北欧暮らしで考えた、ちょうどいい二拠点生活の魅力
二拠点生活
八ヶ岳高原の麓に広がる、長野県諏訪郡原村。
気候もよく、軽井沢や那須などの別荘地と同様、東京都心からアクセスのよい場所です。
平日は東京、週末は原村で過ごすという、ハイブリッドで先進的な、二拠点生活をおくるMさんご家族を訪ねました。
3月初旬のあたたかい日。まだ辺り一帯には雪が残ります。
デュアルライフ
40代半ばのご夫婦に、小学生のお子さん2人。そして、愛犬のエイトくん。
家族みんな、平日は東京暮らし。お子さんたちも、普段は都心の小学校に通っています。最近は中学受験のため塾に通いはじめましたが、進学も変わらず東京でする予定だそう。週末に塾の終わりを待って、高速で2時間半くらいかけて、この家にやってきます。
「大変だけどもう慣れましたね」と、ご夫婦は声を揃えます。
東京と長野の二拠点暮らしをはじめて約1年。子どもたちも、こちらで過ごす週末の息抜きをバランスよく楽しんでいるようです。
異文化に触れた3年半
二拠点生活をはじめたのは、ご主人の仕事の都合で3年半、北欧スウェーデンで暮らしたことが大きく影響しているそう。家族みんなで異文化に触れて、その良さを体感できたので、違和感なくこの暮らしをスタートできたのかもしれません。
「この辺りの景色、気候、空気感など、似ている部分があるかも」とご主人。
天気が良くあたたかい日には、デッキに出てパソコンを広げたり、本を読んだりすることも。
別荘ではない、サマーハウス
「スウェーデンの人たちは、40代半ばくらいになるとこういう森の中に小さな家を所有するんですよ」と奥様。
日本だと別荘=豪邸、お金持ちのような印象がありますが、スウェーデンではもう少し気軽なもの。森の自然のなかで、ただただゆっくり時を過ごす、小屋やコテージのようなイメージです。その小さな家を先祖代々受け継いでいたり、古いところを買って自分で手を加えたり。
「あちらの人はIKEAで買った家具やキッチンも自分たちで組み立てたり、今風にアレンジしたり、DIYが普通なんですよね」
大人にも与えられる夏休み
スウェーデンでは、大人にも一か月程度与えられるという夏休み期間を過ごすことから、その小さな家(小屋)、コテージは“サマーハウス”と呼ばれています。
南向き、陽が沈むまでずっと明るくあたたかい
「日中は電気をつけなくていいくらい明るいし、空が本当にきれいなんですよね…」とご主人。
必要最小限
広めのLDKに階段付きのロフト、それに寝室を備えるという、1LDK+ロフトの家。
「ほんとはもう少し小さい家の予定だったけど、ゆくゆくはこちらに住むかもしれないので…」と、小屋とまではいかないけれど、必要最小限でコンパクトな間取りです。
スウェーデンにいるとき、ことばがわからず見なくなった習慣の延長で、テレビのない暮らしは今も継続中なのだとか。
キッチンはLDKから寝室へつづく廊下の両サイドに
奥の寝室まで視界が抜け、コンパクトながらも開放的な間取りです。
「リビングでテーブルに座っていても全体が見渡せるので、寝室の家具やベッドサイドのライトも全部、お気に入りで揃えました」と奥様。
キッチン su:iji NZ30 ニュートラルカラー D6色
寝室へ続く廊下も兼ねた、キッチン空間。
「山荘だしほんとはもっと小さくてもいいかな、とも考えましたが、将来完全に移住することも視野にいれて、最低限この長さはほしいね、となって。大きすぎず小さすぎず、ちょうどいい、この大きさになりました」
森の木々に囲まれた家の中に、しっとりと馴染んでいます。
ニュートラルカラー 色:D6(写真右下)
「わたしはなんとなくニュートラルカラーが気になってて。D6色は“木”という感じでもなく、真っ黒ではない紺色のような感じ。設計士さんに、この色やってみませんかって言ったんです。最後に床材のオークと色を揃えるかは迷いましたが、変えたほうが目立っていいかなって」
奥様はもともとインテリアや建築に興味があったことに加えて、これまでに東京の本宅リノベーション、ご実家の建て替えと、2度の家づくりを経験済み。インテリアや内装材に関しては相当に詳しくなり、今回3度目のキッチン選びには、ずっと気になっていたというスイージーをお迎えされました。
ステンレスの天板に、四角いシンク
いろいろみていて、やっぱりいいなとおもったというのがステンレスバイブレーションの天板。
