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Lifestyle

2025.06.06

花から食卓まで、四季の植物と綴る日々 #08

風のように過ぎる春から初夏。軽やかに季節を愉しむ方法

こんにちは、フラワー&グリーンスタイリストのさとうゆみこです。

春の収穫

アスパラガスが顔を出し始めるとようやく本格的な春を感じます。

アスパラガスは宿根草(しゅっこんそう)で、一度植え付けると8~10年ほど毎春に収穫できる、畑では数少ない植えっぱなしの野菜です。

次から次へと伸びてくるアスパラガス。

植え付けて4年目。育てているのはわずか3株だけですが、今年は一株当たり50本ものアスパラガスを収穫することができました。草がワサワサ茂った私の畑ですがアスパラだけは特別。やわらかいアスパラがスッと出てきやすいように丁寧に草取りをして、昨年からは土の上に酵素風呂のお店で頂いた発酵おが粉(*)でしっかりマルチング(*)をしてみました。冬からしっかり手をかけた甲斐があったのでしょうか。

*発酵おが粉とは

おがくずに米ぬかや水分、乳酸菌など加えて発酵させたもの。この発酵熱を利用して体を温める酵素風呂では、使用後のおが粉が廃棄されるため、畑の堆肥やマルチングにリサイクルすることができる。

*マルチングとは

ガーデニングや農業において、土の表面を覆うことを意味する。素材はウッドチップ、ビニールシート、腐葉土、堆肥、もみ殻、草など。主に、雑草の抑制や土の保温、保湿、植物への泥はね防止、有機物の供給、土の物理的保護、装飾を目的とする。

4月半ば、大好きなタケノコを箱いっぱいに頂きました。市場から仕入れたテーブルいっぱいの切り花たち、畑からの野菜と部屋の中は季節の生鮮でいっぱいに。大きな鍋でタケノコを茹でながら、その傍ら花の水揚げをしたりと、忙しい中でもこんな植物まみれの作業には幸せを感じます。

楽しい豆期間

そして、春といえば楽しみなのがソラマメやエンドウ類。昨年10月に種をまき、冬を乗り越え、一斉に花を咲かせやがてサヤに変わっていく。

この春の萌え動く姿、なんてまぶしいのでしょう。

エンドウは、絹さや、スナップ、グリーンピースの3種類を毎年植えています。楽しい豆期間の始まり!といっても収穫期間は意外にあっという間なんですけどね。

グリーンピースは沢山採れたら軽くゆでて冷凍します

一つの作物が採れる時期、テーブルの上は同じ野菜が続きます。毎日タケノコの日々、アスパラの日々、エンドウの日々…。実はこれ結構好きで、その素材と向きあえる楽しい時間に思えるのです。どうやって食べてる?と畑友さんに聞いてみたり、その季節に採れるもの同士を掛け合わせて思いがけないレシピが生まれることもしばしばです。

止まらない美味しさ…グリーンピースのフムス風
「今あるもの」が食卓に並ぶ
実山椒はタイミングが合わず、あきらめる年もあります

5月の半ば、近所の直売で旬の実山椒をみつけました。やわらかい実山椒は出回る時期が短いので良いタイミングがあれば即買いです。ああ、出会ってよかった。またまたうれしい悲鳴。

摘花のおかげか今年は大きくて甘いイチゴが採れました。来年は期待できそうな予感。

豆板醬作り

今年は初めて豆板醬を作ってみました。

私は麻婆豆腐が大好きで、頻繁に作るので豆板醬は頻繁に使う調味料のひとつです。ソラマメって、たくさん買ってもサヤから取り出すと意外と少量すぎませんか?(笑)

豆板醤は買ったほうがいいかなと思っていたのですが、畑でソラマメができるようになったのですから、今年はやっと挑戦してみることにしました。実際作ってみると、蒸したソラマメ、米麴、塩、唐辛子を混ぜるだけという拍子抜けするほど簡単な作業!さて半年後どんなお味になっているでしょうね。

作りながらおもったのは、「これは味噌なんだから、味噌が枝豆でなく大豆を使うように、もっと成熟したソラマメで作ったほうが美味しくできるのでは…?」。早速、もうひと瓶は畑で採り残った少し黄色くなった豆を使ってみました。うーん、食べ比べが楽しみです。

ソラマメ30本で小さな1瓶でした

ハーブティー再熱

実は今年2月末に体調を崩してしまい、咳が頻繁に出るようになりました。

病院でも気長に治すしかないといわれていた中、心配してくださった周りの方から乾燥ハーブやハーブティーを頂く機会がありまして、飲んでみると咳が少し落ち着くしなんだか身体も穏やかになっていくような感覚がありました。就寝前に飲むとスーッと眠りに入れるような気が。

それからなんとなく、鎮咳、喉粘膜をケアするハーブを調べ始めたら、私の庭や畑に効能があるハーブが結構あるではありませんか。効能といっても薬と違って緩やかだとは思いますがもともと体が強いほうではないので暮らしに取り入れてみたくなりました。

薬草として種から育てたカレンデュラやマロウ

早速、採取してザルに広げて乾燥。ブレンドしたハーブティー作りは久しぶりです。少しずつ日常に取り入れていきたいなと思っています。

手放す心地よさ

育てて、収穫、料理する。加工する。保存する。

──── こんな話をすると、野菜作りやガーデニングなど植物との暮らしはなんだか忙しそうで、かえって疲れてしまうのではないかと思われるかもしれません。それに加えて現代は沢山の情報に溢れている時代です。なんだかすべてが飽和状態ぎみで、逆に一体何が必要なものなのか、大切にしたいものなのかが分からない状況になりそうな気もしますよね。

