〝いい顔してる植物〟をコンセプトに、独自の美しさを提案する植物屋、叢(くさむら)を主宰する小田さん。今回の連載は「アメリカ大陸の植物旅」。小田さんの行動力の先に見えた景色とは…?後編をお届けします。
前編は → こちらから
世界最大の木を観に行く
前の日の長距離運転の疲れも残りながら、朝は6時起き。
ホテルの味気ない朝食をいただきました。

昨日のブリッスルコーンパインの生息地と、本日の目的地である「シャーマン将軍の木」は直線距離だと100kmも満たない距離なのに、車で移動となると大きなシエラネバダ山脈を迂回することになるので、600km以上も走らないといけません。
早朝にはホテルを後にしてひたすら荒野を走ります。
みちくさ
今日もまた景色を眺めながらついつい車を停めては道草。
すんごい長いツノの牛を発見。

道中にポツリポツリと生えているジョシュアツリーにも見慣れてきましたが、やはり形の立派な個体が見えると、また車を停めて散策。
ジョシュアツリー
ジョシュアツリーとしては珍しい群生株を発見しました。通常は幹が1本すっと上まで伸びていて、樹上で枝が広がることがほとんどですが、この個体は地面から何本も幹が上がるタイプでした。(一般の人にとってはそれがどうした、って話)

その近くには、ジョシュアツリーの赤ちゃんがいました。
これまで色々な地域でジョシュアツリーを見てきましたが、樹齢50年以上の大きな木しか見たことがなく、若い木には出会ったことがありませんでした。
近年は、気候変動によって新芽はほとんど枯れてしまうみたいです。

秋の冷たい風と青い空がとても気持ちよかったです。


葉っぱの色も灰色がかっていて、乾燥地の雰囲気を醸し出しています。
日本では、造園のお仕事をいただく際、乾燥地系の植栽を希望されることが多く、このような風景を写真に収めておくことで、同じ植物は植えることができないにしても、葉色や草姿を近くすることで雰囲気を同じようにすることができます。現地でのこうした時間はとてもいい勉強になります。

標高が高くなるにつれ、岩場が多くなり、たくさんのアガベストリアータが崖にへばりついています。
道中には岩のトンネルがあったり。
いよいよジャイアントセコイアの森へ
ブリッスルコーンパインの時と同じように、岩肌と乾燥地系低木が続くエリアを超えて標高が高くなってくると、また高木のコロニーが現れてきました。
ですが、全部黒焦げ。


つい数ヶ月前の2025年1月にも大規模な山火事がありましたが、カリフォルニアでは山火事が多く、この地域でも2021年に大規模な火災があったそうです。落雷が原因で発生した火事は乾燥地ということもあって被害が拡大し、1万本近くの大木が燃えたそうです。
火事とジャイアントセコイアの関係性
火事とジャイアントセコイアの関係性は、実は対立するものではなく、共存するものということを知りました。ジャイアントセコイアの木が熱せられると、そこで初めて松ぼっくりから種子が落とされて繁殖するのです。
つまり、火事が起こらないと増えていかないということ。今生きている大樹は数千年の間に何百回と火事を乗り越えてきた経緯があります。しかし、近年の温暖化で、火事のスケールが大きくなりすぎて、いかに火事に強いジャイアントセコイアといえど、強すぎる炎に耐え切ることができず、燃えて枯れてしまうようです。

画像ではわかりにくいですが、巨木を前にすると自分が小人になったような感覚になります。それほど普段見かける木との大きさの違いが圧倒的なんです。




造形的にもアートのようで、植物の力と長い長い時間が生み出した形は圧倒されます。
密集樹木
こちらは「PARKER GROUP」と呼ばれる密集樹木。
8本の巨木が隙間なく生えています。

ジャイアントセコイアは、ブリッスルコーンパインのような生長が極めて遅く、その分長生き出来る樹木とは違い、生長が早い上に長く生きるという珍しい特徴を持った木だそうです。
シャーマン将軍の木
「シャーマン将軍の木」は樹齢2200歳、高さ83m、質量1487㎥、重さ1385tで、世界で最も重くボリュームのあるセコイアです。樹齢と高さでは他の木が上回っています。
そしてようやく最大の木「シャーマン将軍の木」に会うことができました。
