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Lifestyle

2025.08.08

愛用品と暮らし #02

夏の風が通り抜ける、わたしの部屋と海街のお店

こんにちは。
インテリアスタイリストのさかのまどかです。

職業柄、たくさんの家具や作品を蒐集していて、家の倉庫にはストックが山のようにあります。
実は夫も同じくインテリアスタイリストで、二人合わせると家具屋さんが開けるくらいの在庫量。椅子だけでも50脚以上はあるでしょうか。

日用品というよりは、ただの鉄だったり、眺めて楽しむだけのものも多いです。

この連載では、そんな私たちの暮らしの中で大切にしている愛用品をご紹介していきます。
「愛用品と暮らし」第2回は、暮らしの中で心地よさを添えてくれるアートと家具をご紹介します。

Fabric art Funatabi atelier

和室のアートとして

布のアートは、染色家である大木もと子さんが手がける『Funatabi atelier』の作品です。

彼女の制作は、多様な技法を組み合わせて自然現象や物質の質感を思わせる深みと、光や水の透明感を感じさせる独特の世界観を作り出しています。

布に色を積層していく工程は、偶発性と計画性のあいだで繰り返され、時間をかけて丁寧に手を加えることで、奥行きのある表現が生まれます。
揺れ動く布の質感や透明感は、風や光、水といった自然の要素を感じさせ、自然の中にいるような感覚を与えてくれます。

彼女の植物をモチーフにしたシリーズでは、花びらの儚さや生命力を象徴的に描き出し、繊細ながらも力強い自然の姿を映し出しています。
こうした作品は、布という素材の持つ物理的な透明感と色彩の重なりが織りなす視覚的な奥行きを体現し、空間に穏やかな余白と深みをもたらしてくれます。(Funatabi atelier HPより引用しながら記載させて頂きました)

初めて拝見したのは青空の下での大判ストールの展示。色彩がひらひらと風にはためき、いろんなインスピレーションが湧き上がりました。
桜のような優しいピンクや海を想わせるブルーなど、どれも自然の彩りを感じさせてくれます。

我が家では、ファブリックアートとして壁に飾ったり、身に纏ったりと自由に楽しんでいます。
朝の斜光が差し込むと、織り目の隙間から淡い影が壁に落ち、まるで呼吸しているかのようにゆらめく。
夜は間接照明に照らされ、色が深く沈みながらも、ほんのり発光したような暖かみを帯びる。
そのコントラストは、季節や時間帯によって変化し、私の日常に“動くアート”をもたらしてくれます。

意外にも和室との相性が良く、色の重なりが和質の自然な質感と調和し、季節の移ろいを感じられる空間になります。

時間の移ろい、光の入り方で 布の透け方や色の見え方が柔らかに美しく変化していくのを眺めています。

Eamesのワイヤーベーステーブル

もうひとつの愛用品は、イームズの《Wire Base Table》と《アームシェルチェア(キャッツクレイドル)》です。

アームシェルチェアとWire Base Table
和室にも合います

このテーブルは、私が最初に自分で買った家具。

限られた予算のなか、本当に好きなものを選んで暮らしに取り入れたいと思っていた頃に出会いました。コンパクトながら存在感があり、ひとり暮らしの部屋でも、今の住まいでもずっと変わらず愛用しています。

椅子のほうは、夫が古いホテルの解体現場で譲り受けたもの。

テーブルと同じくアメリカの夫妻デザイナー、チャールズ&レイ・イームズによってデザインされ、20世紀の家具デザインに革命をもたらした名作です。

(キャッツクレイドル=『あやとり』という意味。ちなみに直訳すると『猫のゆりかご』だそうです。)

チャールズ&レイ・イームズ夫妻は、成型合板やプラスチックなどの新素材を用いて、軽くて丈夫、しかも曲線的で美しいフォルムを実現しました。また、大量生産が可能な設計ながらも、機能性と美しさを両立させ、人間工学に基づいた快適な座り心地を追求しています。これにより、家具はただの道具ではなく、「美しくて使いやすい工業製品」として普及し、モダンデザインの概念を根本から変えたのです。

