Ki-mama Ki-Mama

Magazine

2026.03.05

木の道具・玩具 #04

タイムレスなものづくりの未来。ARCHITECTMADEの受け継ぎごと

北欧デンマークのコペンハーゲンを拠点に、20世紀を代表する建築家たちの遺したデザインを現代に蘇らせる「アーキテクトメイド(ARCHITECTMADE)」。

建築家たちの希少な名作を、現代に忠実に復刻するデザインプロダクトは「一生モノのインテリア」と言われています。

ただ形を真似るのではなく、チークやオーク、ウォールナットなどの厳選された木材を使い、職人が一つひとつ手作業で仕上げます。

流行に左右されない、シンプルで愛らしい造形で、首や手足が動かせるものが多く、置く場所に合わせて表情を変えられるのも魅力です。

左からMorten T. Jensen(Founder and Owner),Miho Motoki(Head of Sales),Mizuki Murata(Export Sales)

今回、そんな「アーキテクトメイド」の創業者、CEOのMorten T.Jensen(モーテン)さん、およびMihoさん、Mizukiさんに、お会いすることができました。

ブランドの哲学に共感し、プロダクトに対する愛と敬意を持つ少数精鋭のメンバーです。これまでに大々的な広告を行ったことはなく、その深い理念を共有できる工房探しにはじまり、実際に販売する代理店さんへの意思疎通まで、今のところできる範囲で、“手作業”で行っているようです。

ウッドワンとの出会いは2015年、商品企画室メンバーの海外渡航時でした。プロダクト背景に魅力を感じたこと、当社の製品思想とも重なる部分が多くあったことから、建材メーカーでありながら、当社でもこの愛らしいプロダクトをお取り扱いすることができないか、そんなことを考えはじめたきっかけの出来事だったようにも思います。

2016年su:ijiキッチンカタログ表紙
2016年su:ijiキッチンカタログ表紙

実は、アーキテクトメイドのプロダクトは当社の木のキッチン「su:iji(スイージー)」など製品カタログ撮影で、その様子や軌跡をそっと静かに見守ってくれている仲間でもあるのです。

デンマークの首都コペンハーゲン

今日は、デンマークから来られたのですか?

Morten T.Jensen(訳:Mihoさん。以下、モーテンさん):そうです、コペンハーゲンから来ました。

Mihoさん:私はもともと東京出身なので。今回は営業と帰省も兼ねて、一時帰国しています。

お会いできてうれしいです。さっそくですが、改めて、アーキテクトメイドのことを教えてください。

Mihoさん:私たちは、2004年にブランドを立ち上げています。

代表のモーテンは、もともと、デンマークのロゼンダール(Rosendahl)社で営業として働いていて、そのあと独立しました。その時は、まだ木工小物とかが流行る前で。今ではインテリアショップでもよくみかける、カイ・ボイスン(ロゼンダールが親会社)のモンキーもまだそこまで…。規模も小さかったと記憶しています。

ですが、クリスチャン・ヴェデル(Kristian Vedel)の「バード(BIRD)」を見て、「これを作ってみたい」と言って、そこから少しずつ扱う商品が増えて、今に至ります。

建築家ご本人やご家族の方にも「忠実に作っている」ということで評価いただいて、少しずつ口コミで広がっていきましたね。

口コミで広がっていったんですね。

Mihoさん:これまで一度も広告を出したことがないんです。その代わり、こうやって訪問して対話する。今はもっと、この想いを伝えるのが上手にならないといけないなと、改めて強く思っています。

大事なことですね。

Mizukiさん:わたしは現在、日本駐在スタッフとして働いていますが、コペンハーゲンに住んでいたことがあります。

社会人経験を経て、ワーキングホリデーのビザで渡航しました。北欧独自の教育機関『フォルケホイスコーレ』※という全寮制の学校に通い、そこでアートやデザイン、グラフィック、建築などを学んでいました。

※フォルケホイスコーレ:19世紀のデンマークで生まれた、試験や成績・単位がない「大人のための全寮制の学び舎」です。学校ごとに特色があり、スポーツや国際関係、環境などさまざまな分野があります。

修了後、コペンハーゲンに移り住んだのですが、たまたま日中に犬の散歩をしていたら、この会社のオフィスを見つけて。

たまたま散歩していて見つけたのですか⁈

Mizukiさん:そうなんです(笑)。それでドアを叩いて、そこからのご縁で今に至ります。もともとアーキテクトメイドの製品(フィン・ユールのトレー)を愛用していたこともあり、このブランドのフィロソフィー(哲学)には共感していたので。

Turning Tray

当初は、日本のお客様にも各国にも、直接デンマークから製品の発送をしていました。そのあと、日本人スタッフがいなかった時もありました。販売が軌道にのらないまま、うまく連絡ができていなかった過去もあるかもしれません。現在は私が日本にいますし、もっとスムーズにできないか、日々考えています。

永くつかう

アーキテクトメイドのプロダクトは、現在も変わらずずっと、一つ一つ手作業でつくっているのですね。

Mihoさん:ブランドを立ち上げた頃は、まだ「サステナブル」っていう言葉が出る前でした。大量消費・大量生産から一歩離れたオルタナティブな商品を提案し、代々受け継がれる、タイムレスだと信じるものを作りたかったんです。

「永くつかうこと」これが一番サステナブルだ、というのが、当初からの強い想いです。

タイムレス(timeless)

