愛着を創造するキッチン
暮らしと食が織りなすもの
「食」「暮らし」に深く根ざし、本質的な生活を追求する蒲原ひかりさん@hikari_seikatsukenkyujin。
住まい、特にキッチンは、単なる調理空間ではなく、自身のもつ哲学を体現し、創造していくための場所となりました。
「これからこの家で、座談会やリアル講義などができたらいいな」と言われるように、人と繋がり、その良さを分かち合いたいという想いがあるようです。
創作しながら生活を愉しむ
もともと会社員として飲食店を運営し、現在はライフスタイルセミナーや、リノベーション事業、自分の得意分野において発信活動もされているひかりさん。
調理器具や掃除道具などに関しては実務で頻繁に利用した経験もあるため、人一倍鋭い目利きを持ちます。
調理器具たち。
料理人として実務をする傍ら、キュレーターとして活動する際は、ひかりさん自身が実際に何度も使って本当に良いと思ったものを、嘘偽りなく伝えるのがモットー。
道具の生産者さんから求められれば、工場へ出向き、自分でその良さや想いを確かめることも。
自宅には、居住スペースとは別に、専用の撮影ブースと、菓子製造業許可を取得し、本格的にお菓子作りをすることも可能な作業場も設けられました。
家づくりのはじまりと、フレームキッチンとの出会い
そんな、ひかりさんの家づくりのはじまりは、ずっと探していたエリアで土地が見つかったこと、その土地からほど近いご実家の家業を引き継ぐことが決まったことなど、様々なタイミングが重なったそう。
ご自身も、料理人でありながら、暮らしにまつわるアドバイザーでもあるため、改めて腰を据えて発信に専念できる拠点として「家」を持つことは夢だったといいます。
グリーンのタイルを背に、キッチンにはカトラリー、スパイスなどが並ぶ
「一番最初に、このグリーンのタイルを取り入れたいな、と思ったんです」と、ひかりさん。
工務店に併設されたショールーム「体験館」で少しずつ夢をカタチに変えていきました。
キッチン空間づくり
当初、キッチンは使いやすさと耐久性を兼ね備えたオールステンレス製のものを検討していたそうですが、グリーンのタイルに続き、素材そのものの効能を活かす漆喰壁も採用すると決めた流れで、それならば、木材の温かみも積極的に取り入れていこう、と考えるようになったとか。
漆喰壁と、木の相性
漆喰(しっくい)とは、消石灰(水酸化カルシウム)を主原料とし、すさなどのつなぎ、接着材料として海藻のりなどが使用されます。防火性や調湿性、消臭効果など、素材がもつ力を自然に発揮することから、日本の伝統的な建築材料として昔から知られています。
木との相性は良く、漆喰の白と木の温かみが調和し、落ち着いた空間を演出し快適性を高めてくれます。
黒の鉄x無垢の木 FRAME KITCHEN
家づくりプランをコーディネーターさんに相談するなかで、所有している家具を洗い出すことになったとき「黒のフレームで構成された本棚」が、ひかりさんの愛用品としてありました。
「これと合うかもしれませんね?」というアドバイスを受け、そこでフレームキッチンの導入案が浮上したとか。
タイル、家具、そしてフレームキッチン。
インテリアに溶け込み、新たな調和を生み出す柔軟なデザインのフレームキッチン。加えて、繰り返しの使用に耐えうる堅牢さももちろん兼ね備えています。
サッと取り出せるオープン棚
「背の高い鍋や重い鉄のフライパンなど、調理器具はかなりたくさんあるので、サッと取り出せる環境にしたかったんです」
ひかりさんのような、料理人としての具体的なニーズにもうまく合致したようです。
最下段に、キャスター付きのワゴンボックス。ここには布巾を収納。
マグネットも付く、アイアンフレーム。かける収納に、“くっつける収納”も叶う。
大きすぎた?ミーレ食洗機
実はこのキッチン、ショールームに設置されていた展示現品だったそう。サイズそのままに買い取ることとなり、設備機器を含め、自らチョイスしたというものではありませんが、そのスペックに日々感じることがあるとか。
「ミーレの食洗機は、最初は大きすぎると思っていました。でも、私は頻繁にお菓子作りをするので、これがあって本当によかったです。SUTTO(SANEI)ハンドシャワー水栓は、結構シンクに水はねがありますが、この柔軟なシャワー機能は友人にも好評です」
ハーマン+do プラスドゥ ガスコンロ
そして、ハーマン製のガスコンロは、その優れた火力を高く評価。
「火力が全然違いますね。ここは、絶対ハーマンのものがよかったんです。お米がすごくおいしく炊けます」
特製のダッチオーブン(付属品)を使用すると、短時間でおいしそうな焼き芋が…!
