こんにちは。
インテリアスタイリストの さかのまどか です。
季節は春から初夏へと移り変わり、窓を開けるのが気持ちの良い時期になりました。
新緑がキラキラと美しく、見ていて心が爽やかになっていきます。
初夏になると私が意識するのは「風」です。
窓から入る風の心地よさや、揺れるカーテンの影、ふと感じる草木の香り。気温が高くなる前の短いこの季節には、ほかの季節にはない軽やかさがあります。
この時期になると、家の中も少しずつ模様替えをします。
といっても、大掛かりなことではありません。クッションカバーやテーブルクロスを軽やかな素材へ変えたり、冬の間に活躍した厚手の布をしまったり。ほんの少し手を加えるだけで、空間の空気は驚くほど変わります。
模様替えについては、以前の連載もご参照ください『季節のインテリアレッスン』
私がこの時期のしつらえで大切にしているのは、「足す」よりも「ひく」ことです。
飾るものを増やすのではなく、余白をつくる。棚の上を少し整理したり、色数を抑えたりすることで、光や風がより感じられるようになります。
まず変化が現れるのはテーブルの上かもしれません。冬の間は陶器や木のものが中心になりますが、初夏になると自然とガラスの器や爽やかな色のものが増えていきます。同じ場所でも、置くものが変わるだけで空間の温度まで変わったように感じられるのが不思議です。
特に初夏は光が美しい季節です。
朝の光はやわらかく、昼には透明感を増し、夕方には長い影を落とします。同じ部屋であっても、季節によって見え方は少しずつ変わります。その変化を楽しむことも、暮らしの楽しみのひとつです。
光を楽しむ道具
初夏になると自然と手に取る機会が増えるのが、ガラスのアイテムです。
お気に入りは、ガラス作家・おおやぶみよさんのキャンドルホルダーと壁掛け花器。
どちらも透明なガラスでありながら、それぞれ異なる表情を持っています。
朝の光を受けると静かに輝き、夕方にはやわらかな陰影をつくる。光の角度や天気によって見え方が変わるため、眺めていて飽きることがありません。
数年前に迎えたものですが、季節によって見え方が変わるため、毎年新鮮な気持ちで手に取っています。
そして壁掛け花器は、一輪の草花を飾るだけで空間に季節感を運んでくれます。
豪華な花束でなくても十分です。道端で見つけた枝ものや庭の草花でも、ガラス越しに見ると不思議と美しく感じられます。
ガラスはどこか涼やかな印象がありますが、私にとっては「光を映すための道具」でもあります。
器そのものの美しさだけではなく、そこに光が差し込むことで完成する。その変化を楽しめるところに惹かれています。
季節を映す草花
アトリエのある海街のエリアでは、この時期になると街の景色も少しずつ変わっていきます。
海へ向かう風もどこか湿り気を帯びてきて、夏の訪れを感じさせます。
紫陽花が咲き始め、庭先の草木は勢いよく葉を広げる。(鎌倉には紫陽花の名所がいっぱいあります!)
撮影の下見や打合せの合間に歩いていると、思わず足を止めたくなる景色に出会うことがあります。
一輪の草花や小さな枝があるだけで、部屋の空気は少し変わります。
初夏は、みずみずしい緑が美しい季節。
ガラスの花器に活けると、光と影が重なり合い、季節そのものを室内へ迎え入れたような気持ちになります。
暮らしの中に自然の気配を取り込むことは、この土地に暮らしているからこそ大切にしたい習慣のひとつです。
香りを楽しむ時間
梅雨の時期になると、もうひとつ楽しみにしているものがあります。
それは香りです。
雨の日が続くと、つい気分も重たくなりがちですが、そんな時こそ香りの力を借りています。
お気に入りのキャンドルに火を灯したり、お香を焚いたり。
湿度の高い季節は、香りがゆっくりと空間に広がるような気がします。
火を灯すと、小さな炎がゆらゆらと揺れ、その光を眺めているだけで自然と気持ちが落ち着いていきます。
お香も同じです。
香りを楽しむことはもちろんですが、煙がゆっくり立ち上る様子を眺める時間も好きです。
忙しく過ぎていく日々のなかで、数分だけ手を止める。その小さな時間が、暮らしのリズムを整えてくれるように感じています。
初夏から梅雨にかけては、光が少なくなる日もありますが、その分、香りや音に意識が向く季節でもあります。
雨音を聞きながら過ごす時間や、静かに香りを楽しむ時間も、この季節ならではの豊かさなのかもしれません。
季節を迎えるということ
初夏のしつらえは、特別なことではありません。
布を替えること。
花を飾ること。
香りを楽しむこと。
そんな小さな変化の積み重ねが、季節を感じるきっかけになります。
季節が巡るたびに、選ぶものも、心地よいと感じるものも少しずつ変わっていきます。
それでも、自分の暮らしにしっくりとなじむものを丁寧に迎え、日々を整えていくことは変わりません。
窓から入る風や、ガラスに映る光、ふと漂う香り。
私の暮らす海街では、新緑が美しい季節を迎えています。
とくに鎌倉の寺社や庭園では、木々の緑がいっそう鮮やかになり、季節の移ろいを感じることができます。歴史ある建築と瑞々しい新緑が重なる風景は、この土地ならではの魅力です。
何気ない日常の中にある小さな変化に目を向けながら、今年も初夏の訪れを楽しみたいと思います。
追記|風と布、お茶の時間
先日、大阪のdieciさんで開催された、Funatabi atelier 大木もと子さんの個展でお茶を淹れる機会をいただきました。
会場には、風に揺れる美しい布と、やわらかな光が満ちていました。
もと子さんの布は、空間を飾るというよりも、光や風を受け止め、その場の空気そのものを変えてしまうような存在です。
個展のテーマである「color field」に重なる余韻を思い描きながら、お茶を選び、一杯ずつ淹れていきます。
やわらかく感覚がひらいていくようなこと。
誰かと同じ時間を共有できること。
お茶を通して空間や時間を分かち合えることの豊かさを、改めて感じた一日でした。
風が布を揺らし、光が色を映し、お茶の香りが静かに広がる。そんな時間もまた、私にとっての「初夏のしつらえ」のひとつです。
インテリアスタイリスト
雑誌・webなどのメディア・広告撮影時のインテリアスタイリング、ホテル・オフィス・商業施設などのアートワークやディスプレイのキュレーション、住宅などのインテリアコーディネート提案をしており
ハンドクラフトや植物を取り入れたインテリアの提案を得意としている。
抹茶と中国茶を勉強中。
最近逗子に移住し、東京との二拠点生活を楽しんでいます。
HP:http://coryo.co/
Instagram:@coryo.co