物語を紡ぐブルックリンな家
煉瓦、漆喰、真鍮、アイアン…。
劣化しても、傷がついても、それは時を重ね、人が生きてきた証。自分たちの好きを存分に、ディテールにまで詰め込んで。
家中愛おしいもので溢れた、ブルックリンテイストのK様ご自宅にお邪魔しました。
物語のはじまり
埼玉県の北西部、秩父市。
近くに住むお友だちの新築お披露目会にふらっと遊びに行ったとき、その家の佇まいや雰囲気に一目ぼれしたというご夫婦。当時はまだ家を建てることなど考えもしなかったそうですが、その時出会った工務店さんに、自分たちも家づくりをお願いしたいと強く感じたそう。
おうち時間
「子どもがいるので、外出は準備も一苦労。家に来てもらえるとありがたいんです。ケーキとか買ってきて“うちで食べなよ”って言えるようになったのが嬉しいですね」と奥様。
以前暮らしていたアパートは手狭だったそうですが、新しい住まいができたおかげで、お友だちも呼びやすくなったそう。
GOOD SLOW LIFE
まだ生まれて半年も経たない娘さんに、3才の息子さん、そしてご夫婦、4人家族のK様。この家のすぐ隣にはご主人の実家があり、親戚同士で家の行き来も多いのだとか。
「実家にはしょっちゅう…いや、毎日ですかね。子どものお風呂とか、いつも手伝いにきてもらってます」と奥様。
秩父で人気のスイーツ
秩父エリアでとれる季節のフルーツを使用したケーキ。家族、親戚みんなでいつもよく食べているという、おすすめのタルトを人数分用意してくださっていました。テーブルに並べられると、まさにカフェに訪れたかのようです。
「リビングは照明がオレンジっぽいので、いつもすぐに眠くなっちゃうくらい。すごく落ち着きますね」と、奥様。
(ケーキはおいしくいただきました。ありがとうございます!)
照明計画
部屋のあちこちに配置された照明は、ヴィンテージの1点ものだったり、その一つ一つに物語があるそう。煉瓦の壁を照らす工夫に、スポットライトに、インテリアに…。白い壁は、すべてていねいに手塗りされた漆喰素材で。
エイジング加工
スイッチ一つとっても、エイジング加工が施されるなど、決まったデザインからではなく、自分たちだけのオリジナルをじっくりと時間をかけて選定。
「家づくりをしている時間がすごく楽しかったんです。隣に実家があるので、建てている間もその様子がずっとわかったし、写真を撮らせてもらったりして。部屋の細かいアイテムを決めながら、ゆっくりと出来上がるのを楽しみに待ちました」と、ご夫婦。
2人の時間
子どもたちが寝たあと、リビングでお茶を飲んでくつろぐ大人だけの時間も。
キッチンはスイージー(現場オリジナル塗装)
「神奈川県の葉山に好みの家具屋さんがあるんですけど、そこのオーダーキッチンが、イメージとドンピシャで。実は、それをマネしてヴィンテージ風に作ってもらいました。イメージ通りです、めちゃくちゃ」と、ご主人。
オープンハウスでみた友達の家のスイージー。見て触って良いなと感じたので、ステンレスバイブレーションの天板x無垢というスペックはそのままに、扉の色はオリジナル現場塗装をお願いしたそう。
たっぷり収納
「私はとにかく収納重視で。お鍋とかボウルとか洗剤のストックとか、とにかくいっぱい仕舞いたくて。見せたくないものもあるので、いっぱい入る引き出しがよかったですね。見た目も好みだし、ソフトクローズで開閉もしっかりしているのがうれしいです」と奥様。
ホンモノ
「ホンモノの無垢の木のものってなかなか少ないですよね。部屋のアイテムをかなり厳選したので、キッチンだけつるつるのものだと合わないし。ここも経年変化を楽しめる、ホンモノにちゃんとこだわりたかったんです」と、ご主人。
こだわりの一杯。
以前はコンビニのコーヒーを愛飲していたというご主人も、新しい家のキッチンではていねいに豆を挽くなど、実際に使う機会も増えたとか。
「秩父でもコーヒー豆を焙煎しているお店が増えてきているので、これからそのあたりを探索して行こうかな」
珈琲グッズやカップの並ぶ棚
休日に買い物へおでかけしても、どうせならと豆だけを買って持ち帰り、ゆっくりと家で休憩することが多くなったとか。
「本当に、毎日カフェにいられるような感じです」と奥様。
カウンターキッチン
子どもたちの様子がいつも見渡せることから、カウンタータイプのキッチンを選択。
「2人でご飯をつくるのも楽しいですよ。最近本を買ったので、ダイエットメニューをつくったりしますね。いつか、“ご飯とりにきて~”とか子どもたちに言ったり、楽しそうですよね」と奥様。
2年半待ち。
家づくりをお願いしたのは、秩父市を中心に相談を受けている、S.FACTORYさん。SNSでも積極的に発信を行い、人気さゆえに現在は4~5年待ちとも言われるそう。友人のオープンハウスで衝撃を受け、すぐに売買契約をしたものの、K様ご夫婦も2年半ほど順番を待ったのだとか。
オリジナルのテイスト
家づくりがちょうどコロナ禍だったこともあり、時間はたっぷりあったというご夫婦。
「当時、新婚旅行もできなかったので、その分ここでがっつり楽しみましたね」
インターネットで画像検索をして、気に入ったものを担当の建築デザイナーである“辰彦さん”と共有。そこで「ブルックリン」という大テーマが決まったそう。
「私は渋い感じが好きだったんです。黒と木と…。壁一面の煉瓦は、実はちょっと想定外でした。キッチン側の一部に取り入れるつもりだったんですけど、こっちに入れたほうがかっこいいよねって。いろんな提案によって、自分たちの夢をかなえてもらったという感じです」
フローリングの斜め張り
「海外はフローリングのナナメ張りが多いとか流行っているとか。この家なら合うんじゃない?って提案をいただいて。この張りかたはけっこうめんどくさいらしいんですけど、時間かかってもいいんですよって言ってもらって…」と、奥様。
テイストのテーマ分類がありながら、その中でも自分たちだけのオリジナリティを出していくというのが家づくりの楽しみ。床材を“ナナメ”に貼るのも、海外暮らしを連想させ、心なしか部屋も広くみえます。
家中に楽しい仕掛け
「これ、みてほしいんです」と、奥様が最も得意げに教えてくださったのが、トイレやリビングの壁に掛けられたフォトフレーム。よくみるとその絵は開き扉になっていて、その壁の後ろ側のニッチ部分に収納やミラーがさりげなく配置されていました。ついつい話したくなるのも納得です。
リビング入口ドアの真鍮取っ手
「妥協したところはほんとに一個もないですね。全部家族のためのものだから」とご主人。
物語のある家
リフォームやリノベーションと比べて、間取りや大きさ、取り入れたいパーツや素材…自由度高く選べてしまうのが新築一戸建て住宅のいいところ。家具一つ一つにも、選んだ理由と物語があるそう。
唯一無二の
選択肢はいろいろあると悩んでしまいますが、吟味して選んだ想い出はその後もずっと残っていくもの。“あんなことがあった、こんなことがあった“という家づくりは、はじまりからそのすべてが、唯一無二の家族資産を形成していくものなのかもしれませんね。
(文:松岡)