明治より刻まれる家族の歴史
現代の職人の技を集結し、次世代へ継承する
富岡製糸場が開業したり、ウィーン万博が開催されたり…そんな明治初期に建てられた、築150年の古⺠家。随所に使われている材料や細工は、いずれも現代ではもう入手や制作が困難な質の高いものでした。
4世代にわたって住み続けてこられたことで、建物の保存状態は良いものの、断熱性が低く浴室が離れにあるなど、現代では暮らしやすいとは言えない部分も。
大切に受け継がれてきた建物の輪郭は残しつつ、現代的な技術と職人の技を使い、機能的で快適に暮らせるように改築されました。
玄関を入るとすぐに目に入る見事な梁組が、場所の記憶をとどめている。気密性や断熱性を上げるため、上部は一部閉じているものの、見上げた時の印象は変わらないようにと気を配った。
玄関ホールと続きの広間を区切る引き戸(板戸)も、創建当時の古建具を再利用。下桟に新しい木材を足し、高さを調整している。
この引き戸は全て左手の戸袋に収納できるので、玄関から広間までを一続きの大空間として使うことができる。
建築家の吉田さん(右)と、施主のKさん。Kさんは、段差や冬の寒さが解消され、本当に暮らしやすくなったと何度も嬉しそうにおっしゃっていた。
基本的な生活動線は全てバリアフリーになっている。暮らしやすさは大きく改善したが、大黒柱や丸太の梁、建具などKさんが幼いころに走り回って遊んだ家の面影はそのまま残っているそう。
左手に見えるのは、堂々たる欅の大黒柱。一般的には、元口は太くても末口に行くほど細くなるのが普通だが、この大黒柱は通常人目に付かない小屋裏内の末口まで同じ太さで続いている。今では手に入らないほどの、径の大きな原木を使っていることがうかがえる。
(※元口:木の根元側、末口:木の上側)
松の木の太い梁が表しになった個室に使用されているのは、ウッドワンの引き戸とクローゼットドア。
ニュージーパイン®(松の一種)の無垢材で作られているため、古い建築と合わせても意匠的に違和感が無い。
一度バラバラにし、表面を削ってから再度はめこんだ縁側の床。材料の質が高く、150年経ってもゆがみが出ていなかったため、まだまだ現役で使うことができる。
元々奥の間に設置されていた書院は、今は玄関で来客を出迎えている。細かい細工が素晴らしく、今ではもう再現できないそう。修復するにも高い技術が必要で、日本でも指折りの職人さんにお願いした。
(文:松浦)
お客さまと木のある暮らしとのつながりデータ
[ウッドワンの商品を選んだ理由]
・古い建築と合わせても、意匠的に違和感がなく空間になじむ。
・完成品を使用することで、工期短縮及び建築コストを抑えることができた。