「スイージーは、木の扉であるのはもちろん、天板、調理機器、水栓など、選べるものが多いですね。それなのに、お値段的にはコスパがいいように思います。ニュートラルカラーは、色によっては可愛く、逆にうちのようにモダンになったり…。使いやすいし、デザインもとても気に入っています」
食器を並べて
キッチン、収納庫には、お気に入りの食器がたくさん。スウェーデンに住んでいたころ安く仕入れたというヴィンテージのカップも並びます。
偶然にも、周辺ではMさんご家族と同じような価値観の人と出会うことが多いそう。今では行きつけとなっている焙煎屋さんも、もともとは東京との二拠点で、現在は完全移住してお店をされているのだとか。そこで買った珈琲豆を挽いて、ていねいにドリップ。
どこを切り取っても、美しい森の景色
キッチン前面には、顔が隠れるくらいのちょうどいい大きさの窓が。
「この景色を見たいから」と、ここはあえてお願いした部分だそう。優しい光がキッチンに差し込み、炊事中の気分も上がります。
家づくりをお願いした設計士さんと、奥様は今でもお食事をしたり交流があるそう。Instagramの検索から出会い、写真をみて、イメージとぴったり合ったこと、サステナブルな家づくりに共感できたことがお任せする決め手となりました。
スウェーデンの季節のおやつ「セムラ」Semla
「かなり独特な味なんですけど、くせになるんです…」と、娘さんと一緒につくって、ご用意してくださったスイーツ“セムラ”。これは春の訪れを告げる、スウェーデンの伝統菓子なのだそう。パン生地に、カルダモンスパイスが練りこまれ、マンデルマッサというアーモンドペーストに、ふんわり泡立てた生クリームがサンドされたパン。本場では、なんとこれの倍ほどの大きさなのだとか。(口のなかに広がるスパイスの香りが、くせになるのがわかります!)
コーヒータイム「フィーカ」
甘いものを食べながらコーヒーを飲むというスウェーデンの習慣「フィーカ」。本場の人はこの時間をすごく大事にしているそう。1日に2回、10時と15時ごろにコーヒーを飲んでゆっくりと休憩をとり、また仕事に戻ります。定番のお菓子といえば、シナモンロールに、ジンジャークッキー。
スローライフ
スウェーデンでは、こうしたスローライフながらも労働生産性が高いと言われていますが、実際に現地で働いてみて、ご主人もそれを体感することがよくあったとか。
「みんな朝早くから仕事をはじめて、早く帰る。週末はなにもしないで、平日に備えます。食事も日本みたいに手の込んだものをつくらなくて、朝も昼もサクッと済ませる。金曜日はタコスの日とか、曜日によって料理を決めていたりね。服も2、3パターンで、いつみても同じ服だったり。効率化されてるんですかね」
「向こうに行っておもったのは“あんまり人は自分のことみてないんだな”ってこと。清潔でさえあれば、華美じゃなくていいのかも」
巣箱
スウェーデンで暮らしていたころ、上司のサマーハウスにお邪魔したときみつけたという赤い鳥の巣箱。木にぶら下がっていたのが可愛くて探したら、ホームセンターに売っていることがわかって同じものを購入したそう。たまにここに飛んでくる鳥は、まさに色とりどりの美しい羽をもっていました。
二拠点生活1年
もともと奥様のお父様の実家があり、家族で訪れる機会もあった諏訪地方。土地勘もあり、気候や暮らしについては想像しやすく、愛着のあった場所です。
それでも、本当にここでいいのか、この物件に決めていいのかどうかは悩むところ。約半年くらいかけて、近隣の温泉施設に宿泊して疑似体験するなど、家族みんなでじっくり考えたそう。
“なにもしない”過ごしかた
今ではご主人の趣味であるランニングの拠点でもあり、子どもたちにとっては公園、スキー、ハイキングなど自然のアクティビティが永遠に楽しめるところとなっています。
「天気が悪くても、週末はとりあえずこっちに来ますね。プラモデル作ったり本読んだりパン焼いたり…。東京でやっていることと変わらないことをふつうにやります。今週末行くの?行かないの?って。子どもたちはいつも楽しみにしています」
いつか…
「リタイアしてからじゃ遅いから、時間と体力のあるうちに、ある程度軌道にのせたほうがいいんじゃないかなって。ある程度仕事が落ち着いて子育てが終わったら、こちらに拠点をうつしたいですね」と、ご主人。
「正直なところ、二拠点分の維持費に、交通費もかかるんですけどね。わたしもこれからしっかり働きます」と、奥様。心強いお言葉です。
山梨・長野両県に跨る山々「八ヶ岳」
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(文:松岡)