最近、年を重ねるにつれてよかったなと思うことの一つに、少しずつ何かを手放せるようになってきたという実感があります。50代前半の私にはその中には手放すというより「諦めたもの」も含まれているのかもしれませんが、それでも私はそれら手放すことに案外と心地よさを感じているのは事実のようです。手放した分、増えてきた余白が日々のゆとりに変わってきて自分にとって必要なものが見えてくるような感覚です。

私の場合、例えば、詰めすぎた仕事、成長した子どもたちへの干渉、毎年の何かしらやっている行事、気づかぬうちに増えていた習い事やサブスク、美容的老化防止への執着(笑)など…。

少々手放しても意外になんともないし、少ないほうが今を気持ちよく生きることができるような気がするこの頃。もちろん好きなことはとことんやってみたくなります。

あ、もちろん、植物を手放すという選択肢も十分ありだと思います。植物を管理していくにはある程度体力も時間も必要です。自分にとって何が大切なのかは人それぞれですから。

「無い」を愉しむ

キャンプの楽しさは「無いことを愉しむ」ことにあると思っています。

火をおこしたり、魚を釣ったりと、限られた食材や設備、道具でどうやって食事をするのか過ごしていくのかと工夫することはとんでもなく楽しいし、電子ツールから離れて、星を眺めたり、じっくり会話したり、自然に思いを馳せたりすることこそが醍醐味ですよね。足りないときこそ想像力はあふれ出てくるもの。想像力は何事も豊かにしてくれます。

手放したりそぎ落としたりすることは決してネガティブなことではないなと確信できるようになりました。

軽やかさを失ったおかしな循環

私は自然農をお手本に家庭菜園をやっていますが、私の住む場所では広さも足りないし、支柱にする竹やマルチングする稲わらや草など自然由来の資材も十分に調達できないため、本当の自然農とはほど遠いのかもしれません。

もちろん、遠くからそれらを運んできたり、ネット注文すればなんでも手に入れることはできますが、その輸送にかかるエネルギーや無駄なお金を使ってしまっては、かえってそれは継続的な循環ではない気もします。もっと全体的に大らかに考えるならば、自然や循環に配慮しながらも自分の居る環境で工夫しながらやっていくことが私にとっての自然農なのかもしれないとも思うのです。

手法ばかりが先立ってしまって目的を見失っては本末転倒。無理しない、ストイックになりすぎないようにしたいものです。

畑やガーデニングの初心者の方には、難しいようなら薬剤や化学肥料を使ってみて徐々に変えていくのも継続していく一つの方法だとお話ししています。せっかく始めてもこだわりすぎてすぐに挫折していく方がとても多いのです。

小枝を刺して草花の倒伏予防。切り花で使い終えた枝物はいろいろ役に立つ

ワクワクするから自然農

私は年間50種類以上の品目の野菜を育てるので野菜はほとんど買わないのですが、スーパーのお野菜(慣行農法)も美味しく頂きます。

私が自然に寄り添った栽培をやっているのは農薬や化学肥料を敵視しているのではなく、単純に楽しいからです。幼いころから花や生き物が好きでしたが、やっぱり畑でも草や虫と戯れるのが好きなのです。もちろん、もし営農していたらそんな悠長なことは言っていられないし、自然農は選ばないかな…。(笑)

家族が食べる分だけの家庭菜園なら自然農は本当におすすめです。自然農は畑にすでにある生物の力を借りて、最低限の道具と資材で行うもの。ある意味、「軽やかな暮らし」のひとつだとも言えるのかもしれません。自然の営みに半分ゆだねながらゆっくり作業する時間は何ものにも代えがたいものだと思います。

草のある畑はそれだけで美しく、見ているだけでほっとする

さらに植物の楽しさを伝えたい

先日、「土と暮らす」と題して、植物と心地よく暮らすことについての座学を開催しました。
草花や木々、少しだけ野菜を作ってみたり、普段の暮らしに無理なく植物を取り入れることについて、皆さんの質問を交えながらのお話し会です。

私の生徒さんはほとんどの方が都心住まいで、たくさんの植物と暮らすことは難しい面もあるでしょうが、私は、都心だからこそ植物や自然を関わりながら暮らしていくことを考える面白さがあると思うのです。ありがたいことに最近は遠方からお越しの方が増えたり、「私も野菜を育てたくなって市民農園を借りました」「ベランダのプランターで野菜を育て始めました」などといううれしいお声もありました。興味を持ってくださったたくさんの方と共に有意義な時間になったと思います。

私は長い間、花の仕事に携わり、レッスンやワークショップをやってきましたが、最近は切り花だけでなく、土に触れながら暮らしていくことの楽しさを伝えていきたいという思いも強くなってきました。

今後は少しずつですが、土やそこに根ざす植物、都心のコンパクトな暮らしの中でも自然と調和する暮らしをテーマにした内容を発信していきたいです。

お土産の草花たちを囲みながらのレッスン
庭のフェンネルもお土産に。「食」は植物の話の中でも欠かせない

初夏の収穫、そして夏へ向けて

先日ニンニクや玉ねぎを収穫しました。もうすぐ、前回お話ししたジャガイモの収穫期も近づいています。土中作物は掘ってみるまで分からないのでいつもドキドキします。

さあ、いよいよ夏が始まりますね。春野菜から夏野菜へバトンが渡されます。

引き抜いたばかりのニンニク。これから干していきます。
フラワー&グリーンスタイリスト
さとうゆみこさん

「green & knot」を主宰。フラワーショップやインテリアショップ、専門学校の講師を経て、現在はフラワーコーディネイトやグリーンアドバイザーのほか、植物にまつわるあらゆるジャンルで活躍している。自宅で行なっているフラワーレッスンも人気。

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