シンプルで洗練されたデザインは、どんな空間にも馴染みやすく、今も世界中で愛され続けています。私たちの椅子も、その精神を感じられる特別な存在です。
無骨さと美しさが同居するホワイトのアームシェルと独特な低重心のキャッツクレイドル脚は、もともと業務用だったためか、どこか無骨さもあって、
空間に柔らかな軽やかさを添えてくれます。

結婚してふたりの暮らしが始まったとき、別々に大切にしていたイームズの家具が自然に並んだことが、なんだか不思議な瞬間でした。そんなイームズの家具が、私たちの日常に溶け込みながら、時代を超えても変わらない魅力を放ってくれているのが嬉しいです。

古い家具が部屋に静かな質感を出してくれます。

Cafe「and Saturday coffee & cakes」との出会い

「and Saturday coffee & cakes」さんは、逗子の住宅街の一角に佇むカフェ。

美味しいコーヒーや焼き菓子がいただけるだけでなく、店内にはオーナーの審美眼で選ばれた器や雑貨が並んでいます。

インテリアにもこだわりがあり、逗子海岸の桜貝が入ったカウンターやオーナーのピアノ、vintageのテーブル、作家さんの照明、 静かに流れるレコードからの音楽と、やわらかく差し込む自然光が調和し、日常を忘れて過ごせるような優しい美しい空気に包まれた場所。

and Saturday coffee & cakes

イベントや展示も定期的に行われていて、訪れるたびに小さな発見があります。 ただのカフェにとどまらず、訪れるたびに新しい出会いやインスピレーションがある、そんな特別なお店です。

azu aoyagiさんの器

そんな「and Saturday coffee & cakes」で出会ったのが、陶芸家・azu aoyagiさんの器でした。

食べ終わった後に現れるhello saturdayというメッセージ

コロンとした佇まいに、とろりとした釉薬の流れが有機的な柔らかさをだしていて、手に取った瞬間、愛おしくなるような可愛さに、ぐっと惹き込まれてしまいました。アンドサタデーさんでは様々なピンク色の表現を楽しむことが出来て、空間との美しい調和がとても印象的。

azu aoyagiさんは、逗子を拠点に活動する陶芸家で、幼少期から20代までをさまざまな国で過ごした経験を、陶芸というかたちで表現されています。
自ら掘った逗子の岩石を釉薬に用られたりされているそうで、土地と文化を織り交ぜた独自のアプローチがとても魅力的だと感じました。

ピンクと一口にいえども色々!並ぶ器たちが可愛い

我が家ではazuさんのフリーコップをよく使っています。たとえば、シンプルなお料理でも、飲み物でも、azuさんの器に盛るだけでいつもより特別な時間になる気がして、そんな小さな幸せが日々の暮らしを豊かにしてくれています。

海街での暮らしとインテリア

海の近くでの暮らしも、すっかり夏モードに入りました。 最近は新たな海の家が建ち並び、朝から人の流れが増え、街全体が明るく賑やかな空気に包まれています。

この土地は、日々の光の変化や風の流れを感じながら暮らすことができる特別な場所です。 インテリアを考える上でも、そんな自然のリズムをどう室内に取り込むかを意識しています。
風が抜けやすい家具配置や、夏の強い光を柔らかく受け止めるファブリック選びなど、四季を感じながら行うインテリアや暮らしの表現は、今の自分にとってとても大切なテーマです。

暮らしの中で育ててきたこうした“もの”たちが、それぞれの時間を刻みながら私たちの空間をつくり、心を豊かにしてくれています。
これからも愛着のあるアイテムと共に、自分らしい暮らしを紡いでいきたいと思っています。

休日は海の家でランチをしたり
夕焼けの時間の海散歩が楽しめる季節となりました

撮影:
Satoshi Shirahama
Shinya Takeda

さかのまどか
インテリアスタイリスト

雑誌・webなどのメディア・広告撮影時のインテリアスタイリング、ホテル・オフィス・商業施設などのアートワークやディスプレイのキュレーション、住宅などのインテリアコーディネート提案をしており
ハンドクラフトや植物を取り入れたインテリアの提案を得意としている。
抹茶と中国茶を勉強中。

最近逗子に移住し、東京との二拠点生活を楽しんでいます。

HP:http://coryo.co/
Instagram:@coryo.co https://www.instagram.com/coryo.co/


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