考えてくださっていた浩子さん。
ここに訪れた人はみんな笑顔で帰ってほしいという「お母さん」の優しさが伝わってきます。
黒の鉄x無垢の木のFRAMEKITCHEN(フレームキッチン)
「生徒さんみんなでキッチンの周りを囲みたかったから、絶対アイランド型にしたくて。あちこちから作業の手が出てね。もうね、私の夢でしたね」
かつては、ガス会社のお料理教室で栄養士として働いていたという浩子さん。子育てにより一旦お休みすることとなったそうですが、いつかこんな風に、自宅で料理教室をしたいな、とずっと考えていたそう。
フレームキッチン使用7年。
「いつもなにかを決めるとき、だいたい即断即決なのですが、キッチンだけはいろんなメーカーさんをみましたし、けっこう迷って。でも、ショールームでこれをみた瞬間“あ、これだ!”って、一目ぼれでしたね。黒のアイアンと木が好みでした」
このログハウスの雰囲気にも合うキッチンとして、フレームキッチンを選択されました。
使い慣れたステンレスバイブレーションのワークトップ。猫ちゃんも遠くから見守ります。
収納力抜群、大容量のキッチン
「調理道具をたくさん仕舞えるのも魅力でした。鍋やフライパンなども多いし、ボウルももっと増やしたいところなんです。お味噌づくりなんかもよくしますから…」
無垢の木と黒の鉄フレーム。引き出しがない分デッドスペースは少なく、骨組み以外はほぼ収納のフレームキッチン。奥行きいっぱい、大容量の収納が叶います。
30年選手であるというお鍋。こちらは浩子さんの愛用品。
「大人数で使うので、食器もいっぱい揃えました。生徒さんもあちこちから手を伸ばしてお皿をとって作業ができるので、“このキッチンいいな、どこのですか?”ってよくきかれますね」
キャットウォーク?
「あと、このキッチンは足がかけられるので、猫がよじ登ってくることもあって、お皿は何枚も割りましたね。でもこの子たちのすることはなんでも許しちゃいます(笑)」と、寛大な浩子さん。
ご飯中。
気が付くと棚に猫ちゃんの毛やホコリが溜まったり、お掃除は大変だそうですが、飲食業を営む上で清潔さは保てるようにといつも心がけているそう。
おいしい…!
お料理教室は、原則1日1回、人数は4人までと決めているそうですが、生徒さんの中には足繁く通ってくださる方もいて、お知り合いからお知り合いに繋がり、家族の会合や、お誕生日会など、大人数になってしまうこともあるとか。
喜ぶ顔がみたい
「友達と数年ぶりに会うのに、まずはカフェで喋ってきたらいいのに、直接うちにくるから、レッスン中なのにその辺で話に花がさいちゃって。“はい、手動かしてください~”なんて言ったりすることもあります(笑)でもなんだか、人の喜ぶ顔っていいですよね。うちに集合して、誕生会なんてしてくれるなんて。私もがんばろう、ってなりますね」
キッチン脇のスパイス棚。庭の畑でとれたという紫蘇のドライなども並びます。
仕上げにひと煮立ち、スープカレー。
浩子さんは和洋中だいたいなんでもつくることができるそうですが、中でもパンやお蕎麦、麺などの粉ものは得意だそう。
生徒さんからリクエストをいただいたり、テレビドラマなどを見ているときに「おいしそう」と感じたらとりあえずレシピを調べて、調味料や調理方法を自分流にアレンジ試作・改良するそう。教室のメニューに取り入れることもよくあるのだとか。
手づくりナンも焼きあがったようです
手づくりナンと、熱々のスープカレー!
焼きたてのナンは、ふわっと小麦の良い香り。スパイスの効いたスープカレーと、組み合わせは最高です。
「スープカレーは北海道発祥のお料理なんですけど、外は寒いし、身体を温めてもらえたらうれしいな」と、浩子さん。
お天気の良い日はテラスに出て食べることも。
お料理教室は現在、月に約10回程度とほどよいペースで続けているそうですが、生徒さんの年齢は3才~70才までと年代は様々だそう。小さいお子さまは、たとえ上手にできなくても褒めてあげることで自信がつき、満足そうに帰っていく姿をみると嬉しくなるのだとか。
後日、親御さんから「普段はみせない大きな成長にびっくりです」とおことばをいただくことも。
抹茶のズコットケーキ
お料理を食べたあと「よし、つぎはケーキだな」と言って用意してくださった、抹茶のズコットケーキ。
「(ケーキ)いいのができたんだよ、お父さんみて~」
「いいね~」
「お父さんごめん、テーブルからコーヒーカップを全部撤収してきて」
「おっけ~」
ご夫婦お二人の会話がとても微笑ましく、いつもの様子が伺えます。
食品会社で働いていたというご主人も、昔は仕事柄よくキッチンに立っていたそうですが「最近はカミさんのごはんのほうがいいかな」とのこと。
「断面がネコみたい」と、ご主人。ケーキの中には生クリームと、栗羊羹がゴロゴロ。(おいしくいただきました)
浩子さんは、お料理教室をやる傍ら「保護猫」の存在をみんなに知ってもらいたいそう。
「こうして猫と暮らす楽しさを知ってもらって、猫を飼う人が増えたらいいな」
毎日の手料理。「テンツリ」には頻繁に使用するものを収納。
基本的にお料理が大好きだという浩子さん。ご夫婦での食事も、毎日きちんとつくるそう。お買い物は1週間まとめて、旬のお野菜を使ってレシピを考えることが多いといいます。
ウチが一番
昔は家族でよく行っていたというキャンプやスキーなどのアウトドアも、最近は回数が減ったとか。というのも、毎日キャンプをしているような家をつくったおかげで、旅行がしたいという想いは日に日に薄れて「ウチが一番」と実感している日々だそう。
キャンプ用のキッチンテーブルから生まれたキッチン
発売当初KUROMUKU(黒x無垢)として売り出されたこのフレームキッチン。ドラマの美術セットとしても数多く選ばれ、テレビで見かけたことがあるという方も多いかもしれません。
実はこのキッチン、屋外で使用する組み立て式のポータブルキッチン、キャンプ用キッチンテーブルから着想を得て、企画開発がはじまったものでした。(生みの親である、商品企画室・池岡は、キャンプ、自転車などアウトドアが大好き)
開発者の「好き」が商品に込められ、その連鎖によりまた生まれていく笑顔。この遠い長野「山ねこKitchen」でその好循環を垣間見たひとときでした。
(文:松岡)