Uターン移住。田舎暮らしの新しいかたち
山口⇔東京Uターン。ミモザが咲くエントランス
地元の山口県萩市に帰ってくるため、空き家バンクで家を探していたというフードコーディネーターの中原美香子さん。成人してからの20年余り、ずっと東京で暮らしていましたが、現在もご両親が住み、自分が生まれ育ったこの場所にいつかUターンで戻ってきたいと考えていたそう。
「子どもたちと、のびのびできるところで生活したくて。でもまさかこんなにパパっと決まるとは思ってなかったんですけどね」
ちょうどコロナ前、家探しのため頻繁にこちらへ帰ってきていたという中原さん。運とタイミングもあって、納得のいく空き家物件に出会うことができ、とんとん拍子に移住が決まったそう。最終的に引っ越しが完了したのは、約3年前。あの「緊急事態宣言」が発令される直前ギリギリだったとか。
2LDKマンションから→畑+蔵+庭付きの一戸建て
小学生のお子さん2人と、ご主人と中原さんの4人家族。もともと住んでいた2LDKのマンションは、東京で暮らすには十分な広さだったそうですが、いずれ両親と暮らすことも視野に入れ、同じ山口県出身のご主人と話し合って、移住に踏み切ることができたそう。
フードコーディネーター、中原美香子さん
ずっと飲食と関わって仕事をしてきたという中原さん。
調理師の免許を持ち、人気のホットプレート BRUNOのPRアンバサダーをつとめたり、企業とのコラボでレシピ開発をしたり。WEB連載や、お弁当やサラダごはんの書籍出版もされています。(『毎日続ける やせる サラダごはん』)
冷蔵庫に貼ってある実験したレシピやメモ「これはわたしにとって財産ですね」
もう一冊追加でレシピ本出版の話があったときに、出産や育児と重なってそれは叶わぬ話となってしまったそうですが、萩市に移住した現在も、お料理教室や英語教室を運営するなどアクティブに活動をされています。
「ここは近くに大きな公園とか図書館があって、割と子供が自由にしやすいところ。買い物もほぼ徒歩圏内で、住みやすいですね。萩市は海が近く魚も美味しいのでおすすめです」
家の中でお気に入りの眺め
子どもたちが学校に行ったあと、ここに座ってコーヒーを飲む時間が一番好きという中原さん。新しい暮らしのなかでみつけた、何気ない幸せの一コマが想像できます。
Before → After
実はこちらのお宅、自分たちでできるところはすべてDIYでリフォームされたそう。リビングからキッチンへと繋がる奥の入口は、大工さんにお願いして「家」型のイメージでアレンジ。
「もとは昭和レトロ?昭和の応接間?みたいな感じで、天井も茶色でほんとに暗かったんです。壁紙は全部剥がして塗りなおしました」
DIYで装飾したドア
リビング左側にみえる洗面室のドアは、ホームセンターで買ったモールを付けて装飾。
上からペンキを塗って仕上げたそう。
リメイクした食器棚
「これはよくある、ブランデーが並んでるようなサイドボードでした。私がすごく器好きなので、お皿は本当に何枚もあるんです。統一感はないんですけど」
中原さんはお仕事柄か、いろいろな種類の器をお持ちです。
7才年上のご主人が建築関係の仕事をしていたこともあり、家をDIYで仕上げることに不安はなかったそう。ここの窓は手前に格子が装着され、二重窓のような構造になっています。
季節の果物
棚の上には観葉植物や果物が並べられています。
「この柿はいただきものです。季節ものがもらえるって、嬉しい地方あるあるですよね」
キッチン空間の理想と現実
大人数でも一緒にキッチンに立てるこの広さがとても気に入っているという中原さん。
「理想の理想は、アイランドキッチンが中心にある、広いキッチンでした。あとは猫の額くらいでもよかったかな」
もともと頭の中で思い描いていた理想と、現実は少し違ったそうですが、完全に想いと一致した空き家がなかなかみつからなかったことや、間取りを変えるとなると費用も嵩むという事情も相まって、最終的には元の形をこのまま生かすことに。
Before L型キッチン
奥の窓側にシンクが付いて、L型に設置されていたキッチン。引っ越してきてすぐは、段ボールが山積みされた“物だらけ”の状態。住みながらリフォーム作業を行ったそう。
「床を直してないから、食器棚も置けないし仕舞えないしどうしよう…?という状況で生活していました」
古民家をDIYで直したいという願いに対し、相談にのってくれたという、リフォームのわたばんさん。当時すごく親身に話を聞いてくれたそうで、今でもずっとお付き合いがあるそう。
「たぶん、あれこれお願いしてめんどくさい施主だったと思います(笑)」
最近は、ご近所でも空き家の古民家をなおして暮らしている方がちらほらと増えてきているとか。
キッチンはスイージー、NZ40落とし込み框組、ニュートラルカラー(D8色)
「キッチンをどんなテイストにするかとても悩んでいたとき、まだ発売されたばかりのカタログを見て素敵だなぁと思いました。色はすごく悩みましたが、見本サンプルを実際に見てこちらに決めました。」
2020年5月に、su:ijiニュージーパイン®の新色として追加された5色の「ニュートラルカラー」。
無彩色ながらも木のあたたかみを残すカラーがほんのり差し色となって、まるで北欧カフェのよう。窓の格子やタイルなどの古い良さは残されつつも、かわいい空間に生まれ変わっていて素敵です。