英語の「time(時間)」+「-less(〜がない)」から由来し、「時代を超越した」「不朽の」「永遠の」を意味する形容詞。

時代や流行に左右されず、いつまでも変わらない価値、魅力、美しさを持ち続けるもの(デザイン、名作、愛など)を指して使われます。

1950〜60年代に作られたデザインが多いので、つくるには、かなりのスキルが必要です。なので、家族経営のような小規模な工房で、本当にパッションがあるところとじゃないとやり取りができないのです。

大量には作らないですし、世界中の結構小規模な工房探しを今も続けています。

モーテンさん:品質管理が我々の最大の課題です。ここで今何かを合意しても、2年後には職人が変わって品質が変わってしまうこともある。だから常に見ていなければならない。

品質管理は大人数でされているのですか。

Mihoさん:そんなことはありません。デンマークで一つ一つ手作業で確認しています。
人数は小規模ですし、こんな感じの動画やInstagramなどの発信も、全部自分たちで。

そんなにたくさん制作チームがあるわけじゃないので、小売店のお客様には「これを使ってくださいね」って素材を送ったりもしますよ。

製品に込めた遊び心

製品の手足が動かせるものが多い理由も教えてください。これは、Mizukiさんのものですか?

Mizukiさん::私の日本での相棒ですね。営業で周るときにも、この子たちはいつもかばんに入っていて、一緒に旅をしながらお客様に会います。

「OSCAR(オスカー)」は、デザイナーのHans Bølling(ハンス・ブリング)が、犬を愛する気持ちを込めてデザインしたものですが、非常に遊び心のある方で。彼自身が遊びたいからっていう理由ですね。

モーテンさん:円柱状の木から4つのパーツが取れるんです。これは1954年にデザインされたものです。彼はあらゆることを考えていました。非常にサステナブルで、木材の無駄が少ないようにどうカットすればいいかまで計算されていました。

遊び心と、計算と。繊細さを持ち合わせる大人のインテリアのようで、心がくすぐられますね。オスカー(OSCAR)はやっぱりかわいいです。

モーテンさん:体がこんな風に曲がって、足が正確なバランスでないと、ちゃんと立たないんです。シンプルだけど、細部にわたって考え抜かれています。

時間がかかりますが、集中して、ゆっくり余裕をもてば、誰でも立たせることができますよ。

おおー!立った!

Mizukiさん:わたしの相棒なので。(笑)

一生モノデザインのたのしみかた

「一生モノのインテリア」として、“経年変化“はどのように捉えていますか?

モーテンさん:自然なものでできているので、素材はずっと生きています。プラスチックは一切使いません。経年変化というよりは、自然物なので、例えば御影石は外に置いておくと冷たくなりますし、そういう、生きた手触りを楽しんでいただきたい。

まさに、木は自然のものなので、それぞれに個体差もありますよね。

モーテンさん:私は個人的には「節(ふし)」がない、クリーンな木が好きです。でも品質チェックの時に節があっても、「それが美しい」「自然の証」として好むお客様もいます。大事なのは、その素材が持つ物語をどう伝えるかです。

Mihoさん:私たちとしては、一番ベストな状態のものを選ぼうとするんですけど、完全に「節なし」というのは、間違ったメッセージを与えてしまいそう、と考えていて。節があってもそこまで顕著じゃないものとか、それを使用する場所を考えます。

製品のデザインが非常にシンプルなので、あまりに節や割れが目立ちすぎるとデザインの邪魔をしてしまうという意味で、気にすることはありますね。

私たちも、節のない木を育てるために、「枝打ち」といって、苗木からある程度大きくなったら、余分な枝を切り落とす作業をしています。

モーテンさん:それは非常にクールですね。

私たちの会社は1990年にニュージーランドで植林を始めました。

ひと昔前の日本の建物は「質」を重視していたのに、高度成長期には住宅が足りず、早く安く作るようになって、それこそ大量消費されていました。でも今はまた、住宅が満たされつつあって、また「質」の流れに戻ってきているように感じています。

いつか絶対にサステナブルな時代が来ると見込んでいたんだとおもっています。

Mihoさん:社会全体が変わってきていますよね。

流行に流されない、新商品をつくるタイミング

新商品を作ることはあるのですか。

モーテンさん:ほとんど作りません。我々はファッションデザインの会社ではないからです。20年前の商品が今でも通用する。何年もかけて「本当にこれを作りたいか」を考えます。代々受け継がれるものにしたいから。

サステナブルであるための一番の方法は、実は、何も買わないことです。でも何かを買わなければならないなら、少数の良い製品を買うこと。そして、それを永くつかうこと。

シドニーのオペラハウスをデザインしたヨーン・ウツソン(Jørn Utzon)のように、見飽きることのないデザインでね。

Mihoさん:クリスチャン・ヴェデルの奥様に「なんでバードを作ったの?」って聞いたら、「我慢できなかったから(内側から溢れ出る情熱)」と言ったんです。

消費者が何を求めているかではなく、その時心から作りたいとおもったものを形にした。だから今でも支持される。魂がこもっているからなんだとおもいます。

モーテンさん:我々は「何が世界にとって正しいか」を分かっているつもりです。全員が共感して買ってくれるわけではないけれど、自分たちが信じていることをこれからもやり抜くだけです。

いいですね。

ARCHITECTMADEの皆さまと、商品企画室 池岡(左)

木の経年変化を「劣化」や「汚れ」と捉えるのではなく、共に時を重ねた「味わい」として愛でる。魂がこもったものを、お手入れしながら代々受け継いでいく。これからも、そんな文化を大切にしたいものです。

木は唯一の再生可能な資源。30年という長い歳月をかけて森を育む私たちの歩みは、アーキテクトメイドがひとつひとつの商品に数年をかけて向き合う姿勢と重なり、共感できるところが非常に多くありました。

<取材協力>
ARCHITECTMADE