愛用の道具
それぞれに宿る物語
キッチンもさることながら、キッチンツールや食器にも深い愛をもつひかりさん。それぞれに宿る物語、職人技、そして永続的な品質…基本的にずっと好きで、永くつかえるもの選びをされています。
陶器市などで集めた小皿は特にお気に入り。
佐賀県、有田焼の小皿をはじめ、「かもしか道具店」さんの、水分をうまく蒸発させる漬物容器、炊きたてのご飯を温かく保つおひつ…などなど 。
キッチンツールは、金属加工品の産地、新潟・燕三条の「家事問屋」さんのものが多め。
ひかりさんの、道具に対する想いはこちらに綴られています。⇒『わたしの正解は、わたしが決める。家事問屋の道具を並べるためのキッチンづくり』記事はこちら
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リサイクル品も取り入れて
その一方で、近所のリサイクルショップで30円で救出したというカゴ、無料で手に入れた木の升なども一緒に並びます。
価格を超えた価値を見出し、自分にとって心地良いキッチン空間をコレクションで彩っています。
永く大切に使いたい
ものや道具への「愛」を重視し、本質的なものの価値を見出すスタンス。
「だから、ウッドワンさんのキッチンも、決して安いものではなかったけれど、永く使えそうで、自分との相性がいいなっておもったんです。このキッチンに使われているオークの木も、時間とともに濃くなって、より愛着が増していくといいな」と、ひかりさん。
リビング空間
祖母から譲り受けたアンティークのキャビネット
昔から、先祖代々受け継いだものを使うというのが家の風習。リビングには、祖母から譲り受けたキャビネットが並びます。
ひかりさんはこれを特別なこととは考えていなかったそうですが、その習慣を周囲と共有し始めたところ「すごい反応」があり、なんとなく“人間として”信頼してもらえるようになったという経験が。
「実は私は昔から、けっこうやんちゃな人生を送ってきていたんですが(笑)やっぱりモノをずっと大事にしている人って信頼してもらえるんだなって実感したんです」と、ひかりさん。
この価値観が自分の大事な“アイデンティティ”と認識するようになったことで、物への愛着もがより深まり「だったら永くつかえるものを…」という選択を日常的にすることに繋がったそう。
日々の暮らし
家づくりをしてからさらに、ひかりさんの友人、娘さんの友人、さらには以前繋がりのあったお客様までもが、頻繁に家に集まるように。
「みんなカフェだと思ってるのかな」と笑います。
経年を愉しむ
キッチン周りはすぐに掃除をするという習慣や、夜な夜な包丁を研ぐというルーティンに加えて、最近は道具に使い始めの年月日をシールで貼って、経年を愉しむための種まき作業のようなこともはじめたのだとか。
「わたし、白髪のしわくちゃのおばあちゃんになりたいんです」と、ひかりさん。
本質的で気取らず抗わず、まさに“経年を愉しむ”を体現しているようですね。
(文:松岡)
【フレームキッチンを選んだ理由】
・既存家具と統一感を出すことができた。
・背が高く、重い調理器具のための十分なスペース、実用的なアクセスを確保。
・漆喰の壁の温かさを補完し、当初のオールステンレスの構想を超えた、進化したデザインビジョンが調和。
・オープンなデザインにより、大切な調理器具や食材の取り出しやすさと美しいディスプレイを両立。
・ショールームの展示現品が、料理人ニーズと合った。
・永く大切に使えるもの選びをしたかった