ぶら下がったキッチンツール
一時期、ドラマなどで話題となり「あまりにもかっこいい…」と、その存在をチェックしていたというフレームキッチンとも迷ったそうですが、ショールームに足を運んで最終的に選んだのはこのかたち。
ゴミ箱を置きたかったからシンク下はオープン、食器洗い機は大容量でフロントオープンがよかったからミーレ。
水栓は、どうしても水素水が飲みたくてトリム(電解水素水整水器)を別途支給して取付したそう。
かわいいマウント型フード
レンジフードは憧れていたというマウント型フードのジリオ(アリアフィーナ)を選択。
「このフード、かわいいだけじゃなくお掃除も簡単なんです。いつも目にするものだから、憧れていたものにしたくて」と中原さん。
シンク下には、DIYの調味料ラックにタオル掛け
まさに、かわいさと機能が両立したオリジナルの炊事空間に仕上がっています。
お気に入りの「インド鍋」
中華鍋、ご飯のお釜、パエリア鍋…「鍋はもうね、増やすまいとおもってますが、この引き出しにたくさん入ってます」
鉄製のお鍋だと何を炒めてもおいしいのだとか。
壁掛けの包丁スタンド
キッチンの壁は、もともと貼られていた「懐かしい色」のタイルに、上からペンキを塗りなおして、自分好みに使いやすくアレンジ。色と質感が変わるだけで、こんなにも雰囲気が変わるのは驚きです。
フル稼働したキッチン3年
「最初の一瞬だけでした、キッチンが傷ついたらイヤだなっておもったのは。もう毎日ガッシガシにフル稼働させてますね。ワークトップは、それこそ傷にならないので、ステンレスのバイブレーション仕上げにして、ほんとよかったです」
ご自身で写真を撮ることが日常
フードコーディネーターというお仕事上、レシピ開発をして、写真をとるのが日常。簡易的な撮影用のテーブルアレンジなどもするそうですが、キッチンはとにかく妥協せずにちゃんとしたかった!という中原さん。
「時間をかけずに、パパっと写真を撮れる環境がほしかったんです。いつ写真におさめても様になるような景色が、家のあちこちにあったら素敵だなぁと思って」
窓から優しい自然光が入って、よりおいしそうなお料理写真が撮影できそうです。キッチンをスタジオとも捉えるのは発信者ならではですね。
(栗ってこんなにおいしいのでしょうか…)
取材訪問時にいただいた温かいほうじ茶と、栗の渋皮煮。これが、とてもやわらかく、甘すぎず、素材の甘味も感じられて。とにかく一同びっくりの美味でした。
「拾った栗をご近所さんにもらったものです。これもまた田舎の嬉しいあるあるですよね」と中原さん。
【栗の渋皮煮】※材料はすべて適量
・栗を準備、鬼皮の硬いところをとる。
・渋みをとるために重曹を入れて煮こぼす(3回くらい)
・そのあと水で煮る
・黒糖、グラニュー糖(あっさりとするそう)、キビ砂糖 をミックスしてちょっとあっさりめにまた煮る →完成
(図々しくも!)レシピを教えていただきました。
民泊としても家を活用 (中原さんInstagramchikipon52より)
外国人観光客を対象に“暮らすように旅行する”というようなテーマで、日本各地を自転車やローカル電車を乗り継いで周るというようなパッケージ旅行ツアーがあるそう。
そのツアーの周遊都市の中に、ここ萩市が含まれているものもあり、空き家を改装して暮らす中原さんにも人づてにお声がかかったのだとか。
「(周辺で同じように民泊をする方たち)みなさんいろいろされているけどうちは料理体験で、郷土料理の岩国寿司をつくっています。外国人の方も“このキッチンめっちゃいいね!”“すごいいいキッチン!”って言ってくれます」
中原さんも子どもたちも、新しい人との出会いや異文化交流が大好き。家はだいたいいつも賑わっているそう。
ホームパーティが楽しい毎日
まだまだ進行中「一生終わらない!」という家のDIYを楽しみつつ、おうちで人が集まってホームパーティをしたり、子どもと料理をする時間が今は一番たのしいという中原さん。
近所のお友だちとも、ハロウィンにパンプキンパイ、ランチにハンバーグと、一緒に作って一緒に食べて、お料理の楽しさを大勢で共有する日々。素材が煮えているところがみえるようにと、子どもたちのためにあえて透明の鍋をつかったりもするそう。
憧れていた、畑のある暮らし
東京に住んでいた頃、マンションで仲良しだった友人が先に群馬県へ移住し「有機野菜をつくる畑を探している」という話を知って、自分もいつか、畑のある暮らしがしてみたいな、という憧れがあったそう。
「容赦なく生えてくる」畑
「夏野菜プラン、秋冬プラン、最初はノートに絵にかいていたのに…次から次へと容赦なく生えてきて、ぜんぜんその通りにいきません。笑」
憧れだった家庭菜園の畑も手に入れた今、実際にやってみてそのお手入れの大変さを痛感しているところなのだとか。
カラマンシーとハラペーニョ
「でも、辛いのが大好きなのでハラペーニョだけは欠かさず毎年作っています」
おみやげにどうぞと、獲れたてのものをいただきました。(ありがとうございます!)
自宅敷地内にある築100年ほどの「蔵」
こちらはぜんぜん手つかずという建物。それでも、これから片付けて自分の思うようにアレンジできるとおもうとわくわくが止まらないのだとか。木や自然を好み、状況の変化に抗うことなく順応する中原さんの姿に、惚れ惚れとまた憧れを抱いてしまいますね。
(文:松岡)